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【イベントレポート】子育てに奮闘する姿を映し出した「スウェーデンのパパたち」写真家ヨハン・ベーヴマン氏来日トーク



マグヌス・ローバック駐日スウェーデン大使(左)、ヨハン・ベーヴマン氏(右)


12月上旬、東京・広尾で行われたスウェーデンイベント「Sweden Week in Tokyo」。会場では、スウェーデンの写真家ヨハン・ベーヴマン氏の「スウェーデンのパパたち」の写真展も開催されていました。6ヶ月の育児休暇を取得し、子供たちと奮闘しながらも、かけがえのない時間を過ごすスウェーデンのパパたちのリアルでナチュラルな表情や姿をとらえた話題の写真展が、現在日本を巡回しています。

「Swedish Week in Tokyo」の最終日には、ヨハン・ベーヴマン氏の来日トークイベントが開催され、モデレーターにジャーナリストの治部れんげ氏、マグヌス・ローバック駐日スウェーデン大使も登壇しました。なぜヨハンさんは「スウェーデンのパパたち」を撮ろうと思ったのか。今の日本の働き方や家族のあり方を考えるきっかけとなりそうです。

世界一平等の国として知られるスウェーデン社会における子育ての歩みを振り返りながら、ヨハンさん、ローバック大使の両者が育児休暇中の経験やエピソードも披露してくれました。世界一平等の国といわれるスウェーデン。でも、けっして理想郷などではなく、まだまだ改善すべき課題はたくさんあるといいます。「ほぼ平等ではダメ。完璧に平等でなければ」とのこと。

この40年間で少しずつ変化し、スウェーデンでのパパの育児休暇取得率は90%以上。しかし、取得の男女比率にはまだまだ偏りがあり、両親が同等に取得する人は14%のみ。現在、この数字をさらに平等にすることを目標に掲げています。(2016年度の日本人男性の育児休暇取得率は3.16%で過去最高を記録。女性は81.8%で前年度より微増)


ローバック大使とヨハンさんの間にある(下)写真は、約30年前のローバック大使の貴重な子育てショット。


■なぜパパたちの写真を撮ろうと思った?

ヨハンさんがパパたちの写真を撮ろうと思ったのは、つまらない統計よりも、写真で表現したほうがいいと思ったから(笑)一番の理由としては、5年前に自分の子供が生まれたとき、一人の人間の責任を負わなければならないということにショックを受けたといいます。自分の父親はいるけれど、すぐ近くにロールモデルがいなかった上に、父親の視点に立った育児関連情報を見つけるのに苦労したとか。都市部はまだ育児休暇を取得している父親が多いけれど、子育ては母親という環境が強い地方にいけば孤立している父親もいるそうです。

他の父親たちがどうしているか、見たり読んだりすれば、もっと多くの男性が父親として、パートナーとして、安心して自分の役割について考えるようになるのではとヨハンさん。商業的な写真にもあるような笑顔で幸せそうな親子のイメージではなく、育児に疲れることもある父親のリアルな感情をとらえた写真を撮りたいと思ったそうです。「完璧ではなく過ちの中から学びがあるんだということを伝えることができたら。父親の育児休暇のことだけでなく、自分の写真がディスカッションの種まきになれば、社会全体に対する投げかけができれば」と思ったそうです。

被写体の親子の暮らしの中に溶け込んで撮影しているヨハンさん。ドキュメンタリー・フォトグラファーということもあり、たっぷりと時間をかけて、被写体と信頼関係を築いて撮影したそうです。

■育児休暇を取得した感想は?

2人目の育児休暇から戻ってきたばかりというヨハンさん。6ヶ月の育休を取得した理由は、子供のことを理解するのに1~2日、1週間では到底無理。ある程度の期間が必要だと。たっぷりと時間を取ったことにより、「子供たちとの絆、結びつきができたと感じるし、彼らが求めるニーズが理解できるようになった。小さい頃だけが子育てではなく、一生続くもの。子供たちと良い関係性、礎にもなる基礎を築けたと思う」と話していました。また、パートナーがいるとどうしても頼ってしまうところが出てくるので、「1対1で接する時間というのも大切」だと感じたそうです。

ヨハンさんの話を聞いて、子供と直面して途方に暮れていた当時の自分を思い出したというローバック大使も、約30年前に育児休暇を取得。子育て中の素敵な写真も披露してくれました。約30年前のパパたちと今のパパたちとの違いを問われた大使は、「子供も父親も・・・基本変わらないよね(笑)今のほうが良い父親かも」と笑いながら、「しかし、ルールは変わった」といいます。現在、父親は最低3ヶ月は育休を取らなくてはならず、取らないとその3ヶ月は自動的に消滅するというルールは昔はなかったとか。(※)

育児休暇中、夫人が6週間ニューヨークに行くことになり、双子の赤ちゃんと3人きりになったという大使。「そのときは禅の境地を悟りました(笑)」と振り返っていました。

(※)スウェーデンでは、子供一人につき、両親合わせて480日間の育児休暇を取得する権利がある。最初の390日は給与の80%が給付され、残りの90日は低い率の固定額が給付される。最初の390日のうち90日は両親それぞれに、残りは自由に譲渡可能。最低期間を取らないと権利は消滅する。

■いまの日本の社会に必要なこと、できることは?

「すぐには難しいかもしれないけれど、価値基準を変えたり、考え方を変える必要がありますよね」とヨハンさん。稼ぐのは男性、家事は女性のほうが上手いという考え方の人が、スウェーデンでもまだまだ多い。男性の所得のほうが女性より多いなどといった所得の問題も確かにあります。「男性は育児でも完璧を求めようとしがち。だからこそ、疲労感や途方に暮れている『スウェーデンのパパたち』の写真を見てもらえたら」と。夫婦共に情熱を捧げているキャリアを失いたくないし、夫婦共に同じくらい子供と一緒にいたいという強い気持ちがある。チームとして、家族として、(祖父母が近くにいるわけではないので)したいことをするためにはお互いの助けが必要。

大使は、子供たちと大切な時間を一緒に過ごすことができる育児休暇は「義務ではなく、権利であり、喜びでもある」と感じているとのこと。女性の権利が声高に上げられるけれど、男性の「子供と一緒にいる権利」も大切だと。スウェーデンでもまだまだ、男性はこうあるべき、女性はこうあるべきという考えは根強くあるようです。そんな中で大使は、「女性だけの問題ではないので、男性を女性の皆さんの領域に迎えてあげてください」と訴えていました。

また、社会全体を動かすには、確信に基づいた力が働かないといけない。労働力不足であることが牽引力となると。日本に欠けていると思う部分は、強い思いを持つ女性のムーブメントだと思うと大使。遅かれ早かれ、日本の社会の人たちが気づいて動き出すことが大切だと。多様性(ダイバーシティ)という言葉が日本で聞かれるようになり、「できればあと20年くらい日本にいたい。20年後の日本が行き着く先は、素晴らしいものになっているのではないでしょうか」と、日本の未来に明るい期待を寄せていました。




大使も奥様も、子育てとキャリア、両方ともあきらめたくなかったという約30年前、大使の奥様が仕事で6ヶ月ニューヨークへ行ってしまったとき、双子のベビーと3人きりというのは、それはそれは大変だったとお察しします・・・!(禅の境地)

子供が生まれると、生活がガラリと変わると思います。何かを失った気がしたり、社会とのつながりが・・・と気に病んでしまうことも多々感じるかもしれません。(先日お会いしたフィンランド人の2児のパパもおっしゃっていましたが)忍耐も必要。産後3ヶ月ほど睡眠が取れない日々が続いたときは、心身ともに本当に辛かったです。ヨハンさんと同じく、両親とは離れて暮らしていて、すぐ近くに相談出来る人もいませんでした。

ただ、未熟な自分が親として人として成長するために必要なプロセスなんだと切り替え、かげがえのない経験をさせてもらえていることにありがたく思えるように。妙なプライドや凝り固まった思考、壁をぶち壊してもらったような気がします。大使のおっしゃるように、「義務ではなく、権利であり喜び」というのに感銘を受けました。キレイごとばかりではない、疲れた顔の向こうにある幸せな姿に共感と勇気をもらえる。

貴重な日本の労働力を生かすために、これからの子供たちを社会全体で育てていくために、男性も女性も一緒にできることから始めてみる。ヨハンさんの「スウェーデンのパパたち」はきっと大きな呼びかけとなるに違いないと感じます。

【ヨハン・ベーヴマン氏プロフィール】
スウェーデンのマルメを拠点とするフリーランスの写真家。写真プロジェクト「スウェーデンのパパたち」は、世界中で展示され、英語書籍で出版されるなか、大きな影響をもたらした。世界報道写真、国際写真賞、ソニー賞、全米報道写真家協会、ユニセフ写真賞、スウェーデンの通信社TT大賞、スウェーデンのPicture of the Yearなど、彼の写真は多くの賞を受賞。2児の父。

<巡回写真展「スウェーデンのパパたち」スケジュール>
写真家ヨハン・ベーヴマン氏の写真展「スウェーデンのパパたち」が日本を巡回中。スウェーデン、ベトナム、中国、ルーマニア、ウガンダ、ドイツ、アメリカ、スイス、オーストラリア、フランス、日本など、10カ国以上を巡回しています。

■2017年11月25日~12月25日 渋谷区庁舎(公園通り沿い、NHK前)
※現在建設中の渋谷区庁舎工事壁に展示

■2017年12月9日~25日 グローカルカフェ(東京・北青山)
https://glocalcafe.jp/

■2018年1月13日~25日 岡山市男女共同参画社会推進センター「さんかく岡山」(岡山)
http://www.city.okayama.jp/shimin/danjo/danjo_00050.html

■2018年1月31日~2月3日 文京シビックセンター1階アートサロン(東京・文京区)

■2018年2月20日~27日 北九州市男女共同参画センター「ムーブ」(福岡)
http://kitakyu-move.jp/sisetsu/328.html

■2018年3月20日~28日 群馬県渋川市役所第2庁舎 もみじサロン(群馬)
http://www.shibukawa-navi.com/detail/index_130.html

■2018年4月13日~22日 ひと・まち交流館 京都(京都)
http://www.hitomachi-kyoto.jp/


※その他の巡回先は、特設HPをチェック!

▼スウェーデンのパパたち特設ホームページ
http://www.swedenabroad.com/swedishdads/jp
▼写真家ヨハン・ベーヴマンHP
http://www.johanbavman.se/swedish-dads/



(2017年12月12日更新)
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