「世界一の実用ナイフ」とも呼ばれる、スウェーデン王室御用達認定を受けた国民的ナイフブランド「モーラナイフ」のイベントで、モーラナイフのアンバサダーであり、グリーンウッドワーク(生木の木工)の第一人者、ヨッゲ・スンクヴィスト氏が来日し、スウェーデン木工の伝統とクラフトのショーを披露。スウェーデン大使館にて開催された「Rhythm & Slöjd スウェーデンのリズムとクラフト~木工作家によるパフォーマンスショー」のイベントレポートをお届けします。
モーラナイフは、スウェーデン国民の家に必ずあるという人々の暮らしに密着したナイフで、ダーラナホースの職人が使うナイフとしても知られています。なんでも、ダーラナホースの職人さんたちは、一生のうちに、一人で7万頭ものダーラナホースを作るのだそう。
「Slöjd」というのは、スウェーデン語で「工芸」「クラフト」の意味。「slog(賢く実用的)」という、バイキング時代の言葉が語源だそう。必要なものは自らの手で作ってきた農民たちの知恵と伝統を、現代の職人たちが受け継ぎ、次世代へと繋いでいるのです。
さて、音楽と木工のショーと聞いて、いろいろと想像を膨らませていました。
感想はとにかく、想像の向こう側を行っていた、ということ!
スウェーデンだし、木とともに、静かな感じで・・・と思っていたら、鼻歌を歌いながら、客席後方から登場してきたヨッゲさん(この時点で何かかっこいい)。太い腕に釘付け!革のエプロンを身にまとい、馬のような形の削り台(ヨッゲさんがスウェーデンで実際に使っているものと同じものを日本で再現)にまたがり、ダフト・パンクの音楽をBGMに、リズムに合わせてノリノリで木を切っていきます。
ヨッゲさんの手の届くところにある、大小さまざまな道具を巧みに使い分け、あっというまに、直径約7~8cm、高さ約15cmの真っ白な木材が出現。今度はその木材の中心部をドリルのような道具で穴を開けていきます。ちなみに電気類はいっさい使っていません。激しい音楽が徐々に穏やかになり、ヨッゲさんのお話が始まりました。スライドと共に、スウェーデンの伝統的な木工工芸にまつわるお話です。
ヨッゲさんは北極圏まで車で北へ4時間、ストックホルムまでは車で南へ6時間ほどにある、スウェーデン中部のヴェステルボッテン地域の村に住んでいます。椅子やベンチ、彫刻、棚やスプーンといった日常的なものからアーティスティックなものまで、幅広いジャンルのものを制作しています。
ヨッゲさんは、「材料」「道具」「伝統」「民族芸術」という工芸にまつわる4つの重要なポイントを解説。作ろうとしている形の木、素材があるとは限らない。印象的だったのは、イメージにぴったりの白樺を見つけたときに、白樺に自分の作品にならないかと尋ねてみたんだそうです。木との対話を大切にします。また、道具の使い方も重要。やりたいことができるようになるためには、知識と経験が必要になります。父親のウィレさんからナイフや斧の使い方を教えてもらったというヨッゲさん。いろんな道具を使って、削り方を見せてくれました。まるで柔らかなものをなでるように削り、木材はたちまち、しっとりとした白いタンブラーへと変身。
92歳になる父親ウィレさんも現役の木工職人。12歳の少年だった頃、同じく木工職人だったヨッゲさんの祖父にあたるアーヴィットさんに、ある日、「絵を学びたい」と切り出したウィレさんでしたが、「なぜ?馬を描くより、木さえあれば馬は作れる」と言われてしまいます。2Dより3Dのほうが簡単に生み出せる環境でした。スライドで見せていただいた、ウィレさんが12歳のときに作ったという馬の木像は、つややかで今にも動き出しそう。ウィレさんはそれから78以上年経った今でも、馬を彫っているそうです。
民族芸術の一例としてヨッゲさんが挙げたお話と言葉が素敵でした。結婚したい女性の家を訪ね、自分の作ったスプーンを彼女に差し出す。それを受け取ってくれたら、OKを意味するというもの。「どんなアイテムにも、愛や誰かをいたわる心が詰まっているんだ」とヨッゲさん。
自由でジョイフルな作品を生み出し、木工の楽しさを伝えてくれるヨッゲさんのショーは、一人芝居の舞台を見ているようで、ワクワクしました。ラストは、ケミカル・ブラザーズの曲をバックに、迫力いっぱいのパフォーマンスで盛り上げます。終わった後、「自分の人生や、職人としての話が出来て、この場に来れて嬉しい」というヨッゲさん。とても新鮮で刺激的な時間を、ありがとうございました!
ショーの後には、フィンツアーさんがモーラナイフが生まれたダーラナ地方の魅力を紹介してくださいました。ベストシーズンは夏至祭。ダーラナ地方は毛糸やテキスタイル、木工など、手仕事による伝統工芸品が有名です。その伝統工芸品をめぐるツアーがあるそうですよ。冬に行くならキールナでのオーロラがおすすめ。成田からキールナへ直行で行けるチャーター便が便利!
立ち見も出た満員御礼の木工ショー。
北欧料理リラ・ダーラナさんによる美味しいスウェーデン料理は、あっという間に消えていました(笑)
モーラナイフが当たるプレゼントのくじ引き大会も開催!
なんと、このくじ運の悪さを誇る筆者が(笑)、世界で人気のナイフ「Morakniv Companion」を当てちゃいました!(真ん中)ターコイズカラーがおしゃれ。大切に使います!(キャンプなどで使うのが楽しみ♪)
また、モーラナイフ正規輸入代理店の株式会社アンプラージュインターナショナルさんが、初の直営店となるショップを、10月14日(土)、鎌倉にオープンするそうです!(「UPI OUTDOOR鎌倉」鎌倉市御成町13-36)フェールラーベンやモーラナイフなど、北欧ブランドを中心に人気のアウトドア商品が揃っているそうですよ。気になる方は、ぜひこちらもチェックしてみてはいかがでしょう。http://uneplage.co.jp/
【ヨッゲ・スンクヴィスト(Jogge Sundqvist)プロフィール】
「スロール」の名前で知られるスウェーデンを代表する木工作家(ウッドワーカー)。4世代にわたって工芸職人をつとめてきた家庭に生まれ、父ウィレ・スンクヴィストと共に工芸の新しい時代を切り開く。北欧各国をはじめ、アメリカやドイツ等で木工を教えながら、自らも木工作品を作り続けている。http://www.surolle.se/