東日本大震災を経て、エネルギーについてあらためて考えさせられた日本。
どのようにエネルギーを作り、消費していくかは、連日の大きな話題となっています。
多くの専門的なエネルギー関連、復興関連の著書が書店に並ぶ中、100%自然エネルギーでまかなわれている島として今話題の「
ロラン島」に暮らす一人の一般人の目線で綴った一冊の本が誕生しました。
ロラン島ってどこ? >>Map ロラン島は、「
どうすればエネルギーや資源を上手く使いながら、持続可能な社会を作っていけるのか」という課題に向け、すでに何年も前から取り組んでいる地域。
約5年もの歳月をかけて書き上げられた
『ロラン島のエコ・チャレンジ』 - デンマーク発、100%自然エネルギーの島では、かつて原発建設候補地だったロラン島が、どんな取り組みをしてきたのかをわかりやすく教えてくれる一冊です。
野草社代表の石垣雅設さん(左)著者のニールセン北村朋子さん(右) このたび、
『ロラン島のエコ・チャレンジ』 - デンマーク発、100%自然エネルギーの島の出版にあたった野草社さんは、31年前、原発に着目した『原子力発電とはなにか……そのわかりやすい説明』(野草社 1981年)という本を出しています。その頃にはまだ、日本で原子力発電の話題がほとんどなかったとか。
日本でフリーの映像翻訳家として活躍されていた北村さんは、ご主人のふるさとであるデンマーク・ロラン島に2001年より移住され、11年もの間ずっと、そこで生活しながらロラン島の様子を見てきました。
あちこち旅をされていた北村さんでさえ、北欧は初めて。東京から突如デンマークの田舎へ行くことになった北村さん。もちろん行ったばかりの時はデンマーク語がわからない状態。かなり大変だったのではないでしょうか。
ロラン島は、コペンハーゲンから南西へ約150kmに位置するハート型の島。平坦な国土のデンマークの中でも特に平らなことから「
パンケーキの島」という可愛らしいニックネームがついています。
人口は約65000人。バルト海を隔ててドイツと接しており、ドイツのフェマーン島とフェリーで行き来できるのだそう。2020年にはドイツとロラン島の間に海底トンネルも開通する予定。
電線のない空が広がるロラン島には、たくさんの風力発電の風車が並んでいます。コペンハーゲンなどの大都市の電力もロラン島のグリーンなエネルギーが支えており、たくさんの農産物も採れる豊かな島として知られています。
そんなロラン島にも、苦しい過去がありました。深刻な不況の中、
巨額の赤字と高い失業率に見舞われ、デンマークのお荷物的な自治体だったそうです。そんな島が今では都市に大切な自然エネルギーを供給する島へと転進しました。
新しいことへのチャレンジは、もちろんすんなりと行ったわけではありません。市民への理解を深めるために、
政治家・企業・研究家・市民が集い、何度も何度も話し合いをしてきたとか。デンマークでは“政治が近い”ため、「気軽に意見を伝えあえる場があったのは大きい」と北村さんは話しています。
障害は大きいけれど、ロランの人々は少しずつでもやろうという前向きな人が多く、障害を乗り越えていくことを喜びとするのだそうです。
変えていこう!という強い気持ちが本当にあるのかどうか。ロランの人々を見ていると、そう感じるそうです。
覚悟を決めて、根気よく。このアイデアがダメなら、違うアイデアでやってみる。一番大切なのは、目標を見失わないこと。
ロラン市長のスティ・ヴェスタゴーさんロラン島のグリーンエネルギーのプロジェクト関係者はじめ、ロラン市長のスティ・ヴェスタゴーさんも来日されていました。
「ロラン島の本が出て、
産官学が共同で取り組む良いきっかけとなり、この本を通じて、皆さんと考えることができたらうれしい」、「後世に伝えていくこと。一人の人間としても、非常に大切だと思っています。そこにあるものを、いかに上手く使っていくかが大切」と、お話されていました。
北村さんもまた、「今まであまりエネルギー問題に興味がなかった人、良くわからないという人にもぜひ。これからの自分の考えや決断をイメージできるヒントになれば」と、幅広い層に読んでもらいたいと話していました。美しい写真は、北村さんご自身や仲間たちで撮影されたものだそう。
この日の会見後、ロラン市と宮城県東松島市による震災復興の連携・協力に関する協定書が交わされました。
震災により、約65%が浸水したという東松島市。約2ヶ月という長い停電が続きました。災害に対応した街づくりを目指しています。
「ロラン市との提携により、取り組みを世界に発信していき、人が住みたいと思う街づくり、世界の多くの人々が応援したくなるような東松島になりたい。いかにして具現化していくかです」と、東松島市長の阿部秀保さん。
ロラン市長もまた、「東松島の再発展、少しずつでも一緒に歩んでいきましょう。両市にとって有益になると信じています」と述べていました。
デンマークではまだまだ、「火力」が主となるエネルギー源。ロラン島の取り組みは、デンマーク国内の他地域にも刺激を与えているそうです。
現在のところ風力発電がメインのロラン島ですが、未来への挑戦は続いています。
水素、波力、波力+風力のハイブリッド発電など・・・。
「何を使うか、ということも大切ですが、
その先にあるものをぜひ読み取って欲しいです」と北村さん。
さあ、日本はどうする?みなさんの考えは?
『ロラン島のエコ・チャレンジ』 - デンマーク発、100%自然エネルギーの島著者:ニールセン北村朋子
判形:A5判並製・160ページ
定価:1,600円+税
発行日:2012年7月15日全国の書店で発売開始
発行所:株式会社野草社(発売元
新泉社)
【ニールセン北村朋子プロフィール】デンマーク・ロラン島在住。ジャーナリスト、コーディネーター、アドバイザー。会社員、アメリカ留学を経てフリーの映像翻訳家として独立。2001年よりロラン島に移住したことがきっかけで、環境エネルギー問題や持続可能な社会への関心が芽生え、取材活動を開始。日本のメディアや企業のための取材、撮影、視察コーディネートを幅広く手がける。再生可能エネルギー、環境、食など、地球と人に嬉しいライフスタイル追求がライフワーク。森の幼稚園運営委員、ロラン市地域活性化委員を歴任。デンマーク・インターナショナル・プレスセンター・メディア代表メンバー。
http://www.atree.dk 本の最後には、「ロラン島ミニ・ガイド」付き!