第90回アカデミー賞、第75回ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞ノルウェー代表作品に選出された話題作『テルマ』。長編映画の監督デビューからわずか4作目にして、世界の国際映画祭で上映され、数々の賞を獲得するデンマーク出身、ノルウェーを拠点に活動するヨアキム・トリアー監督最新作です。(ラース・フォン・トリアー監督の甥と紹介されることがあったヨアキム・トリアー監督ですが、親類ではあっても叔父・甥といった近しい親類ではないそうです。今後北欧区でも気をつけてまいります)
これまでに、人間の抱える様々な問題に真摯に向き合った作品を描いてきたトリアー監督。そのヒューマンドラマに、絶妙なバランスで青春、恋愛、ファンタジー、さらにはホラー性を効かせた、カテゴライズ不能な衝撃作がこの『テルマ』です。
オスロの大学に通うため、親元を離れ一人暮らしを始めた主人公のテルマ。信仰心が深く厳格な両親のもと育ったテルマにとって、全てが新鮮そのもの。ある日、図書館で勉強していると、原因不明の発作に襲われたテルマ。そんなテルマを気にかけてくれたアンニャと親しくなってきます。
SNSの投稿を見てもまさに“リア充”で友人も多く、大人びたアンニャにテルマは憧れを抱き、アンニャは純真無垢なテルマに魅力を感じ、二人は互いに惹かれあっていきます。しかし、厳しい戒律のもとで育てられたテルマは、罪悪感に苦しむことに。そんな矢先、アンニャが行方不明になってしまい、自分の発作と何か関係があるのではと疑ったテルマ。両親が隠し続けてきた衝撃の事実に直面することになります。
テルマの中に潜む、幼い頃に封印されたはずの“恐ろしい力”とは…?(『アナと雪の女王』のエルサを思い起こしてしまいました。彼女にも不思議な力が…)
テルマを演じるのは、ノルウェーで子役から活躍していたエイリ・ハーボー。自分の中に眠っていた“恐ろしい力”と向き合うテルマという難役を好演。テルマと強く惹かれ合うアンニャ役は、本作が映画デビューとは思えない才能を発揮したカヤ・ウィルキンス。オケイ・カヤの名前で、ロンドンやニューヨークを中心に活躍するモデルかつミュージシャンです。
見る前は、絶対ホラーだしと思い込んでいて、あまりにも怖かったら目を閉じようと、深呼吸して試写に挑んだ筆者(実は怖いの苦手なんです…汗)。気づいたら、どちらかというと前のめり気味に(笑)北欧ならではの美しい映像から伝わる恐怖感やひんやりとした感触はあるんですが、「次、この次どうなるの?」と引き込まれていく自分がいました。森が、鳥がざわつくと、見ている側も胸がざわざわしてくる感触はけっして嫌ではなかったです。
この物語は「ロマンティック・スーパーナチュラル・スリラー」だというトリアー監督。森に秘められた神秘、自然、動物。監督が育ったノルウェーの寓話からもインスピレーションをもらったという、北欧らしさを随所に感じる作品。観る人によって様々な解釈ができるエンディングは必見!
『テルマ』は、10月20日(土)、YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開です。
テルマ
出演:エイリ・ハーボー、カヤ・ウィルキンス、ヘンリク・ラファエルソン、エレン・ドリト・ピーターセン
監督・脚本:ヨアキム・トリアー『母の残像』
原題:THELMA/2017年/ノルウェー・フランス・デンマーク・スウェーデン/カラー/116 分
字幕翻訳:松浦美奈
配給:ギャガ・プラス
http://gaga.ne.jp/thelma
©PaalAudestad/Motlys
10月20日(土)YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開!