4月16日より、デンマークを代表する家具ブランド、フリッツ・ハンセンの創業150周年を記念して、千代田区にある九段ハウスにて、展覧会「フリッツ・ハンセン 150th ―タイムレスデザインの証」が開催されています。
先日、取材させていただきましたので、会場レポートをお届けします!
フリッツ・ハンセンは、アルネ・ヤコブセン、ポール・ケアホルム、ハンス・J・ウェグナーといった、家具の巨匠デザイナーらとともに、北欧デザインの象徴と呼ばれる数々の名作を作りあげてきました。
巨匠たちが作り上げてきた北欧デザインからインスピレーションを得ながら、セシリエ・マンツ、ハイメ・アジョン、キャスパー・サルトをはじめとする、現在世界で絶賛活躍中のデザイナーたちと革新的なデザインを生み出しています。
展覧会では、フリッツ・ハンセンの歴史に触れながら、建築からインテリア、プロダクトデザインまで、アルネ・ヤコブセンがトータルで手掛けたSASロイヤルホテルの606号室へのオマージュ展示、名作家具のアニバーサリーモデルの展示、さらには、フリッツ・ハンセンの今を表現したコレクションに実際に見て、触って、座って体感できる空間になっています。
会場は、東京都千代田区にある歴史的建造物の「九段ハウス」。昭和2年(1927年)竣工、太平洋戦争で周辺の多くの建物が消失する中で、激動の時代を乗り越え、当時の姿を今に伝えている奇跡の建築物です。この上品かつレトロで雰囲気のある建物内の地下1階から地上3階まで、フリッツ・ハンセンの世界観にたっぷりと浸ることができます。
九段ハウス(山口萬吉邸)は、95年前、関東大震災の4年後に建てられたスペイン風デザインの建築物。震災の後ということで耐震を意識し、当時まだ珍しい鉄筋コンクリートの建築として知られています。
普段は一般公開はされていないため、こういったイベントがないと、なかなか開放されていない建物だそう。4月29日(金・祝)までと期間が短いですが、九段ハウス×フリッツ・ハンセンのコラボレーション展示はぜひ足を運びたい、この春おすすめの展覧会です。
フリッツ・ハンセン 150th ―タイムレスデザインの証日時:2022年4月16日(土)~29日(金・祝) 10:00~18:00
会場:
九段ハウス東京都千代田区九段北1-15-9
※滞在は1時間程度、靴を脱いで館内スリッパでの観覧になります。
▼新型コロナウイルス感染拡大防止対策として予約制になっています。
予約サイト:
https://airrsv.net/fritzhansen150th/calendar※予約は残り全ての日時で満員になりました(4/22時点)<観覧の際の注意>■展示されているソファや椅子は自由に座ることができますが、地下1階のみ、映像の前の椅子以外は座ることができません。
■2階の和室はスリッパのまま上がることができます。
■庭や3階のテラスはスリッパのまま出ることができます。外から戻る際は、マットで砂を落としてください。
■写真撮影可。
【フリッツ・ハンセン】1872年創業。家具、照明、アクセサリー小物のデザインと製造を担うデンマークを代表する家具ブランド。美しさと品質を追求すべく、世界中のアーティストやデザイナー、建築家らとコラボレーションし、モダンな北欧のライフスタイルを表現し続けている。アルネ・ヤコブセン、セシリエ・マンツ、ハンス・J・ウェグナー、ピエロ・リッソーニ、ハイメ・アジョン、ポール・ケアホルムを含む著名なデザイナーらとコレクションアイテムを生み出している。
https://www.fritzhansen.com/jaオーロラのような色味を感じる美しいミラーと、ピンクのアリンコチェア、セブンチェアのインスタレーション。(お風呂から上がって、「いい湯だったな~」みたいに、チェアが話し合っているように見えるのは私だけでしょうか)
<会場一部紹介>
地下1階は、地下ならではのムードのある光の中で、150周年を記念するプロダクトが展示されています。
かつて金庫室だったというスペースを茶室としてリノベーション(かなり大きな金庫室!)した静寂が広がる畳のスペースには、ポール・ケアホルムのPK0 AとPK60が展示されていました。ケアホルムがフリッツ・ハンセンに在籍した1952年にデザインされ、1997年に600脚の限定コレクションとして発売された人気のPK0チェアが、PK0 Aとして新しく仲間入り。同時期にデザインされ、これまでに発表されたことがなかったPK60コーヒーテーブルも。
フリッツ・ハンセン150年の歩みをまとめた映像を、生地張り、皮張りのセブンチェアで鑑賞することができます。
アイコン的存在のアリンコチェア。その3本脚のアリンコチェアと同時期にデザインされたエッグテーブルが、誕生70周年とフリッツ・ハンセン150周年を記念して復刻。華奢なたまご型のテーブルとアリンコチェアの組み合わせがなんともキュート。
廊下から扉が開いている部屋を覗くと、なんとそこはボイラー室!昔使われていたという佇まいの装置のそばに、そっとリリーチェアが。とにかく、九段ハウスの中は画になるところばかり!
1階のエントランス付近には、現在のフリッツ・ハンセンで活躍するスペインのハイメ・アジョンが手掛けたルネソファやロオチェア、アナログテーブル、イケバナと名前のついたフラワーベースなどが設置されており、テーブル上には貴重なスケッチ画も。
フリッツ・ハンセンは、50~60年代のデザイン黄金期だけでなく、現代で活躍するデザイナーとともに、さらに進化させ、また50年後に今のデザインが新たなレジェンドとして人々に愛され、続いていくことを思い描いているといいます。
ハイメ・アジョンのソファや日本のnendoのチェア、キャスパー・サルトのテーブルから、ポールケアホルムのチェアやテーブル、アルネ・ヤコブセンのエッグやスワンといった、新旧のデザイナーによるコラボレーション展示。時を越えて、家具同士で何かを語り合っているかのよう。
庭を覗くと、アウトドア家具ブランド「SKAGERAK(スカゲラック)」のテーブルや椅子が並び、とても涼しげでした。2021年にフリッツ・ハンセンのグループの仲間入りした1976年創業の家族経営ブランドです。
上階に行くと、窓が大きく、さらに明るい雰囲気に。アルネ・ヤコブセンが建築からインテリア、プロダクトデザインまでトータルで手掛けたことで有名なSASロイヤルホテル606号室へのオマージュの部屋は、映像を見ながら、ついついゆったりと寛いでしまいます。
床の間のある本格的な和室には、ポール・ケアホルムのPK0をはじめとする彼の代表作がずらり。掛け軸の絵はポール・ケアホルムがPK0を描いたものだとか。華奢でモダン、すっきりと洗練されたデザインのケアホルムのプロダクトと、和室の相性の良さに驚かされます。
3階の大きなソファセットには、ゆったりとした雰囲気が漂っており、来館者が何人も寛いでいるように見えました。ここでは、フリッツ・ハンセンのプロダクトにまつわる詳しい映像が流れています。
広い屋上のテラスにも、アウトドア家具ブランド「SKAGERAK(スカゲラック)」が設置されており(段差を上がって左のほうにもあります)、心地よい風にあたりながら、しばらく座っていたくなるような空間でした。瓦の見える和モダンな雰囲気が素敵。