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【デザイン】刺し子「SASHIKO」デザインに見る、北欧デザインの原点



(「Scandinavian Pattern Collection」所属デザイナーのリンダ・スヴェンソン・エデヴィントさんも来日)


10月上旬、スウェーデン大使館にて、北欧デザイナーによるSASHIKO「UNIK(ウニーク) - 北欧デザインの原点」展が開催されました。2014年2月より展開しているプロジェクト「Scandinavian Pattern Collection」という日本と北欧の文化交流イベント第3弾。第1弾はてぬぐい、第2弾は、テーブルコーディネートを意識して、長崎の波佐見焼の茶碗や小皿が披露されました。今回のテーマは日本の手工芸「刺し子」です。

オープニングイベントでは、マグヌス・ローバック駐日スウェーデン大使が、北欧デザイナーと日本とのコラボレーションによる文化事業・文化交流に立ち会える喜びを語り、日本の伝統手工芸「刺し子」に感銘を受けていました。

日本古来の「刺し子」は、東北地方をの厳しい気候と貧しい暮らしから生まれたもの。綿が育たず、麻布に厚みとぬくもりを生むために、また、破れたところを補修するために、糸で抜き差ししていたのがはじまり。点と線だけで描かれた文様は、シンプルで美しく、次第に装飾品として扱われるようになっていきます。

一方で、現在はモダンデザインで知られる北欧も、百年ほど前までは貧困地域。各地の民族衣装には、その地域を表すオリジナリティあふれる美しい刺繍が施されており、北欧の手工芸の歴史もまた、非常に古いものだとわかります。




展示会のタイトルになっている「UNIK(ウニーク)」とは、スウェーデン語で、一人ひとりの個性や一つひとつの価値を尊重した表現。日本古来の「刺し子」を新しい解釈として捉え、「SASHIKO」として、それぞれのデザイナーが自分の心の原点に立ち返り、刺し子文様のデザインを生み出しました。北欧の自然や風景、暮らしが、素朴な刺し子デザインを通じて垣間見られる作品になっています。

まず刺し子がどんなものかを知るために現地で行ったことは、スウェーデンで出版され、刺し子の基本的なことがスウェーデン語で書かれているアンナ・ヘーリング(「Scandinavian Pattern Collection」所属デザイナー)の本「SASHIKO」を、今回参加したデザイナーたちに配布したそうです。

大使館に展示されていた北欧デザイナーによる刺し子デザインは、大阪成蹊短期大学生活デザイン学科の学生の手で、手刺しの花布巾に仕立てられました。布は日本製、糸は本来の刺し子用よりは少し太めだそうですが、スウェーデンのオーガニックのものを使用。ここでも日本と北欧が融合し、新しく、美しいデザインを演出しています。


幼い頃、都心と群島の間にあるナッカで見たというカラフルな気球。思い出いっぱいの夏の匂いや音、太陽のまぶしさを表現しています。「大空に浮かぶ気球」My Floryd Welin(ミー・フロリド・ヴェリン)


今回、リンダ・スヴェンソン・エデヴィント(Linda Svensson Edevint)さんが来日されていました。エーケルンドやイケア、クリッパンなどにデザインを提供するデザイナーです。リンダさんは、FIKAをテーマにした作品を披露。シナモンロールやコーヒーカップ、スプーン、ポットなどを刺し子のモチーフにしています。

ただコーヒーやお菓子をいただくだけでなく、家族や友人たちでテーブルを囲み、会話を楽しむ時間を「フィーカ」と呼ぶのだとか。「焼きたてのシナモンロールがあって、コーヒーと手作りのレモネード。これを外や中でいただきます。たいてい(ローバック大使も言っていたように)キッチンが多いわね。キッチンでおしゃべりしたり、宿題をやったりね(笑)」


「ホームスイートホーム」Linda Svensson Edevint(リンダ・スヴェンソン・エデヴィント)


自身の作品のインスピレーションとなったのは、故郷の南スウェーデン。緑あふれる大きな家や、花やグリーンがたくさん飾られている窓辺、テーブルに座った子供時代の写真を指して、「これは私たち姉妹と、近所の子よ」と教えてくれました。今でもリンダさんにとって、フィーカは特別なひととき。おばあさまに教えてもらったレシピで、子供たちにシナモンロールを作り、フィーカの伝統や文化を伝えているそうです。

<展覧会会場ショット>
会場では、花布巾作品の展示だけではなく、刺し子デザイン全28点が、どのようなところから生み出されたのかを、各デザイナーが自ら用意したという写真と文によって展示されていました。


スウェーデン大使館の壁がキュートなデザインに!デザインは、カイサ・ロルフソンによる「Raps(菜の花)」。春の終わりから夏のはじめにかけて広がる菜の花畑を表現してみたそうです。


家の窓から見えるフリーケン湖の丘。その丘の向こうに、「ニルスの不思議な旅」の作者、セルマ・ラーゲンレフが昔住んでいたとか。ガチョウが空を飛んでいる姿を見ると、ニルスとアッカを思い出すそうです。
「湖畔の丘」Marlene Sandblom Ek(マリーン・サンドブロム・エーク)


以前はスラム街の「南のナイフ」と呼ばれていたホーンスチュール。現在ではストックホルムで最も面白いエリアとして知られているエリア。アムセルさんは、17年前からここにスタジオを構えているとか。愛すべき街を表現。「ホーンスチュールの地図」Amsell Berlin(アムセル・ベルリン)


<参加デザイナー>
1. Studio Amanda & Matilda アマンダ&マチルダ
2. Amsell Berlin アムセル・ベルリン
3. Ann Carin Wiktorsson アン・カーリン・ヴィクトルソン
4. Ann Charlotte Ridderstolpe アン・シャロッテ・リッデルストルペ
5. Anna Berger アンナ・バリエ
6. Anna Horling アンナ・ヘーリング
7. Anna Lindsten アンナ・リンドステン
8. Butler/Lindgard ブトレー・リンゴード
9. Cathy Nordstrom キャシー・ノードストレム
10. Cecilie O セシリー・オー
11. Edholm Ullenius エドホルム・ウレニウス
12. Elina Rebers エリーナ・レベシュ
13. Fyran フィーラン
14. Inga Karlsson インガ・カールソン
15. Ingela Jondell インゲラ・ヨンデル
16. Jenny Wallmark ジェニー・ヴァルマルク
17. Johanna Hogvag ヨハンナ・ヘグヴェグ
18. Johanna Orn ヨハンナ・エーン
19. Kajsa Rolfsson カイサ・ロルフソン
20. Katarina Lernmark カタリーナ・レーンマルク
21. Linda Svensson Edevint リンダ・スヴェンソン・エデヴィント
22. Maria Bergstrom マリア・ベリストレム
23. Marie Louise Hellgren マリールイス・ヘルグレン
24. Marlene Sandblom Ek マリーン・サンドブロム・エーク
25. My Floryd Welin ミー・フロリド・ヴェリン
26. Stina Wirsen スティーナ・ヴィルセン
27. Tina Backman ティナ・バックマン
28. Viktoria Hamberger ヴィクトリア・ハムベリエ

「Scandinavian Pattern Collection」公式ウェブサイト
http://www.scandinavianpatterncollection.com/




▼ポーチやバッグをはじめ、窓や棚、壁に貼って簡単に剥がせて楽しめるフィルムやレーステープなど、インテリアとしての「SASHIKO」デザインプロダクトが展開されています。興味のある方はチェックを!

2016年10月4日(火)~ Scandinavian Pattern Collection公式ウェブサイト
2016年10月4日(火)~ 11月6日(日) ACTUS二子玉川店
2016年10月15日(土)~ 11月6日(日) ACTUS新宿店
2016年10月15日(土)~ 11月13日(日) ACTUS京都店
2016年10月中旬~ arco store名古屋店、大阪店
※11月以降の予定については公式ウェブサイトでご確認ください。

関連ブログ記事:http://ameblo.jp/hokuwalk/entry-12208894979.html


(2016年10月12日更新)
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