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【イベントレポート】人にやさしく、幸せを感じる働き方を実現するには?ノルウェーの労働事情を大使夫人に聞く



2時間、会場の皆さん熱心に聞き入り、質問も多数!


4月22日、「第78回ノルウェーについて学ぶサロン」が開催されました。ノルウェーについて発信されている青木順子さんが代表を務める「ノルウェー夢ネット」主催の講演会スタイルのイベントで、筆者は今回が初参加。さまざまなジャンルで活躍するゲストを講師に迎えてきたサロンですが、なんと過去最多の参加者があったそうです。

ゲスト講師は、現ノルウェー大使夫人で、オスロ労働裁判所裁判官として活躍中のマーリット・B・フログネルさん。日本にはいつもほぼ1週間といった短い滞在のみで、マーリットさんは主にオスロの労働裁判所で裁判官として勤務しながら、EUの仕事でスイスに飛んだりと、もうすごく多忙な方なのだそう。労働裁判所では、労働組合と雇用主との争い事、特に、労働協約の解釈の違いなどの案件を扱ったりしているそうです。

そんな専門家のマーリットさんから、労働にまつわる法律や、具体的なノルウェーでの働き方についての貴重なお話を聞くことができました。

「働き方改革」という言葉をよく見聞きするようになった日本ですが、世界幸福度ランキング上位のノルウェーは、幸せを感じる働き方を実現するために、どんな制度に支えられているのでしょうか?マーリットさんは、それぞれカテゴリー分けをして、わかりやすくノルウェーの労働事情を話してくださいました。

働く人の権利を守るために、規則が細かく法律で定められているノルウェー。
労働、家族との時間、趣味・・・バランスを取ることが生きる幸せにつながる。


<就労率>
就労率は、66%(15~74歳:男性68.9%、女性64.6%)。「女性や高齢者にもっと働いてもらいたい」というのが課題。
高校生は、長期の夏休みを利用してアルバイトをする。昔は新聞配達をする子供がいたが、現在では学校のある日にアルバイトするというのはあまり聞かないとのこと。
ノルウェーでもパートタイムは女性が多い。

<労働者の権利の保護>
年齢や性別、障がい、介護看護をする人など、差別に関する規則は厳しい。(※消防士や警察官など、健康条件が必要な職種には条件をつけることができる)
パートタイムの人を優先的に登用する。
妊娠や出産、病気、怪我からの復帰後のポジションは保障されている。
解雇には相当な理由が必要。
最低賃金は特に定まっていないが、移民を安い賃金で雇おうとする雇用主がいるため、建築業界にはある。

<労働時間>
労働と労働の間の時間を、11時間開けて確保しなければならない。
相当な理由がない限り、残業は認められない。
(例外:弁護士などの管理職、フリーランス、自営業など。※1年目の弁護士は11時間開けるという規則が当てはまる)

<休暇>
労働者は休暇を取る義務がある。
パートタイムも同様に与えられるが、休暇手当が変わる。
60歳以上はプラス1週間の休暇保障あり。
夏に休暇を取れるようになっている(6月1日~9月30日)。5週間が一般的。

<休業>
育児休暇は、49週までは100%、59週までは80%の賃金保障がある。
父親も母親も10週取得できる。10週取らなければ消滅する。
父親には取らない人もいて、10週まるまる取る人は69%ほど。
母親は産後6週間は医学的に取らなければならない。
介護や病気の場合は、年間10日までの休業が取れる。

ここまで、ざっくりと一部ご紹介しましたが、とにかく労働者に対する権利が、●週や●日など、詳細に決まっており、守られているということがわかります。差別に関しての禁止事項なども細かく、徹底して定められていることが印象的です。残業はしない。残業をする人は無能だからという言葉もあるそうです(厳しい・・・!)。

休暇の買い上げや、「休まず働くのでお金をください」ということもできないそう。労働者は休暇を取らなければならず、雇用主も取らせないといけないようです。



<マーリットさんが考える現在のノルウェーの課題>
女性より男性のほうが給与が高いというのは事実だそう。男性が100だとしたら、女性は86.7くらい。女性の教育や職種が影響しているのが理由。また、女性のパートタイム率も多く、これもノルウェーの課題だとか(パートタイム男女比率:女性49.2%、男性26.3%)。

「子供が小さいうちは子供と一緒にいたいという女性も多いけれど、ずっとパートタイムだと年金で差がついてしまいます。40歳以上の女性で子供がいなくても、パートタイムの女性が多い。目標としては、男性も女性も“みんながフルタイムで働くこと”ですね」

さらに課題として挙げられるのは、民間企業のトップはまだ圧倒的に男性が多いということ。上場企業では、各性別ともに最低40%は設けなければならないというクオータ制を導入しています。

<なぜ長期休暇が取れるのか?>
これ、不思議ですよね。みんな一気に休んでしまったら、社会や経済がまわらなくなるんじゃない??って思いますよね。

7月はとにかく町中が静かになり、警察はやっているそうですが、裁判所はお休み。店などは、夏休み期間だけ働くアルバイトの人、代理の人が特別に雇われていることが多い。(確かに、仕事で問い合わせメールを送ると、7~8月は代理〔大学生?〕のアルバイトの方からのメールだったりします)

「みんな休みを取るから、誰も気にしません。『こんなところに行ってきたよ!』と、日焼けをして帰ってきて、職場でお土産話をするのがノルウェー人は好きなんです」とマーリットさん。実際、昔より休暇が長くなってきており、それは、働きすぎないようにとEUの規定があるのも影響しているといいます。

私たち日本人からしたら5週間の休暇なんて・・・!と尻込みしてしまいそうですが、マーリットさんは、「休暇から職場に戻るのに、もう1週間必要なのよね」と笑顔。これ、良く耳にしますが、やはり現実世界に戻ってくるのに、リハビリが必要のようです(笑)

<主婦はいないの?>
主婦というのは珍しく、どのくらい主婦がいるのかという「統計もない」とのこと。理由は、一つの家庭を支えるのに、二人の収入がないと生活が厳しいということが言えるそうです。

<育児についてマーリットさんの体験>
子供が小さいうちは、「ちゃんと分ける」ことが大事。一方が忙しかったら一方がやる、という形でやってきたそうです。1歳から入れる保障のある保育園が整っているというのも大きく、1~5歳まで、91.3%の子供が保育園に入っているとのこと。両親どちらかが送り迎えをします。

<日本の労働環境について>
妻であれ夫であれ、みんな一人ひとりが当事者意識を持つことが大切。
ノルウェーにも、弁護士、金融関係など、長時間労働の職種があるけれど、ちゃんと有給休暇を取得するそう。それは「権利」だから。雇用主が労働者にきちんと休暇を取らせなければならない厳しい規則があります。とにかく、「働きすぎは、よくない」ということ。

よく働き、よく休む。バランスと調和がとれていることこそ、体も脳も心も、「幸せ」を感じることにつながってくるのかもしれません。日本では同じようなことは難しいかもしれませんし、改革には相当な時間がかかるかもしれませんが、ノルウェーも急にこんな風になったわけではなく、じっくりと数十年取り組んできた結果によります。働き方改革は、まずは意識改革ですね。

【Marit B. Frogner(マーリット・B・フログネル)さん】
オスロ大学法学士。オスロ労働裁判所裁判官、欧州社会権委員会メンバー、ビジネスカレッジ講師として、ノルウェー国内外で活躍。夫はアーリン・リーメスタ 現・駐日ノルウェー大使。一女・二男の母。

取材協力:ノルウェー夢ネット

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(2018年05月01日更新)
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