HOME > What’s New > 2022年 > 2022年05月10日

【映画】逃亡の末に辿り着いた安住の地で、静かに語られた壮絶な真実『FLEE フリー』(6/10公開)




本年度のアカデミー賞にて、史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門に同時ノミネートを果たした、デンマーク他合作によるドキュメンタリー映画『FLEE フリー』(※)が、6月10日より公開されます。(残念ながら本作は受賞には至りませんでした。国際長編映画賞は濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が受賞しています)

※「FLEE」とは、危険や災害、追跡者などから安全な場所へ“逃げる”という意味。

アフガニスタンで生まれて育った、ある男性アミン(仮名)の実話をもとに、彼の家族や周辺の人々の安全を守るため、全てアニメーションで制作された作品。タリバンとアフガニスタンの現状、祖国から逃れて生き延びるために奮闘する過酷な日々、さらには、ゲイであることへの葛藤などもリアルに描かれています。

アニメーションを通じて語られる、壮絶な真実。
ほんの20数年前の話。すべては生き延びるため。


アフガニスタンで生まれ育ったアミンは、幼い頃、父が当局に連行されたまま戻らず、姉2人と兄、母とともに命がけで祖国を脱出。やがて家族とも離れ離れになり、数年後、たった一人でデンマークへと亡命した彼は、30代半ばとなり研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚の話が持ち上がっていました。

やっと、逃げなくてもいい、自分らしくいられる安住の地に辿り着いたアミン。しかし、恋人にも話していない、20年以上も抱え続けていた秘密がありました。それは、あまりにも壮絶な過去。ついに、親友である映画監督の前で、呼吸を整えながら静かに語り始めます。

アミンの物語は非常に個人的なものですが、紛争や難民、人種差別、LGBTQ+など、現代社会が掲げる多くの大きなテーマが詰まっており、今を生きる我々に衝撃と深い感動を与える内容です。

監督を務めたヨナス・ポヘール・ラスムセンもまた、迫害から逃れるためにロシアを離れたユダヤ系移民の家系。ユダヤ人の家庭に生まれた自分にとって、「逃亡」と「転居」というテーマは特に重要だといいます。

監督の祖母は、20世紀初頭にアミンのようにバルト海を渡ってデンマークに辿り着いたのだそう。しかし、亡命を申請したものの却下されたため、再び移動を余儀なくされ、今度はドイツへ。それから再び国から逃げ出さなければならなくなり、次はイギリス。祖母の強制的な転居と離散の物語は、今でも鮮明に監督の周りに付いて回っているものなのだとか。



この物語でアミンは、幼少期からの逃亡の果てにデンマークという国に辿り着き、同性婚を認めるヨーロッパ文化の中で、やっとの思いで安全な地で新しい「故郷」を作り始めます。しかしながら、すべての難民がアミンのように幸運ではありません。

ロシアによるウクライナ侵攻という、あまりにもリアルでタイムリーなトピックになった『FLEE フリー』。戦争というものは、物理的にも精神的にも、長期にわたり壊滅的なダメージを与えていることを伝えています。

家族でにぎやかに、楽しく過ごしていた故郷から強制的に逃げなければならないという現状。日常を奪われる辛さ。ただただ、家族と一緒に、毎日を過ごしたいだけなのに。今、世界中の人々が、真剣に考えなければならないメッセージが込められている映画です。

ちなみに、スサンネ・ビア監督作『真夜中のゆりかご』(14)や『ドミノ 復讐の咆哮』(19)、HBOドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」(11-19)等で知られるデンマークの俳優、ニコライ・コスター=ワルドーが本作に惚れ込み、デンマークでも大きな話題になると確信。製作に名乗りを上げ、製作総指揮を務めました。英語吹替版では、ラスムセン監督の声を担当しています。

ドキュメンタリー、アニメーションという表現の垣根を越え、各国の映画祭で82受賞136部門ノミネート(※4月12日現在)という世界中で高い評価を受けている『FLEE フリー』。2022年6月10日(金)より、新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン池袋他、全国順次公開予定です!



FLEE フリー
監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン
脚本:ヨナス・ポヘール・ラスムセン、アミン・ナワビ
エグゼクティブ・プロデューサー:リズ・アーメッド、ニコライ・コスター =ワルドー
2021年/デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フランス合作/デンマーク語、英語、ダリー語、ロシア語、スウェーデン語/シネスコ/カラー/89分/G/原題:Flugt/英題:FLEE/日本語字幕:松浦美奈
後援:デンマーク大使館
配給:トランスフォーマー

© Final Cut for Real ApS, Sun Creature Studio, Vivement Lundi!, Mostfilm, Mer Film ARTE France, Copenhagen Film Fund, Ryot Films, Vice Studios, VPRO 2021 All rights reserved

https://transformer.co.jp/m/flee/

2022年6月10日(金)より、新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン池袋他全国ロードショー



(2022年05月10日更新)
このページの先頭へ