(c)2017 TIFF
10月から11月にかけて押し寄せた、映画やデザイン関連イベントラッシュが少し落ち着きました。街の色は移り変わり、イルミネーションの光輝く、華やかなクリスマス関連イベントが始まりつつありますね。
およそ1ヶ月が過ぎてしまいましたが、授賞式の模様をお伝えできてなかったので、フィンランドが初受賞を果たした記念すべき第30回東京国際映画祭の受賞の様子を一部ご紹介!
まず触れたいのは、やはり、コンペティション部門「最優秀脚本賞 Presented by WOWOW」を受賞した『ペット安楽死請負人』。誰に一番観てもらいたいかという質問に、「中年のある種の主義主張を持った男性たちに観てもらいたい。そういった男性たちがどれだけ馬鹿げているのかを語った映画ですので」と話していたヤニ・ペセ氏(プロデューサー)。
この賞は、今年から新設された賞。クロージングセレモニーの授賞式で名前が呼ばれると、ヤニさんは足早にステージへ。美しい江戸切子のカットが施されたトロフィーを贈呈され、とても嬉しそうに上段のほうを向いて笑顔で手を振っていました。
「今回、東京国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされ、そして大変高く評価していただきありがとうございます」と、受賞の喜びのほか、常にあたたかくもてなしてくれた映画祭に感謝の意を述べていました。「次の長編作に(獲得した5000ドルの賞金を)使いたいと思います!」と、笑顔。
審査委員の俳優、永瀬正敏さんは、「時間をかけて選ばせていただきました。最後には審査委員全員一致だった」とのこと!テーム監督、ヤニ プロデューサー、お二人の作品をまた楽しみにしています。本当におめでとうございます!
また、筆者が見た他のコンペ作品で印象的だったのは、フランス映画『マリリンヌ』。女優さんがもう、サイコーにチャーミングでした。ずっと心に引っかかり、全ての作品を見たわけではないけれど、主演女優賞を獲ってほしい!と願っていたら・・・
見事、主演の女優、アデリーヌ・デルミーさんが「最優秀主演女優賞」を受賞。さらに、今年新設された、宝石の原石のような輝きを放つ若手俳優に贈られる「東京ジェムストーン賞」まで受賞し、ダブル受賞となりました!(これにはかなり興奮!)
最優秀主演女優賞に輝いたアデリーヌ・デルミーさん(『マリリンヌ』)は、「今夜は是非皆さんのところに伺いたいところですが、舞台の公演中で伺うことができません。本当にありがとうございました」と、驚きと喜びのメッセージを動画で届けてくれました。
(c)2017 TIFF
『マリリンヌ』は、女優を目指す主人公の女性マリリンヌを追った作品で、どこからどこまでがこの女性の今の現実なのか、それとも演技なのかの境目がわからず、見ている人を迷宮に誘う演出にすっかり引き込まれてしまいました。怒られて落ち込んでいないかな、悪い男に引っかからないかなとか、何かと心配したりして、見ているうちに、すっかり彼女のファンに(笑)
人生には、思いがけないところに落とし穴があったり、思いがけないところに救いの神がいたり。不運な出会いや出来事があっても、見てくれている人はいて、良いご縁も。そこに素直に入っていけるかどうか。マリリンヌは映画の中の女優としてだけでなく、見ている人たちも虜にしてしまいました。
ラスト、やられました。ほんの3分間ほどのシーンだったかと思います。あたたかさに震え、涙が止まりませんでした。(あくまで個人的な意見ですが、アデリーヌ・デルミーさんは、大竹しのぶさんのような空気をまとった女優さんだなあと!舞台も見てみたい)劇場公開するでしょうか?ぜひ劇場で見ていただきたいです。
そして、今年の最高賞、「東京グランプリ/東京都知事賞」に輝いたのは、トルコの名匠セミフ・カプランオール監督作の『グレイン』でした!
トミー・リー・ジョーンズ審査委員長によると、審査員全員一致で選ばれた作品だったそうです。『グラン・ブルー』のジャン=マルク・バール主演の『グレイン』は、トルコ、ドイツ、フランス、スウェーデン、カタール制作のモノクロ映画で、食料危機に見舞われている近未来の地球で、ある教授が人類を救う粒(グレイン)を探す旅に出かけるという物語。すごいのは、難民問題や環境、宗教といった現代における課題を踏まえた内容とのこと。壮大なSFの美しい映像も見どころだそう。
1作品でも多く、日本の劇場で見られる日が来るといいですね。来年はどんな出会いが?北欧映画も楽しみです!
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<各賞の受賞者>
コンペティション部門
最優秀脚本賞 Presented by WOWOW:ヤニ・ペセ(『ペット安楽死請負人』プロデューサー)
観客賞:大九明子(『勝手にふるえてろ』監督)
最優秀芸術貢献賞:ドン・ユエ(『迫り来る嵐』監督/脚本)
最優秀男優賞:ドアン・イーホン(『迫り来る嵐』)
審査委員特別賞:シルヴィア・ルーツィ(『ナポリ、輝きの陰で』監督/脚本/プロデューサー/編集)、ルカ・ベッリーノ(『ナポリ、輝きの陰で』監督/脚本/プロデューサー/編集)
最優秀監督賞:エドモンド・ヨウ(『アケラット-ロヒャンギャの祈り』監督/脚本)
東京グランプリ:セミフ・カプランオール(『グレイン』監督/脚本/編集/プロデューサー)
日本映画スプラッシュ部門 作品賞:戸田ひかる(『Of Love & Law』監督)
アジアの未来部門 作品賞・国際交流基金アジアセンター特別賞:藤元明緒(『僕の帰る場所』監督/脚本/編集)
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