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【社会】フィンランドが平等な社会づくりに貢献した上野千鶴子さんに感謝状



上野千鶴子さん(右)表彰式の模様。来日されたフィンランドのタルヤ・ハロネン前大統領(左)は、世界の災害のリスクを減らすさまざまな活動もされており、仙台にも訪れたそう。



平等な社会づくりの貢献者に贈る「Hän honours」
ハロネン前大統領から上野千鶴子さんに授与


男女平等な国として世界で知られるフィンランドは、男女平等を国外にも広げるために、今年6月3日より「Hänキャンペーン」をスタート。「Hän」とは、フィンランド語で男女問わず使える三人称。「平等」や「機会均等」を表すふさわしい言葉としてキャンペーン名に採用されたそうです。誰もが安心して快適に過ごせる社会の構築に貢献する世界の人に感謝状を贈る「Hänキャンペーン」で、日本からは、認定NPO 法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)の理事長、東京大学名誉教授で社会学者の上野千鶴子さんが「Hän honours」に選出されました。

女性学やジェンダー研究のパイオニアである上野さんは、長年にわたり性差別や性的虐待、性暴力といった社会議論となるテーマを根気強く訴え続けたことで、日本における男女平等の推進に貢献。今年4月に行われた東京大学入学式の祝辞で、東大をはじめ、日本社会に残る性差別に言及したことも記憶に新しいところ。このスピーチが反響を呼び、毅然と問題提議し続ける上野さんの姿勢もまた、選出された理由になったようです。

感謝状は先日、都内の駐日フィンランド大使館にて、ペッカ・オルパナ駐日フィンランド大使立会いのもと、フィンランド初の女性大統領として2期を務め、フィンランドの男女平等の象徴ともいえるタルヤ・ハロネン前大統領より、上野さんに授与されました。

労働現場における“見えない差別”
フィンランドもまだまだ努力が必要

誰もが健康であることと、平等であることは同じこと。男女平等は建国の時からのフィンランドの基本的理念。よくなってきているけれど、まだまだパーフェクトではなく、努力しなければならない部分はたくさんあるとのこと。たとえば、男女間で同一賃金ではないことや、トップ間の男女比率が均等でないことなど、フィンランドでも労働シーンでの差別が存在すると話しました。

特に、男女間の報酬の差やキャリアの差については、“見えない差別”と呼ばれているそう。学生時代の学業成績を見ると、男子より女子のほうが成績が良い傾向にあり、社会に出た頃は良いスタートを切っているものの、結婚を機に、今でも女性のほうが家事分担の比率が高く、男性は育児参加の面でも女性との差が見られるそうです。(社会的サポートは日本よりも手厚いように見えますが、低出生率はフィンランドでも問題になっています)若い男性・女性に対して、共に家庭を回していくことを促進しているとか。

現在、家で育児をやってもいいと考えている若い男性が多くなっているものの、長期の育児休暇を取得した際に、雇用主に、「仕事に興味がないの?」と思われる傾向があるため、(具体的にどんな政策を実施しているかまでは触れませんでしたが)、育児休暇を取得した男性たちをサポートする動きがでてきているそうです。


“ムーミンママ”というニックネームで愛されるハロネン前大統領。「私の夫は、“ムーミンママ”よりも、“リトルミイ”の方が似ているって言ってます」と笑顔。ムーミンママのマスコットを取り出して、上野さんにプレゼント。これも、ハロネンさん流のユーモア&おもてなし!



困難や障害を乗り越えるためには、
たくさんの努力とユーモアが大切

受賞の知らせを受けた上野さんは、フィンランドからの表彰に、「まったく想定外の出来事」と驚いた様子。「東京大学入学式における祝辞のおかげだとしたら、東京大学も感謝状に値するでしょう」と上野さん。

「受賞は素晴らしいことですが、GDPは世界3位なのに、日本の男女平等指数は140数カ国中111位という、恥ずかしい部分を世界に宣伝することになってしまいました」と嘆く上野さんは、この機会にハロネン前大統領に質問を用意。日本はまだ道半ば。さまざまな困難や障害を、どうやって乗り越えてきたのか。どのように若い女性たちを励ましたら良いのか。

その質問に対してハロネン前大統領は、「たくさんの努力と、たくさんのユーモアが必要」と笑顔で回答。メディアや、世間が厳しいときがあるからねと。「うまく生きていくには、ユーモアがとても大事」とのこと。

ハロネン前大統領の答えを受けて上野さんは、「フィンランドには“見えない差別”があること。また、日本と同じような問題を抱えていることもわかった。ユーモアがあれば乗り越えていける。ユーモアを持って、surviveしていきたい」と力強く話しました。

今回発表された「Hän honours」受賞者で北欧からは、女性の比率が低い技術者の教育を受けて企業で活躍できる女子を増やすことを目的とするノルウェーの「Jenter og teknologi(Girls and Technology)」も選出されています。

ハン・キャンペーンの公式サイト
http://www.finland.fi/hän
※「Hänキャンペーン」は、2019年末まで続く予定




(2019年06月25日更新)
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