HOME > What’s New > 2018年 > 2018年10月09日

【展覧会レポート】北欧の自然・暮らし・思い出を込めた「FIKAを楽しむ北欧デザイナー20人の茶道具」(京都へ巡回:10/11-17)



10月6日までスウェーデン大使館で開催されていた展覧会「FIKAを楽しむ北欧デザイナー20人の茶道具」。大使館会場は終了しましたが、10月11日より、会場を京都市景観重要建造物・歴史的風致形成建造物の京町屋の宿「正庵」へ会場を移して開催されます。

本日は、スウェーデン大使館でのオープニングパーティーでの模様をもう少しお届け。フィンランドから来日したデザイナーのお話など、展示品についてご紹介します。

今年2018年は日本・スウェーデン外交関係樹立150周年ということで、数多くのスウェーデン関連イベントが催されていますが、10月はデザイン月間。10月19日より開催されるデザイン&アートイベント「DESIGNART TOKYO」では、スウェーデンデザインがフィーチャーされます。

といわけで、ローバック スウェーデン大使もおっしゃっていましたが、展覧会「FIKAを楽しむ北欧デザイナー20人の茶道具」がまさにデザイン月間の先駆けとなるイベント。日本とスウェーデンのデザイン文化交流プロジェクト「Scandinavian Pattern Collection」が今回、第4弾として選んだテーマは、スウェーデンの「FIKAの心」と日本の「茶の湯の心」。そこに見られるおもてなしの心を、抹茶茶碗や扇子に表現しました。


インギビョルグ・ハンナ・ビャルナドッテ(アイスランド)の作品。「針が刺さるような荒々しい風とヒョウの降る厳しい自然をモチーフに描いてみました」


今回参加したデザイナーは20名(スウェーデン16、フィンランド3、アイスランド1)。移り変わる四季や自然からインスパイアされたもの、自分のお気に入りの場所、思い出などを表現。それぞれのストーリーを聞いているだけでワクワクしてくるから不思議です。アイスランドから1人だけ参加しているインギビョルグ・ハンナ・ビャルナドッテの作品は「ヒョウの降る嵐」。アイスランドの大自然がデザインの原点だといいます。

「スウェーデンと日本の心の通い合いを表したい」という思いから、作品づくりにもかなりこだわっています。展示の抹茶茶碗の原型は、国際的にも活躍する京都の陶芸家、松井利夫氏によるもの。完成した原型をもとに、京都の若手陶芸家、小坂大毅氏が一つひとつ手ロクロで仕上げています。京都で焼き上げた素焼きは、なんと波佐見(長崎)に運搬され、産地の窯元4社の協力により、すべて手作業で絵付けが施されるという手の込んだものになりました。

一緒にスタイリングされていた懐紙は、緻密で繊細な透かしが美しい美濃和紙。扇子は京都の小さな工房で一本一本手折りの技術により作られているものだそう。



磁器は温かいものを入れるとすぐに熱が伝わってしまうため、手を添える茶碗の胴の部分は厚めにし、口の部分は薄くするという工夫が凝らされているとか。実は、会場でお茶を点てていただいたのですが、手で包み込むとほんのり温度が伝わる程度で熱くありませんでした。和菓子ならず、スウェーデン菓子を口に入れた後のお抹茶。なんとも新鮮!(口の中でスウェーデンと日本が見事に融合しましたね~)まろやかでおいしかったです!(山本さまありがとうございました)


筆者がいただいた器は、デンマーク生まれスウェーデン育ちアメリカ在住デザイナーのソルヴェイ・マカレツの「広い森でベリー摘み」。絵本に出てくるような愛らしいキャラクターが!


実は、本展覧会に先立ち、9月2日にスウェーデン国立民族博物館(THE MUSEUM OF ETHNOGRAPHY)内にある本格的な茶室「瑞輝亭」にて、セミナーと茶会が開かれました。参加者の中には、現地在住の日本人をはじめ、着物姿のスウェーデンの人々、初めて茶の世界に触れる子供たちの姿も見られたそうです。



今回、フィンランド西海岸を拠点とする3名の若手デザイン集団で、幾何学的なパターンに洗練された色彩のデザインを得意とし、フィンランドとスウェーデン両方から影響を受けている「フィーラン」のメンバーが代表して来日。幼い頃の祖母との思い出を茶碗に込めました。



作品名は「アンナ・リーサ」。メンバーの一人の祖母の名前で、彼女には22人の孫とひ孫がいます。短い北欧の夏の間にできるだけたくさんの花が庭に咲き乱れるよう、花を大切に育てることに情熱を注いだ祖母。毎年美しい庭で楽しい夏を過ごした思い出を振り返り、このパターンを描いたのだそう。明るい陽射しの中でたくさんの花に囲まれた雰囲気が伝わってきます。



抹茶茶碗は、ベリーなどのフルーツやチョコレートやクッキー、アイスクリームを入れたりするボウルとして使うという発想。抹茶茶碗って、万能ボウルですね!ちょっとしたテーブルコーディネートで集いがさらに楽しいものに。

10月11日からは、京都市景観重要建造物・歴史的風致形成建造物という京町屋の宿「正庵」へ巡回。和の趣のある空間で、茶碗たちはどんな表情を見せるのでしょうか。お近くの方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょう。


SKÅL―うつわで乾杯!
FIKAを楽しむ北欧デザイナー20人の茶道具
 ※東京会場は終了。京都へ巡回
日時:2018年10月11日(木)~17日(土)
会場:京町家「正庵」(京都市景観重要建造物 歴史的風致形成建造物)
http://www.scandinavianpatterncollection.com

<参加デザイナー>
1. Anna Berger アンナ・バリエ(スウェーデン)
2. Anna Horling アンナ・ヘーリング(スウェーデン)
3. Anna Lindsten アンナ・リンドステン(スウェーデン)
4. Anneli Ohlsoon アネリー・オルソン(スウェーデン)
5. Annika Huett アニカ・フエット(スウェーデン)
6. Butler/Lindgard ブトレー/リンドゴード(スウェーデン)
7. Elina Rebers エリーナ・レベシュ(フィンランド)
8. Fyran フィーラン(フィンランド)
9. Ingibjorg Hanna Bjarnadottir インギビョルグ・ハンナ・ビャルナドッテ(アイスランド)
10. Johanna Hogvag ヨハンナ・ヘグヴェグ(フィンランド)
11. Johanna Orn ヨハンナ・エーン(スウェーデン)
12. Julia Bristulf ユリア・ブリストゥルフ(スウェーデン)
13. Julia Heurling ユリア・ヘウリング(スウェーデン)
14. Linda Svensson Edevint リンダ・スヴェンソン・エデヴィント(スウェーデン)
15. Maria Bergstrom マリア・ベリストレム(スウェーデン)
16. Marie Louise Hellgren マリールイス・ヘルグレン(スウェーデン)
17. Sofie Staffans-Lytz ソフィ・スタファンス・リューツ(スウェーデン)
18. Solvejg Makaretz ソフヴェイ・マカレツ(スウェーデン)
19. Studio Amanda Matilda スタジオ・アマンダ・マチルダ(スウェーデン)
20. Viktoria Hamberger ヴィクトリア・ハムベリエ(スウェーデン)
21. Tina Backman ティナ・バックマン(メインビジュアル)(スウェーデン)

▼「Scandinavian Pattern Collection」文化交流イベント第2弾(2015年)の模様もぜひ。この時参加&来日したユリア・ヘウリングさん、フィーランからお二人、マリールイス・ヘルグレンさんも今回の企画に参加されています!
【特集】北欧デザイナーによる一汁一菜の器『DUKA―北欧流シンプルな食卓』

(2018年10月10日更新)
このページの先頭へ