©Adrià Goula
ノルウェーの首都オスロに、街を一望できる新しいランドマーク、ノルウェーを代表する画家、エドヴァルド・ムンクの作品が展示される「ムンク美術館(MUNCH)」が、10月22日にグランドオープンしました!
オスロのウォーターフロントにあるムンク美術館には11の展示室があり、代表作「The Sun (1909)」や、3種類の「The Scream(叫び)」をはじめとする、26,700以上におよぶムンクの豊富なコレクションがここに集まります。
最上階(13階)は、スタイン・オーラヴ・ヘンリクセン館長もお気に入りだという展望スペースがあり、オスロフィヨルドの美しい景色を堪能することができます。
グランドオープン前日、駐日ノルウェー大使館では、日本のメディア向けにムンク美術館のオープン記念イベントが開催されました。ヘンリクセン館長はオンラインで開館の喜びを述べ、通常の美術館という認識ではなく、新しい発見と体験ができる、全く異なる美術館だと説明。ムンクにインパイアされた多様なジャンルのアーティストたちの活動も披露される場になるといいます。
また、設計を担当したスペイン・マドリードを拠点に活動するJuan Herreros(フアン・ヘレロス)氏率いる建築事務所「Estudio Herreros(エストゥディオ・ヘレロス)」も、ムンク美術館からオンラインで登場。建物の特徴や魅力を力説してくれました。
インガ M. W. ニーハマル駐日ノルウェー大使
■海外からの注目度大!年間来館者数50万以上を目指す。わかりやすいランドマーク的な垂直の建物で、展示巡りだけでなく、自慢のバーやレストランにも足を運んでもらいたいとヘンリクセン館長。また、日本で2018年の秋から2019年初頭まで、東京都美術館にて開催された「ムンク展―共鳴する魂の叫び」に、約67万人の来場者があったことに感謝を述べました。
オスロのムンク美術館にも多くの来館者があるだろうと期待されており、年間来館者数は50万人を目標にしているとのこと。しかし、館長は、「正直、100万人は超えると思っている」と強気におっしゃっていましたよ!世界的に注目度が高く、日本をはじめ、海外からの多くの来館が期待されています。
建物の設計を担当したのは、スペイン・マドリードを拠点に活動する建築事務所「
Estudio Herreros(エストゥディオ・ヘレロス)」。ヘンリクセン館長は、素晴らしいコラボレーションだったと紹介。どのような経緯で、Estudio Herrerosがムンク美術館を担当することになったかというと、20社が参加した国際的に著名な建築家によるメンバーによる国際コンペにて。満場一致で選出されたのがEstudio Herrerosの案でした。
この選出に関して、Estudio Herrerosは、「我々は決して大きな建築事務所ではないですが、今回、とても民主主義的なフェアなコンペで、小さな声を聞いてもらえて本当に良かったです」と、コンペで選ばれた時のことにも触れました。
建築事務所「Estudio Herreros(エストゥディオ・ヘレロス)」もオンラインで建物を解説。
■オスロのシンボルとして、日常的に利用してもらえる場所に。「オスロのために建てたいという気持ちがありました。国内外の観光客を意識したオスロのシンボルとして。市民の方にも日常的に使ってもらえたら」と話すのは、Estudio Herrerosのフアン・ヘレロスさん。
垂直の建物は、一つの大きなエレベーターで全ての部屋が繋がっている構造。周辺と共存するために、環境のことにも配慮。作品を展示する場所ということだけでなく、サステナブルで環境的な面も、ムンク美術館を通じて教育していくことができたらと期待を込めて作られました。
建物は水辺にあるため、水の中に300以上の杭を打って造られたといい、33日間で建ったとのこと。温室効果ガスは50%カット。ファサードはリサイクルアルミ製、コンクリートには低炭素のものを使用するなど、未来のことを考えての建物が出来上がりました。また、展示室は作品が目立ち、映えるように、極めてシンプルな内装を意識したそう。
©Adrià Goula
美術館は人が集う場所。教養、研究の中心。一歩先を行くところ。「ムンクが表現している“憂い”などを建物に表現しているわけではないですが、常識を超えていく、切り拓いていくという精神は、ムンクかもしれない」とのこと。
構造としてユニークな点は、オープンな美術館であること。普段は隠れているはずの部分が見え、来館者がそれを認識できる状態。透明性の高い美術館であれば、美術館の誠実さや考えていることなどを理解してもらいやすくなるからだそう。
愛と死、魂を描いた画家、エドヴァルド・ムンク。インガ M. W. ニーハマル駐日ノルウェー大使によると、ムンクは“言葉”をたくさん残しているそうです。駐日ノルウェー大使館のプールサイドにもムンクの言葉がありました。そんなムンクの言葉にも着目して作品を見ると、また新たな発見がありそうです。
ムンク美術館というニューフェイスを迎えたオスロ。ムンク美術館は、渡航できるようになったら、ぜひ訪れたい、楽しみな場所の一つです。
ムンク美術館 ※2021年10月22日グランドオープンhttps://www.munchmuseet.no/en/ノルウェー大使館のプールサイドにあるムンクの言葉。
目に見えるものだけが自然ではない
自然はまた、魂の内なるイメージだ
- エドヴァルド・ムンク
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<大使公邸にあるムンク作品を一部披露>
ムンクの作品の中には、いわゆる日本を意識した“ジャポニズム”的なものは見られませんが、日本の版画などの技法を取り入れて作品を作っていたといいます。「叫び」や「吸血鬼」など、同じモチーフの絵を多く描く画家としても知られています。
『吸血鬼』(右手前)
『ブローチ、エヴァ・ムドッチ』
北欧諸国ほか欧州各国で公演を行っていたというイギリスの有名なヴァイオリニストのエヴァ・ムドッチ。ムンクとは1902年に出会い、恋人関係にあったといわれています。