北欧映画はなぜ、憎めない偏屈なおじさまを魅力的に描くのが上手なんでしょう!また一人、目の離せない頑固オヤジが主人公の映画『幸せなひとりぼっち』がスウェーデンからやってきます。
物語の主人公は、頑固な老年男性・オーヴェ。どんな些細なことでも他人を許さない、自分も許せない。人付き合いも悪く、常に機嫌が悪い。妻の死後、ずっと殻に閉じこもって生きてきました。
43年間勤めた会社までクビにされ、生きる目標も気力も失った彼は、自殺を試みます。しかし、隣に引っ越してきたノーテンキすぎる家族にことごとく邪魔され、ネコの世話までするハメに。
せわしい隣人や子供たちの世話をしたり、日々関わって(巻き込まれて)ゆく中で、誰にも言えず、自分をガチガチに縛り付けていた思いが、ゆっくりとほぐれていくオーヴェの姿を、涙あり、笑いありで描いた物語です。
※ここ、病院です。美術館ではありません。
原作は世界的人気作家、フレドリック・バックマン。自身の父親をモチーフに描いた物語が200万部を売り上げるベストセラーとなり、映画化されました。2015年のクリスマスにスウェーデンで公開されると、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)を抑え、興行成績1位にランクイン。スウェーデンのアカデミー賞と呼ばれるゴールデン・ビートル賞で、主演男優賞と観客賞の二つの賞に輝きました。
監督は、多くのコメディ作品の脚本と演出を担当してきたキャリアを持つハンネス・ホルム。日本では、2014年のスウェーデン映画祭で、監督が手がけたビル・スカルスガルド主演の『青空の背後』(10)が上映されています。
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隣人やネコの世話という仕事ができてしまったと、妻のお墓でボヤくオーヴェ。
この作品の最大の見どころといってもいいのが、愛あふれるスウェディッシュ・ユーモアではないでしょうか。たとえば、ボルボとサーブというスウェーデン国産車の車種で人のことを判断したり、車でモノを語ったり、比喩したりするところが随所に出てきて、それがなんともアクセントになっていて面白い!マニアックなんだけど、わかりやすいシンプルなスウェディッシュ・ジョークがたまりません。
人生には良いことも、悪いことも、ついてないこともあって、それがいつ来て、いつ去っていくのかもわからない。だから、今を懸命に生きよう。誰のためでもない、自分のために。人生の中にある、幸せと笑いと涙をすべてやさしく、時に厳しく、教えてくれる作品です。
笑って、泣いて、キュンとして、実はロマンチック。
見終わったとき、胸の奥あたりが、じわーんとあったかくなる、クリスマスシーズンにぴったりの物語です。
『幸せなひとりぼっち』は、2016年12月17日(土)、新宿シネマカリテ・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開!
キーマンである隣人、パルヴァネ役のイラン出身女優、バハー・パールの演技にも注目!
【ストーリー】
愛する妻を失い、哀しみにくれるオーヴェ。一人きりで生きる人生に希望を見出せず、墓参りの度に失意を募らせていた。そんなある日、隣の家にパルヴァネ一家が引っ越してくる。車のバック駐車、病院への送迎、娘たちの子守・・・困惑するオーヴェのことなどお構いなしに、次々と問題を持ち込むうっとおしい隣人とはケンカばかりの毎日を送っていたが、それはいつしか日課となり、かけがえのない友情となる。そして、オーヴェの凍てついていた心は少しずつ溶きほぐされ、愛する妻との思い出を語り始めたのだった―――。
幸せなひとりぼっち
監督・脚本:ハンネス・ホルム
出演:ロルフ・ラスゴード
原作:フレドリック・バックマン 訳:坂本あおい(ハヤカワ書房刊)
2015年/スウェーデン/原題:EN MAN SOM HETER OVE /5.1ch/116分/シネスコ/日本語字幕:柏野文映 後援:スウェーデン大使館
http://hitori-movie.com/
(C)Tre Vanner Produktion AB. All rights reserved.
2016年12月17日(土) 新宿シネマカリテ・ヒューマントラストシネマ渋谷 他全国順次公開!
北欧区ブログ記事:http://ameblo.jp/hokuwalk/entry-12210913520.html