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【映画】デンマークの地で本当にあった知られざる戦争の爪痕『ヒトラーの忘れもの』(12/17公開)





北欧区でもすでにちょこちょことご紹介しているので、もうご存知の方もいらっしゃると思いますが、昨年の東京国際映画祭のコンペティション部門で上映され、最優秀男優賞を受賞したことでも記憶に新しいデンマークの新鋭、マーチン・サントフリート監督作品です。

『ヒトラーの忘れもの』は、ろくに地雷除去訓練も受けないままに地雷原の浜への送り出されたドイツ人少年兵11人と、彼らを監督・監視するデンマーク人軍曹の物語。

大人が残した戦後の後処理を、まだあどけない少年たちにさせていたという衝撃の事実。世界一幸せな国として知られるデンマーク国内でもほとんど知られておらず、長きにわたり封印されてきた史実が映画化された話題の作品です。



1940年、ドイツ軍の占領下に置かれたデンマークは、1945年5月に解放されましたが、その5年間の占領時代に、連合軍の上陸を避けるために、約200万個の地雷が海岸線に埋められたそうです。

一つひとつ手作業で除去しなければならない地雷。その任務に就いたのが、ドイツ軍捕虜たち。しかし、彼らは特別な訓練を受けた者ではなく、ヒトラーが戦争終盤に創設した市民軍。しかも大多数は子供か老人であり、最年少の者は13歳だったとか。


 
強制労働は1945年5月5日から始まり、10月4日に完了。軍の記録によると、1945年5月11日から10月4日に処理された地雷の数は140万2000個。約2600人が関わり、そのうちの半分が死亡、または重傷を負いました。

筆者、実はこの作品を見るのは2度目。美しい海岸のはずなのに、やはり温度が伝わってこない。常に張り詰めていて、冷たいも温かいも感じないその雰囲気がスクリーンから伝わってきて、冒頭から苦しい。美しすぎる映像は、いつ爆発するのか、次か?と、恐怖感をあおり、1度目は正直直視できずにいました。



はじめは憎きナチ兵といわんばかりに、人としての扱いをしていなかった軍曹が、徐々に、どうしたら少年たちを守って、故郷に帰してあげようかと、揺れ動く気持ちや心の移り変わり、葛藤が見ているほうにひしひしと伝わってきます。この主人公の軍曹、ラスムスンを演じたのは、ローラン・ムラ。これが映画初主演作というから驚き。また、少年兵たちも多くは新人。俳優っぽい見た目の人はあえて避けて探したそうです。

本作は、デンマーク語も出てきますが、大部分がドイツ語。少年たちがドイツのさまざまな地域から来ているという設定だったため、なまりのあるドイツ語を話しているそう(ドイツ語のわかる方にはわかりそうですね!残念ながら筆者は違いがわからず・・)。

たとえば、メインの少年ともう一人はハンブルク出身という設定。でも、一人は裕福な家柄、もう一人は労働者階級の家ということで、話し方も変えているとか!そういった細かい部分までも丁寧にこだわって作り上げました。


 
葛藤する軍曹と、死と隣り合わせの任務に挑む少年兵。
人は敵を憎み続けられるのか?どんな酷い状況でも人は希望を抱き続けられるのか?
闇の中で見た一筋の光は、本物なのか――

第89回アカデミー外国語映画賞デンマーク代表作品にも選ばれた『ヒトラーの忘れもの』。いまだ世界各国の映画賞を騒がしているわけですが、次回作はなんと、オスカー俳優のジャレット・レトや日本の浅野忠信が出演する『The Outsider(原題)』に取りかかっているという情報も!『The Outsider(原題)』は、第二次大戦後の日本のヤクザ社会に身を投じるアメリカ人兵士の運命を描いた作品だそうです。こちらも気になりますね!


ヒトラーの忘れもの
脚本・監督:マーチン・サントフリート
原題:LAND OF MINE/2015年/デンマーク・ドイツ/カラー/
ドイツ語・デンマーク語・英語/101分/シネマスコープ/5.1ch
配給:キノフィルムズ
http://www.hitler-wasuremono.jp/
© 2015 NORDISK FILM PRODUCTION A/S & AMUSEMENT PARK FILM GMBH & ZDF

12月17日、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開


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(2016年11月22日更新)
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