EM77 バキュームジャグ
デンマークのリビングウェアブランド「Stelton(ステルトン)」の新作発表会へ行ってきました。会場となったのは、南青山にあるサンワカンパニー東京ショールーム。デンマークのステルトン社からエクスポート担当のFinn Gram Jensen氏が来日し、ステルトンの歴史や、アルネ・ヤコブセンがデザインした「シリンダライン」の50周年を記念した新作、代表的ともいえる「EM77 バキュームジャグ」の40周年記念カラーが国内初お披露目となるなど、豊富なラインナップで会場が華やかに彩られました。
ステルトン社は1960年創業。モダンでスタイリッシュなポットやジャグで知られるステルトンですが、デンマーク人の暮らしの中で、いったいどんな存在なのでしょう?来日していたExport Managerのフィンさんに話を聞きました。(デンマークだけどフィンさんです)
ステルトン社Export Managerフィンさん
フィンさんによると、1960年の誕生以降、ステルトンはこれまでコアな製品に頼っていたところがあり、2004年に就任したMichael Ring氏にオーナーが代わり、今、ステルトン社はドラマチックに変革をしている最中だといいます。
アルネ・ヤコブセンが手がけた「シリンダライン」は1967年に誕生し、今年ちょうど50歳を迎えました。現在も北欧デザインのアイコンとして世代を超えて愛される名作。今では、“タイムレスなデザイン”、“クラシックデザイン”と評されていますが、50年前、このデザインを発表した当時は、「非常に前衛的だったんです」とフィンさん。
「シリンダライン」を見た当時の人々は、見たこともないその斬新なデザインに驚いたそうです。ただ、「人々に受け入れられるスピードはとても早かった」のだそう。理由は、当時のスター・デザイナーともいえるヤルネ・ヤコブセンのデザインだったから。ヤコブセンのデザインはまさにデンマークのど真ん中にあり、ものすごい影響力を持っていました。
シリンダライン50周年記念モデル
「シリンダライン」は、1964年、当時の社長Peter Holmbladがヤコブセンにデザインしてほしいと依頼しますが、義父にあたるヤコブセンはこの依頼を断りました。しかし、ホルムブランドは諦めきれず、自身で描いたスケッチをディナーの席で見せたところ、デザインとはこういうものだと、ヤコブセンがナプキンに描いて見せたそうです。それが現在の「シリンダライン」の原型となりました。
今回会場で披露されていたのは、ヤコブセンの色へのこだわりにインスピレーションを受けて生まれたもの。これまでのステンレス加工の「シリンダライン」に、初めて色をコーティングしたのだそう。上品で洗練されたペールトーンカラーが美しい。
EM77 バキュームジャグ40周年記念限定色(手前の3色)
また、今年40周年を迎えるステルトンのアイコン的存在ともいえるEM77 バキュームジャグも限定カラーが披露されていました。ステンレス製のバキュームジャグは、傾けると自動的にストッパーが開くという機能が付き、片手で注ぐことができるジャグとして1977年に誕生。その2年後の1979年に、当時まだ珍しい素材だったプラスチックを使用した「EM77 バキュームジャグ」が誕生し、現在も世界で愛されています。
「今日でもデンマークでバキュームジャグはほとんどの人が知っているし、老若男女、幅広い世代の人に知られています」とフィンさん。「8割方の知名度ではないかな?いや、7割くらいかも(笑)」と、ほんのちょっと控えめに(?)笑顔で話してくれました。ステルトンのプロダクトは、今でもデンマークの人々の暮らしの真ん中にあるようです。
「アメリカでも人気で、テレビや映画にもよく登場していますよ」と言われ、なるほど、確かに何気ないシーンで見たことがあるかも!「たとえば、(ウィル・スミス主演の)映画『アイ, ロボット』の中でも、舞台は未来の設定なのに、ステルトンのポットが登場している。未来の世界の暮らしの中でも全く違和感がない。面白いですよね」とフィンさん。未来にも当たり前のように存在している画が浮かんできます。
EMMAシリーズ
さらに、木の取っ手が温かみを感じさせる「EMMA」というシリーズにも素敵なエピソードがありました。かつてデンマークのどの家庭でも見られた、どこのメーカーなのかわからない無名ブランドのポットがあり、そのフォルムにインスピレーションを受けて誕生したのが「EMMA」なのだそう。当時、デンマークにいた主婦の代表格のような女性の名前がEMMAさんで、そこから名づけられました。
会場では、美味しいお料理とともに、バキュームジャグを実際に試すことができるカフェスペースもあり、とても寒い日だったので、帰りがけにアツアツのコーヒーをいただいたのですが、心からホッとする温かさでした。
実は、10月22日まで開催されていたデザインイベント「DESIGNART2017」の会場でもあったショールームには、クライン ダイサム アーキテクツとカリモクによる新作家具も披露されていました。さらには、そこかしこに、フィンランドやノルウェーのテーブルウェアがステルトンと一緒にディスプレイされており、その自然すぎる佇まいに、あらためて北欧デザインの相性の良さを実感したひとときでした。
▼ステルトンついて詳細はこちら
https://www.stelton.com/
https://www.scandex.co.jp/stelton/
協力:スキャンデックス
<会場フォト>
日常を彩る北欧デザインたち
ステルトンの姉妹ブランド「RIGTIG(リグティグ)」のキッチンアイテム
ん?シンクの中にイッタラ バード。水浴びタイム?