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【映画】祝2冠!『氷の季節』が審査委員特別賞と最優秀男優賞を獲得!第31回東京国際映画祭


第31回東京国際映画祭が11月3日で閉幕!EXシアター六本木で開催されたアワード・セレモニーにて、最高賞となる東京グランプリをはじめ各賞が発表されました。

コンペティション部門に出品されたデンマーク映画『氷の季節』が、審査委員特別賞を受賞。さらに、主演のイェスパー・クリステンセンが最優秀男優賞に輝き、2つの賞を獲得しました!

東京グランプリは、フランスのミカエル・アース監督作『アマンダ』。最優秀脚本賞 Presented by WOWOWにも輝き、同作も2冠を達成。注目を浴びた稲垣吾郎主演作の『半世界』は観客賞を受賞しました。


『氷の季節』のマイケル・ノアー監督、審査委員特別賞おめでとうございます!©2018 TIFF


イェスパー・クリステンセンはビデオメッセージで!素晴らしい演技でした!(嫁いでゆく娘さんを見つめる眼差しとか・・絶妙な表情がもう・・・涙ものです)最優秀男優賞おめでとうございます!(北欧映画すごい!)©2018 TIFF


本日は、『氷の季節』で東京国際映画祭で2つの栄誉を獲得したマイケル・ノアー監督、プロデューサーのルネ・エズラさん、マティルダ・アッぺリンさんによる、10月31日の記者会見の模様をお届けします。

本作は、『007 スペクター』『ヒトラーに屈しなかった国王』で知られるデンマーク生まれの名優イェスパー・クリステンセンが主役イェンスを好演。舞台は19世紀。デンマークの農村地に暮らす人々は、厳しい自然環境の下で貧困にあえいでいました。過酷な冬を越すためにと選択した裕福な家との取引。家族のためと考えたその選択は、より良い暮らしと引き換えに、最も大切なものの損失を意味することになります。


(左から)プロデューサーのルネ・エズラさん、マイケル・ノアー監督、プロデューサーのマティルダ・アッぺリンさん


これまでに、厳格なリアリズムで社会を容赦なく描いてきたマイケル・ノアー監督。「なぜ19世紀のデンマークの農村を舞台にした映画を今、描こうと思ったのか」という質問に、自分も父であり、息子であることが土台にあり、自分の子供のためであると同時に自分のためでもある。19世紀を舞台にしたのは、当時は“飢え”との闘いがあるため、そこがキーポイント。生き残るための生々しいやり取りが浮き彫りになるということで、その時代設定にしたそうです。

また、「子供の遺体を窓から出して、時計を鳴らしたのは何か意味があるのか」という質問も上がり、デンマークの人々に伝わる慣習だと監督。まず、子供の遺体を窓から出すのは、亡霊や幽霊に家のドアを教えないためだとか。死に対する習慣の違いが見て取ることができます。

時計を鳴らしたのは、イェンスのような農家にとっては日が昇って暗くなったら寝るという時間感覚のない世界。時計の存在はそこが別世界であることが劇中で表現されているそうです。

さらに筆者も気になっていたのが、スウェーデンとの関係。デンマーク映画なのですが、スウェーデンとの関わりも出てくるので、デンマークとスウェーデンの話といってもいいのではないかと思うほど。「あえて、スウェーデンを取り入れた理由は?」という質問に興味津々。

監督は、この物語は何かを元にして描いたものではなく、完全なオリジナルストーリー。書物に頼らない独自リサーチをもとに作られています。「スウェーデンとは長い友好関係もあるし、バトルもある。この時代、デンマークはとにかく“飢え”が深刻な問題でした。事業をやりにデンマークに来ていたスウェーデン人のもとで働いていたデンマーク人も珍しくなかった」と、スウェーデン人との関わりは歴史を語る上で重要だったようです。


『氷の季節』(Before the Frost)のオリジナルポスター


リサーチにはとても野心を持って時間をかけたそうで、調べていくうちに、策略結婚があったり、例えば牛2頭で娘と、土地と息子を交換ということも実際にあったことも判明。また、「ハートがいっぱいでも、お腹が空っぽだと意味がない」という、ロマンのかけらもない(!)リアリズムを歌った容赦ない歌も見つけたとか(笑)

知られざる歴史はまだまだ多くあり、“飢え”を巡り、人々の生々しいやり取りがあったことを描きたかっただけでなく、現代社会とのつながりも見出したという監督。例えば、「(主役のイェンスたちは)教会で座る座席の位置にこだわります。それはまるでSNSでたくさんいいね!をもらうといった、一種の社会的なステイタスや欲望は今日に繋がっている」と指摘していました。

今年も北欧映画がやりましたね!来年もどんな作品が出品されるのか、楽しみです!


第31回東京国際映画祭(終了)
開催期間:2018年10月25日(木)~11月3日(土・祝)
会場:六本木ヒルズ(港区)、EXシアター六本木 他
公式サイト:http://www.tiff-jp.net

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(2018年11月23日更新)
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