東京オリンピック・パラリンピックまで、あと約1年半。一般的には、「まだ実感がわかないなあ」という人が多いかもしれませんが、エレベーターやホームドアの設置をはじめ、都内では五輪に向けた工事だろうなと思わせる景色に遭遇します。
2020年、駐日フィンランド大使館の敷地内に、オリンピック・パビリオンが誕生。先日開催されたプレスイベントでは、その詳細が明らかになりました。
■オリンピック・パビリオンとは?フィンランドの建築をはじめ、デザインやライフスタイル、食材、観光、スマートエネルギーといった、フィンランドの様々なテーマを紹介する場所としてオープン。例えば、オリンピック期間中は、フィンランドのオリンピック・パラリンピックチームの公式ホスピタリティハウスとして利用され、代表選手の記者会見や出資企業が商品やサービスを紹介したり、新商品の発表や顧客向けイベントに利用されるほか、一般に開放されるイベントなども時々開催されるようです。
建物は、フィンランド大使館の入口からすぐ左手にある倉庫を使い、その上にパビリオンを建設する模様。2階建てで、広さは約200㎡(予定)。オープンスペースなども合わせるともっと広く感じられるようです。パビリオン館内全て、車いす移動が可能。オープン期間は、2020年6月1日から12月までの約6カ月間。オリンピック・パラリンピック終了後も、テーマ・デーやテーマ・ウィークなどを設け、集いの場所として利用されるとのこと。サンタクロースや大使館マスコットキャラクター「フィンたん」も訪問するかも?!
プレスイベントでは、フィンランドから来日中のミカ・リンティラ経済産業大臣も登場。メッツァ・グループ アジア社長の宋望球氏に、1952年に開催されたヘルシンキ五輪のスタジアム模型を贈呈。
■親しみやすく、上質で粋なデザインパビリオンは、(昨秋、埼玉県飯能市にオープンした施設の名前と同じ)フィンランド語で「森」を表す「メッツァ」。パビリオンの主要出資企業であるメッツァ・グループに由来しています。
設計を担当したのは、優れたデザインで数多くの賞を受賞しているフィンランドの設計会社Helin & Co。持続可能であると同時に、見るものを鼓舞させる建築、計算しつくされたデザイン、そして周りの環境と調和するデザインで高く評価されています。
持続可能性であること、そして、日本とフィンランドが共通して持つ木造建築の長い伝統を意識してデザインされました。パビリオンを設計したペッカ・ヘリン氏は、「パビリオンは親しみやすく、本物志向であると同時に、上質で粋なデザインにしました」と話しています。
■フィンランドで育った木材で組み立てられる木製パビリオン
使用する木材は、フィンランドから15個のコンテナに入れて運ばれ、大使館敷地内で組み立てられます。解体後も再利用されるという、持続可能な組み立て式木製パビリオン。他の場所で、他の目的に再利用することができます。特徴としては、モジュール化により迅速に組み立てられること、コスト削減に期待できる軽い素材であること、二酸化炭素の吸収源となる環境への配慮などがあげられます。
ヘラジカのロゴが目印のメッツァ・グループは、フィンランドの森林業が主要産業。木材から、製材、パルプや用材、ボール紙、ティッシュやクッキングペーパーなどを供給している会社。「未来は、木で作られる」、「森林こそがソリューション」を掲げ、メッツァ・グループ アジア社長、宋望球氏は、森の国フィンランドの持続可能な森林こそが、世界が抱える課題を解決できると話します。
1886年にフィンランドは世界で初めて森を守る法律を制定。伐採したら、植林するというルールが設けられており、これまで約100年ずっと守られてきました。そのため、伐採して木材に使われる量よりも、育つ木のほうが多いのだとか。
また、メッツァ・グループは2018年に、ウッドファイバーを使用したテキスタイルを日本の伊藤忠商事と開発。商品化に動いているようです。
メッツァ・グループ アジア社長 宋望球氏(左)と、ビジネスフィンランド理事長 ペッカ・ソイニ氏(右)
■東京2020でのナショナル・ホスピタリティハウスの建設は特別なものナショナル・ホスピタリティハウス(オリンピックハウス)は、オリンピック・パラリンピック開催地で、各国の大使館が展開しているそうですが、フィンランドは、1998年の長野冬季五輪のときと2016年のリオ夏季五輪のときに作ったそうです。
リオのときは、2週間のみ既存の建物を利用したハウスで、選手村からも非常に遠く、選手でも数回しか行ってないといった状況だったとか。2020年、東京で作るのはとても特別なことで、今回は既存の建物を利用とかではなく、新しく作ります。大使館の立地なら、選手村からの移動もそう遠くなく、利便性が良いと考えられています。また、フィンランド外務省側から事前に、東京のフィンランド大使館敷地内に建ててはどうかとの提案があったため、場所の選定もスムーズだったそう。
2019年の日本・フィンランド外交関係樹立100周年をはじめ、2020年も引き続き、オリンピック・パラリンピックを通じて、両国の交流がますます盛んになっていきそうです。
<パビリオン内部イメージ (C)Helin & Co Architects>