Photo by Pierre Deschamps
2015年1月、東京で期間限定オープンし、定員2000人のところ、全世界から6万人の予約が殺到。さらに、今年1月にオーストラリアでも期間限定オープンし(4/2迄)、予約開始から数分で完売したことで話題となったデンマークのレストランnoma(ノーマ)。
これまでにない新しい北欧料理を生み出しただけでなく、料理界に革命を起こし、「世界ベストレストラン50」第1位に4度輝く名店nomaを築き上げたのは、天才シェフ、レネ・レゼピ。アップダウン激しい4年という年月をかけて、彼に密着したドキュメンタリー映画『ノーマ、世界を変える料理』が4月29日に公開されます。
2003年、レネは25歳でデンマーク・コペンハーゲンにnomaをオープン。使う食材は、これまで美食とは無縁といわれてきた北欧産のみ。レネの革新的すぎる考え方に、周りの誰もが不可能だ、バカげていると、周囲の反応は冷たく、反発の声も多くありました。
シェフとしての自信をなくしかけていた頃、グリーンランドを訪れたレネ。生まれて初めて見る美しい景色からヒントを得ます。それは、今どこにいて、どの季節なのかを感じられるような料理を提供したい・・・それが、ノーマの新しい哲学となりました。
一般的には食材にしないような蟻や花、苔などをふんだんに使用し、想像がつかないような驚きを与えるレネの料理に世界中が注目。世界最高の料理人の一人とも言われるエル・ブリ財団、フェラン・アドリアは、「レネは偉業を成し遂げた。それまで存在すらしなかった北欧独自の料理を作りあげた」と絶賛。「世界ベストレストラン50」で、2010年、2011年、2012年、2014年と、世界第1位を獲得します。
しかし、ある事件により、2013年は1位から転落。この映画は、2014年に再び世界の頂点に立つまでの復活劇を描いたドキュメンタリーになっています。
デンマーク人の母とマケドニア人の父を持つレネは、幼少時代、マケドニアで多くの時間を過ごしました。マケドニアでは、狭くても家族といつも並んで一緒に寝たり、一歩外へ出ると走り回れるところがいっぱい。とても幸せな、思い出深い子供時代だったと振り返っています。
デンマークでは、父親がイスラム系移民ということが影響してか、差別は日常的だったとか。
劇中で、差別はあったか?と聞かれたシーンで、「はぁ・・・それ聞く・・・?あったりまえだよ・・・」と、それは思い出したくもないほど、嫌な思いをしたよという、なんとも悲しげな目や表情が印象的でした。
それでも、マケドニアでの幸せな幼少時代で、どんなことが本当の幸せかを知っているレネは、その頃の思い出が研ぎ澄まされた感覚を築きあげ、後のnomaでの“創造する力”に繋がっているように思えます。
映画では、nomaに食材を提供する寡黙なキノコ採集者や、ウニを提供するちょっと口の悪い漁師、レネに北欧産ハーブをすすめる野菜農家など、nomaの台所を支える人々が登場。レネの情熱に嘘偽りがなく、真摯に食材と向き合っていることを伝えてくれるキーマンたち。この作品に厚みをもたせてくれています。
人が美味しいと感じるのは、その料理に“繋がり”を感じるから。
たしかそんな風に言ったレネの言葉は、料理だけでなく、すべてに共通することだなと。
3年連続首位からの陥落。レネは、首位陥落よりも、店で“ノロウィルスでの食中毒”が起こってしまったことに相当なショックを受けました。不安と悪夢に苛まれながら、とにかく前へ進もうとするnomaチーム。
今年2016年には、ミシュランガイドの三ツ星をコペンハーゲンの他店に先に持っていかれたnoma。しかし、2014年に再び「世界ベストレストラン50」の王者に返り咲いたことで、余分な肩の力は抜け、プレッシャーや不安や恐怖は、自信へと変わりました。
そのことがわかるのが、今年のnomaの閉店宣言。2017年に再び新しいnomaのオープンが予定されています。
皿の上だけではおさまりそうにない、レネの舞台。
彼の魂の行き先は、これからも驚きに満ちているに違いありません。
2007年の15分のショート・ドキュメンタリーの撮影がきっかけでレネと出会ったピエール・デュシャン監督。本作を撮りたいと思ったのは、レネの人間性に惹かれたようです。
デュシャン監督は、レネが食の世界で何かを変えると直感したとか。これまで知られていなかったスカンジナビアン料理を世界に広めた男。「純粋に彼のチャレンジがとても美しいと思えた」といいます。
nomaの過去、そして気になるこれからのnomaが覗けるかも?!展開がわかっていても、胸がジンと熱くなる、人間ドラマが描かれています。『ノーマ、世界を変える料理』は、4月29日(金・祝)公開!
【ストーリー】
英国のレストラン誌が選ぶ「世界ベストレストラン 50」第1位に4度輝いたデンマーク・コペンハーゲンの
レストラン「ノーマ」の天才シェフ、レネ・レゼピ。蟻や花、苔などを使用した独創的なレシピを生み出すべく、休むことなく追求を続けるレネの人生哲学を追いながら、移民として差別を受けてきた自身の生い立ちや、「ノーマ」立ち上げた当初の苦心などを交え、知られざる彼の内面へと迫っていく。さらに、2013年に突如襲ったノロウィルスによる食中毒事件、3年連続一位の座からの転落。最悪の状況から再び世界No.1に返り咲くまでの道のりを追う4年間の密着ドキュメンタリー。
ノーマ、世界を変える料理
原題:NOMA MY PERFECT STORM
監督:ピエール・デュシャン
出演:レネ・レゼピほか
2015年/イギリス/英語、アルバニア語、デンマーク語、スウェーデン語、仏語、スペイン語/99分/シネマスコープ/カラー/5.1ch/日本語字幕:高岡佑己子
後援:デンマーク大使館
提供:KADOKAWA、ロングライド
配給:ロングライド
http://www.noma-movie.com
予告篇:https://youtu.be/XQzy1p2o1hk
(c)2015 DOCUMENTREE FILMS LTD
2016年4月29日(金・祝)、新宿シネマカリテほか全国順次公開
北欧区ブログ記事:http://ameblo.jp/hokuwalk/entry-12140087622.html