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【LBGT】北欧5カ国は、なぜLGBT(セクシュアルマイノリティ)にやさしい国と呼ばれているのか?


4月28日から5月6日まで開催中のLGBTの祭典「東京レインボープライド2018」をご存知ですか?

LGBT(エル・ジー・ビィー・ティー)とは、女性同性愛者(レズビアン)、男性同性愛者(ゲイ)、両性愛者(バイセクシュアル)、トランスジェンダー(「身体の性」と「心の性」が一致しない人)のアルファベットの頭文字をとった性的少数者の総称。「東京レインボープライド」は、性的指向や性自認に関わらず、全ての人がより自分らしく誇りを持って、前向きに楽しく生きていくことができる社会の実現を目指すことを目的に開催されている国内最大のLGBTイベントです。

2018年は、社会貢献活動を多く行ったアメリカのポップアーティスト、キース・ヘリング生誕60周年。彼の作品とともに、「LOVE&EQUALITY(すべての愛に、平等を。)」がテーマとして掲げられています。

北欧5カ国の各大使館によると、LGBTの権利は、「個々の違いを乗り越えるための人権」であり、生まれてきたルーツや背景に関係なく、全ての人々に自分らしさを追求する権利。オープンで寛容であること、違いを受け入れることが大切だといいます。

北欧5カ国は、なぜLGBTにやさしい国と呼ばれているのか。
どのような部分で世界的に進んでいるのでしょうか。

LGBTの祭典「東京レインボープライド2018」開催直前の4月末、北欧5カ国のLGBTにおける最新事情を披露するプレス発表会がスウェーデン大使館で行われ、各国のLGBTに関する法整備の状況や課題、スウェーデンのLGBT事情を現地取材した記者による話を聞いてきました。



世界の先端を行く、LGBTへの法整備
違いを受け入れ認め合う、寛容な社会づくり


まず、北欧5カ国を代表して、デンマーク大使館の上席政治経済担当官である寺田和弘さんが解説。寺田さん自身もゲイでカミングアウトされており、EMA(Equal Marriage Alliance)というNPOを立ち上げ、日本でも同性婚を広げていきたいと活動しています。

北欧は、ゲイ幸福度ランキング(Romeo 2015)において、1位アイスランド、2位ノルウェー、3位デンマーク、4位スウェーデン、12位フィンランドと上位にランクイン。また、LGBTが働きやすいヨーロッパの国ランキング(Export Market 2017)でも、1位ノルウェー、2位フィンランド、5位スウェーデン、6位デンマークと上位を独占しています。

一人ひとりを大切にする北欧の精神が反映されていることがわかるランキングですが、では具体的に国として、どういった形の法整備が行われていて、人権が守られているのでしょうか。

<法整備の状況>
北欧の中では最も早い1979年に、スウェーデンが、同性愛を疾病リストから削除。他国も続いて80年代に、日本は1994年に削除されました。また、ノルウェーが世界で最も早く、1981年に「性的指向による差別(同性愛者への差別)の禁止」が定められ、「同性愛行為の合法化」に関しては、日本は1880年と意外にも早く、北欧で最も早いのはデンマークの1933年でした。

フィンランドがつい昨年合法化し話題となった「同性婚」については、ノルウェーが最も早く2008年、続いてスウェーデンが2009年に、アイスランドが2010年、デンマークが2012年、フィンランドが2017年と、北欧5カ国全てで同性間の結婚が認められることになりました。これにともない、それまでにあった「同性登録パートナーシップ制度」は廃止となり、結婚で一本化されました。

また、「性別変更を可能とする」という項目に関しても、北欧各国で認められており、日本でも2003年に、ある一定の条件を満たせばOKと定められています。

<北欧5カ国で定められている事がら>
1)同性愛を疾病リストから削除
2)性的指向による差別(同性愛者への差別)の禁止 ※ノルウェーが世界で初めて制定(1981年)
3)同性愛行為の合法化
4)同居する同性カップルの法的保護
5)同性カップルの一方の実子を他方が養子とすることができる
6)同性カップルが、いずれの子でもないものを共同で養子とすることができる ※フィンランドでは2017年に法律は成立済み。2019年に法施行の見通し。
7)同性登録パートナーシップ ※デンマークが世界で初めて導入(1989年)
8)同性婚
9)性別変更を可能とする
10)性別変更の要件(手術など)を撤廃
11)性自認による差別(トランスジェンダーへの差別)の禁止
12)トランスジェンダーを疾病リストから削除 ※デンマークのみ。世界初(2017年)

現時点、上記の中で日本で認められているのは、1、3、9のみ

これだけの法整備を世界で最も早く推進してきた要因としていくつか考えられる中に、北欧は人口が少なく、政治家や王室とも比較的距離が近く、80~90%の選挙投票率というところからもわかるように、人々の声が伝わり、実現しやすい社会であることや、会社だけで人生が完結するのではなく、社会や地域のさまざまな側面に積極的に関わっていくという生き方が大きく反映していると考えられています。

各国の小学校や中学校でも、多様性のある社会、寛容な社会を推進するための教育が行われています。たとえば、フィンランドの小学校の現代社会の教科書では、男性2人が肌の色の異なる子供たち2人と写った写真、さらに、中学校(15歳)の現代社会の教科書には、ウェディングドレスを着た女性2人が口づけを交わしている写真が掲載されています。これは、「家族に正しい形はなく、いろいろな形がある」ということを示しているのだそう。



レインボーカラーに染まった街から見えた、
個々の幸せを追求するスウェーデンの姿勢


現在、セクハラや働き方改革について担当しているという共同通信社編集局生活報道部次長の宮川さおりさん。彼女は2010年にスウェーデンを訪れ、LGBTについて現地を取材。大変興味深いものでした。

「驚くような事実がスウェーデンにあった」という宮川さんは、今でこそLGBTという言葉が聞かれるようになったものの、当時はまだまだ。しかし、そのシリーズ記事は全国20紙以上で掲載され、大反響を呼んだそうです。

2009年に同性婚が認められた翌年のスウェーデンでの取材だったこともあり、ちょうど政治家といった公職者がカミングアウトをし始めた頃だったとか。しかも、街はちょうど「プライドフェス」。街中がLGBTのレインボーカラーで染まっていたといいます。上手く観光化したりするビジネスマインドに触れたり、個人の幸せを追求する国だということも感じたそうです。少数の人々を排除していたら、国が成りたたなくなるという理由も非常に現実的。

パレードには35万人が集まり、約100団体が参加。消防団、警察、医師などもパレードで練り歩きました。最も大きな拍手が巻き起こったのは、LGBTの子供を持つ集団が登場したとき。宮川さんがある親御さんにインタビューをしたところ、カミングアウトよりも、26歳になるまで息子に言ってもらえなかったことのほうがショックだったそうで、現在は孫もいて、本当に幸せだと話していたそう。

LGBT先進国に立ちはだかる課題
トランスジェンダーへの対策が急務


LGBTに関する法律が整っていて、先進国といわれる北欧5カ国でも、まだまだ課題を抱えています。
たとえばスポーツ選手などには、さまざまなことに影響する可能性があるためか、極端にカミングアウトする人が少ないといいます。また、子供に話すときにどう話せばよいのか。さらには、異なる宗教やバックグラウンドを持つ移民の中で、LGBTの人やLGBTの子供を持つ親が社会で差別されがちであるという問題。そして、デンマーク以外、「トランスジェンダーを疾病リストから削除」という法律が定まっていないことからもわかるように、トランスジェンダーの人への対策がなかなか進んでいないという現状もあるようです。

このような性的マイノリティと呼ばれるLGBTへの見識を深めることができるのが「東京レインボープライド」。性別、年齢問わず楽しめるイベントになっているそうです。5月6日(日)12時からのパレードには、日本のLGBTコミュニティを応援するために、昨年に続き、北欧をはじめ、ヨーロッパ各国の大使たちが参加予定です。

▼北欧5カ国大使館も参加!年齢性別問わず楽しめるブースへ!
東京レインボープライド2018(TOKYO RAINBOW PRIDE 2018)
会場:代々木公園イベント広場・ケヤキ並木(入場無料)
プライドウィーク:2018年4月28日(土)~5月6日(日)
プライドフェスティバル:2018年5月5日(土)&6日(日)ブース番号:大14-15 ※雨天決行・荒天中止
パレード:2018年5月6日(日)12:00~(予定)※パレードには大使たちも参加!
https://tokyorainbowpride.com/


(2018年05月01日更新)
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