5月10日と11日の2日間、日本・スウェーデン外交関係樹立150周年の記念事業として、スウェーデンの北極地域で活動するアーティストやデザイナー、およそ20名による作品展「スウェーデンのアークティック・デザイン――北極の意匠」がスウェーデン大使館にて開催されました。
雄大な自然に囲まれて暮らすアーティストたちの作品は、自然素材を使った素朴であたたかみのあるシンプルでオーガニックなデザインが目立ちます。手織りのひざ掛け、トナカイの角で作られたシャンデリア、サーミの伝統にインスピレーションを得た屋外用バスタブ、色鮮やかなテキスタイルなど、普段日本ではなかなか見られない独創的なアイデアで彩られた作品が並びました。
また、本展では、ウミノーヴァ・エクスプレッション(スウェーデン北部のウメオ大学芸術キャンパスに拠点を置く、文化・アート・クリエイティブ分野を専門とする学生・研究者のためのビジネス・インキュベーター)が主催するプロジェクト「サマー・エクスプレッション2017」で選ばれた10名の若いデザイナーたちが6週間かけて製品化した作品も紹介。地元企業とともに、木や石、ガラスといった素材を使った革新的なデザインを生み出し、本展ではその一部を見ることができました。
開催初日は、スウェーデン出身のタレント、LiLiCoさんの司会進行で、出展者とのQ&Aセッションやスウェーデンの建築家でデザイナーのオーラ・ルーネ(Ola Rune)さんやプロダクトデザイナー、倉本仁さんによる基調講演が行われました。また、トヨタやホンダ、ボルボのカーデザイナーを経て、ウメオ大学デザイン研究所(UID)で講師を務めるヨナス・サンドストロムさんも登壇。
オーラさんが日本滞在で感じたこと、倉本さんがスウェーデン滞在で感じたことを、2人の講演より、印象的なお話を一部ご紹介します。
CKRというデザインユニットで知られるクラーソン・コイヴィスト・ルーネのオーラ・ルーネさんは、日本に5週間の滞在経験があり、その経験がCKRの作品に大きな影響を与えているといいます。スライドで作品を紹介しながら、「日本でたくさんのことを学びました。自分達の作品にしっかりと反映されている」と話し、「日本にいつかお礼がしたい」とも。また、日本人が取り組む姿勢を、「常に、“何か欠けているのではないか”とか、“もっとできることがあるのではないか”と追求する姿勢、考え方が美しい。素晴らしいと思う」と話していました。
Private Pool and Spa
Sweden 2016(Designed by Claesson Koivisto Rune)
2004年に開催された「東京スタイル in ストックホルム」(2004年)というイベントに招待されたプロダクトデザイナーの倉本仁さんは、2週間のスウェーデン滞在を経験。そのときにCKRとも出会い、デザインを教えてもらったりと、長年にわたり交友関係を築いてきたといいます。
倉本さんの話の中で印象的だったのは、スウェーデン家具メーカー「OFFECCT」の麻素材で完全に土に戻るチェアを作ったとき。「売れるか売れないかではなく、やることに意味があると言ってもらえた」といい、挑戦すること、時間をかけてやってみることに価値を見出し、評価する風土を北欧企業に感じたそうです。
Chair「Jin」(Designed by Jin Kuramoto for OFFECCT)
日本に紹介したいと、スウェーデンの北極地域のアーティストやデザイナーの作品が披露された本展。少しでも多くの人の目に触れることで、新しい出会いや視点、チャンスが生まれる可能性があります。学生、大学、企業が協力しあうという土壌もまた、スウェーデンが常に革新的なデザインを生み出し続ける大きな理由のひとつなのかもしれません。
<「スウェーデンのアークティック・デザイン――北極の意匠」展の展示風景>
手前のダンボールで制作された家具は、日本とスウェーデンによるコラボ作品。
家具、テキスタイル、インテリアアイテムなど、幅広い作品が披露されていました。
ジャンルや素材はさまざまですが、色合いや素朴な雰囲気は、どこか統一感を感じます。
「スウェーデンのアークティック・デザイン――北極の意匠」展
https://www.arcticdesignofsweden.com/
https://www.facebook.com/arcticdesignofsweden/
クラーソン・コイヴィスト・ルーネ
http://www.claessonkoivistorune.se/
ジンクラモトスタジオ
http://www.jinkuramoto.com/
https://www.offecct.com/family/jin/
ウメオ大学デザイン研究所(UID)
http://www.dh.umu.se/en/