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【展覧会レポート】共通の眼差しで歩んだ夫妻の25年に迫る!「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」展(3/20-6/20)


※世田谷美術館は、6月1日より再開しました。

自然光によって、作品がより美しく引き立てられた展示室(「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話」世田谷美術館)

3月20日(土)より、世田谷美術館にて、展覧会「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話」が開催中。フィンランドの巨匠、アルヴァ・アアルトと公私にわたるパートナー、アイノ・アアルトの二人の協働作品、分かち合ったヴィジョン、家族としての絆などが垣間見られる魅力的な展示が披露されています。

二人の出会いは、アイノが1924年にアルヴァ・アアルトの事務所で働き始めたのがきっかけ。半年後に結婚した二人は、公私にわたるパートナーとして、世界的建築家への道を歩むことになります。



■初期の作品に見ることができるイタリアからの影響

展覧会ではまず、二人が影響を受けた建築、ルーツを紹介。1920年代当時、フィンランドをはじめ北欧諸国で隆盛を誇っていたのは、イタリアのルネサンスやバロック様式を規範とした新古典主義建築。アアルト夫妻は新婚旅行に選んだ先も北イタリアで、水上飛行機でウィーンを経由し、ヴェローナに到着。1カ月半ほどかけてフィレンツェやパドゥヴァ、ヴェネツィアなどを巡りました。





アイノは一度学生時代にイタリアを訪れていたそうですが、アルヴァにとっては初めてのイタリア。生涯忘れられない経験となった旅からは、装飾的な壁面デザインが特徴的なユヴァスキュラの労働者会館や、ムーラメの教会といった初期の作品に見ることができます。



■トゥルクに転居。自宅兼事務所を構える

1927年にトゥルクの大規模プロジェクト、南西フィンランド農業協同組合ビルのコンペを勝ち取った二人は、一家でトゥルクに転居。この建物の最上階に自宅兼事務所を構えます。インテリアはアイノによるもので、マルセル・プロイヤーのデザインによるモダンなチェアやテーブル、子ども達のためにデザインしたオリジナルの棚やテーブル、チェアも披露されています。



ユヴァスキュラに事務所を構えていた頃から、木材による新しいデザインの可能性と曲げ加工技術を探求し続けてきたアイノとアルヴァ。トゥルクに移転してからも家具の開発に力を注いでいきます。



■「L-レッグ」を使った家具がアルテック社を通じて世界へ

バーチ材を使用した曲げ木の技術開発と曲げ加工した大判の成型合板の名作「パイミオ チェア」を生み出し、「L-レッグ」で特許を取得。それらを使った家具は、のちにアイノがアートディレクターを務めたアルテック社を通じて、フィンランド国内をはじめ、国際的に流通し、また、技術革新により、安く良質なモダンデザインが広まったきっかけにもなりました。曲げ木を加工する貴重な木材曲げ加工機も展示されています。



アアルトの名前を国際的に轟かせるきっかけとなったのは、結核患者の療養施設「パイミオのサナトリウム」。衛生面、環境面など、総合的な観点から細部にわたって設計されていることがわかります。使い手の視点に立って作られているだけでなく、心地よさを与える有機的なデザインもまた、アアルト建築として大きな特徴となっていきます。



1935年、アアルト夫妻は友人のニルス=グスタフ・ハールとマイレ・グリクセンと4人でインタリアデザイン会社アルテックをヘルシンキに設立しました。インテリアデザインを通じて、人々に最先端の技術と芸術への意識を高めることを目指します。代表作には、レストラン・サヴォイ、マルミ空港のターミネルやレストランの内装があります。

アイノは欧州を旅して集めたアイデアをもとに、アルテックのスタイルを築き上げ、アルテックストアは、フィンランド国内初となるインテリアデザインとアート、新しい文化の発信地となっていきます。アイノが中心となって手掛けた子ども向けの家具は、国内の幼稚園で定番化され、そのモダンなスタイルは次世代の人々に受け入れ続けていくことになります。



■住宅の理想を叶えたアアルトハウス

住宅問題の解決に関心を持っていたアルヴァ。アアルト夫妻の自宅と設計事務所からなるヘルシンキのアアルトハウスは、“住宅とは快適な安息の場でプライバシーが守られれなければならない場所”という彼らの理想を満たしたものになりました。また、グリクセン夫妻のために手掛けたマレイア邸でもその特徴が洗練された形で取り入れられています。



■家具やガラス器などで高評価を受け、国際舞台へ

国際的な建築雑誌がパイミオのサナトリウムとヴィープリの図書館を紹介したのち、世界でも名前を知られるようになったアイノとアルヴァ。ミラノ・トリエンナーレでも、アルヴァが曲げ木の家具で金メダルを、アイノがガラス器「ボルゲブリック」シリーズで金メダルを受賞し、二人の仕事が評価を受けます。



1937年のパリ万国博覧会でアルヴァが設計したフィンランド館は彼のキャリアの中でも最も重要な代表作の一つに。1936年のデザインコンペでアルヴァが優勝したガラス器「アアルトベース」 など、フィンランドの応用美術作品が披露されました。

1938年にニューヨーク近代美術館で個展が開かれ、1939年のニューヨーク万国博覧会ではフィンランド館の設計を担当。博覧会内で最も人気を集めた催しの一つになり、ニューヨークでの二つの成功により、二人は国際舞台で活躍。25年間、時代が移り変わっても、アルヴァは仕事のパートナーとしてアイノと対等に向き合ってきました。



■アアルト家の貴重なプライベート・コレクション

1947年にヘルシンキで開催され、国際巡回したアイノとアルヴァ・アアルト25周年記念展を経て、展覧会の最後を締めくくるのは、遺族のアアルト・ファミリーコレクションによって保管されてきた、アアルト家のプライベートに触れることのできる貴重な作品や一家のアルバム写真など並ぶコーナー。

アルヴァがアクリル絵具や油彩で描いた抽象画やアイノの水彩画、学生時代に描いた建築のスケッチや習作ノート、夫妻の旅の日記などが並び、アイノとアルヴァが夫婦として共通の眼差しをもって芸術に触れ、愛情を注いで子ども達を育んでいた様子がうかがえる家族アルバムなども披露されています。

<アルテックフォトスポット>



会場入口に向かう途中に、インテリアスタイリストの黒田美津子さんによるアルテックの家具やファブリック、インテリアを使ったコーディネートが2カ所披露されています。展覧会の会場内は写真撮影禁止ですが、こちらのスポットは撮影OK!アルヴァが素材からこだわったというレンガを使ったコーディネートは必見。壁の色と新色のファブリック「シエナ」とカラーリングを合わせた温もりを感じる空間になっています。



アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話
AINO AND ALVAR AALTO: Shared Visions

会期:2021年3月20日(土・祝)~6月20日(日)
開館時間:10時~18時(入場は17時30分まで)
休館日:毎週月曜(ただし5月3日(月・祝)は開館、5月6日(木)休館)
会場:世田谷美術館1階展示室(東京都世田谷区砧公園1-2)
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/
観覧料:一般1200円、65歳以上1000円、大高生800円、中小生500円

▼日時指定予約券(2月25日(木)正午~)
https://www.e-tix.jp/setagayaartmuseum/

<期間限定チケット(来場限定)> 一般 1000円、65歳以上 800円
2/25(木)販売開始:3/20(土)~4/23(金)

<4/24(土)以降来場販売スケジュール>
3/25(木)販売開始:4/24(土)~5/23(日)
4/25(日)販売開始:5/25(火)~6/20(日)

展覧会公式ウェブサイト:https://www.aino-alvar.com/

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(2021年06月14日更新)
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