HOME > What’s New > 2018年 > 2018年10月23日

【展覧会レポート】インテリアを楽しむ現代のスウェーデンのお手本!家族と日常を描いた画家カール・ラーションの展覧会(12/24迄)


右から、オスカル・ヌードストローム・スカンス氏(カール&カーリン・ラーション家族会会長)、キア・ジョンソン館長(カール・ラーション・ゴーデン)、パトリック・ステウルン館長(ティールスカ・ギャラリー)、左から2人目は本展監修者の荒屋鋪透教授(中部大学)

日本・スウェーデン外交関係樹立150周年を記念するイベントが多く開催されていますが、秋は文化的イベントに焦点を当てたものが増えてきました。「インゲヤード・ローマン展」(9/14-12/9)と、ほぼ同時期に開催されるスウェーデンの人気画家カール・ラーションの展覧会「カール・ラーションスウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家」が、9月22日より、東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館にて開催されています。カール・ラーションの回顧展が日本で開催されるのは1994年以来のこと。その内覧会の模様と見どころをお届けします。

温かく柔らかな色彩の作品が特徴的なスウェーデンの国民的画家、カール・ラーション(1853~1919)。昔ながらの伝統が残るダーラナ地方で手に入れた「リッラ・ヒュットネース」と呼ばれる家を、妻カーリンとリフォームしていきます。その暮らしぶりを描いた画集が話題を呼び、世界中で翻訳出版され、現代のスウェーデンのインテリアに強く影響を与えたといいます。

また、カール・ラーションはジャポニズムに影響を受けています。例えば、線描を使用したり、花や植物を人物の前に出すという、まだ西洋では見られなかった浮世絵の大胆な構図を取り入れているところも大変興味深い点です。

本展では、カール・ラーションの絵画をはじめ、夫妻がデザインした家具、カーリンのテキスタイル作品など、日本初公開を含む品々が展示されています。スウェーデンのみならず、世界を魅了した彼らのライフスタイルとは?



オペラ座などのモダンな建物の壁画から水彩画、本の挿し絵まで、大小さまざまな作品を手がけてきたカール・ラーション。特に、水彩画では高い評価を得ました。また、理想とする家を建て、実際の彼と彼の家族の日常を描いたライフスタイルを紹介した画集がきっかけとなり、スウェーデンで最も有名な画家の一人となりました。他のアーティストや現代のスウェーデンのインテリアに大きな影響を与えています。



こちらは、カーリンの「名前の日」を描いた作品(カール・ラーション《命名日のお祝い》1899年、水彩)。「命名日は特別な日です」と、カール&カーリン・ラーション家族会会長のオスカル・ヌードストローム・スカンスさんが解説。スウェーデンやフィンランドでは、誕生日のほかに、自分の「名前の日」という日があります。「まさに家族の伝統そのもの。当時のスウェーデンはまだ貧しかったけれど、ハッピーでリラックスした家族の形を見ることができます」とオスカルさん。



また、ティールスカ・ギャラリーのパトリック・ステウルン館長が、カール・ラーション自画像の前で、「19世紀は世の中が、“家族は社会の一部”という考え方でしたが、カール・ラーションの作品からは、“社会が大きな家族であること”、“社会全体が家族のようにあるべきだ”というのを感じとることができます」と話していたことが印象的でした。



カール・ラーション・ゴーデン(記念館)のキア・ジョンソン館長が紹介してくれたのは、ラーション家のダイニングルーム。カーリン自身もアーティストで一時は諦めていましたが、家具のデザインから皿の絵付け、テーブルクロスの刺繍など、あちこちにカーリンの才能を見ることができます。



カーリンについては作品があまり残っていないそうですが、絵画をはじめ、自身と子供たちの洋服もデザイン。当時はまだコルセットを付ける時代だったにも関わらず、腰部分を締め付けない、ストンとしたワンピースを作りました。度重なる妊娠も理由の一つだったようですが、当時としてはモダンで新しいスタイル。



カーリンの刺繍のテーブルクロスやベッドクロスの展示では、テキスタイルはどうしても経年劣化があるため、家族の手によって再現された複製も展示されています。右から2つ目のテキスタイルの刺繍は、日本の家紋をヒントにデザインされたもの。



もちろん貴重なオリジナルの展示もありますが、カールとカーリンの寝室を仕切るカーテン《愛の薔薇》などは精巧な複製で、青いクッション《ひまわり》は、なんとキア館長のお手製。オリジナルはケースの中に展示されているので、もとの色の具合など、比較して鑑賞することができます。



また、ロココ、ルネサンス、バロックと、さまざまな古い家具を集め、カーリンと一緒に絵をつけて楽しんでいたというカール・ラーション。客間に置かれた青い椅子のように、自分たちのオリジナルを作っていました。



展示室の最後には、イケアの家具でコーディネートし、再現された「リッラ・ヒュットネース」の居間が登場。イケアのホームファニッシングの原点は、ラーション一家の温かい暮らしがルーツになっているとか。家の中をトータルにコーディネートすること。現在のスウェーデンのインテリアに太く繋がっていることがわかります。

展覧会「カール・ラーションスウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家」は、東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館にて、クリスマスイブとなる12月24日まで開催中。


カール・ラーション
スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家

会期:2018年9月22日(土)~12月24日(月・休)
休館日:月曜日(ただし9月24日、10月1日、8日、12月24日は開館)
会場:東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館
http://www.sjnk-museum.org/program/5469.html
※テキスタイルは一部複製品あり。



(2018年10月23日更新)
このページの先頭へ