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【映画】北欧から2作品登場!受賞は?映画レビューも!「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022」



クロージングセレモニーより。 Photo:SKIPシティ国際Dシネマ映画祭


“若手映像クリエイターの登竜門”として、次代を担う新たな才能の発掘を目指す「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」が先月、2019年以来、3年ぶりのスクリーン上映とオンライン配信を併用したハイブリッドで開催され、7月24日(日)に閉幕(オンラインは7月27日迄)。クロージング・セレモニーが行われ、グランプリほか各賞が発表されました。

皆さんは、映画祭、ご覧になりましたか?

映画祭が閉幕してから3週間ほど経ってしまい、アップのタイミングが遅くなりましたが、国際コンペティション部門に北欧から2作品選出されたので、その後、どうなったのか!気になる受賞結果、さらには、映画レビューも兼ねてお届けします。

果たして、北欧の作品の受賞は?!

国際コンペティションは、国内外から長編映画制作本数が3本以下の監督による60分以上の作品。ノミネートされた10作品の中から、最優秀作品賞(グランプリ)に輝いたのは、フランス作品『揺れるとき(英題:Softie)』(サミュエル・セイス監督)でした。

また、監督賞を受賞したのは、フランス、ドイツ合作『マグネティック・ビート』(ヴァンサン・マエル・カルドナ監督)。審査員特別賞は、ボリビア、ウルグアイ、フランス合作『UTAMA~私たちの家~』(アレハンドロ・ロアイサ・グリシ監督)。観客賞には、ロール・カラミー主演のフランス作品『彼女の生きる道』(セシル・デュクロック監督)が選出されました。

受賞者には、松永大司氏(映画監督)、ナム・ドンチュル氏(釜山国際映画祭プログラム・ディレクター)、寺島しのぶ氏(女優)3名の国際コンペティション審査委員長によるお祝いのコメントも寄せられました。

というわけで、北欧の2作品、『コメディ・クイーン』(スウェーデン)とワイルド・メン(デンマーク・ノルウェー合作)は受賞ならず。フランス作品が今年は強かった印象です。

残念ながら今年は北欧作品は賞を獲得できませんでしたが、気になる方はぜひレビューもご覧ください。(オンラインで鑑賞。やはりスクリーンと比べると迫力は欠けますが、家で思いきり泣くことができるというメリットがあります!笑)



 『コメディ・クイーン』(スウェーデン)©Ola Kjelbye
監督:サナ・レンケン
出演:シーグリッド・ヨンソン、オスカル・トリンゲ、エレン・タウレ、イギー・マルムボリ、アンナ・ビエルケルド
https://www.skipcity-dcf.jp/films/intl01.html

アジアン・プレミアだった『コメディ・クイーン』は、母親を亡くし、深い悲しみと不安定な状態を抱えながらも、自分以上に身動きが取れず、毎日のように泣き崩れる父親の笑顔を取り戻そうと、コメディアンになるために努力する13歳の少女サーシャの物語。

主人公のサーシャは友達とSNSや動画を見て楽しんだりと普段はいたって元気なティーンに見えますが、ふとしたところでスイッチが入ると不安定になってしまいます。母親の死が大きく影を落とし、クラスメイトの言うことにも噛みついたり、大切な親友までも傷つけてしまったり。

そんな中、コメディアンになって父に笑ってもらいたい。その一心でお気に入りのネタ帳を常に持ち歩き、いろんな場所で練習を重ねるサーシャ。達成できたTO DOリストを一つ一つ消していく彼女は、ひょんなことから町のバーのライブステージに立たせてもらえることに。「コメディアンになる」というTO DOリスト最後の項目は、果たして達成できたのでしょうか?

まだまだ母親に甘えたい年頃の13歳の少女のサーシャと、自分で考えて行動できる大人の階段を登りつつある思春期真っ只中のサーシャ。母親の死が常につきまとい、ハイになったり、落ち込んだりと、揺らぎまくる感情と脆さという繊細で複雑な少女の役をシーグリッド・ヨンソンが見事に演じていました。もちろんコメディアンとしてのステージは、こちらも手を握り締めて応援!それにしても、北欧映画のティーン役の俳優さんには本当に驚かされます。純粋で真っすぐな演技が素晴らしく、心を揺さぶられます。

否定せず、いつもサーシャを明るく前向きに応援してくれる周りの大人たちの姿勢にも涙。子どもを一人の人間として、きちんと目線を合わせて話を聞くスウェーデンらしさを感じました。人の温もりに触れることができる作品です。



  『ワイルド・メン』(デンマーク・ノルウェー合作)©Rasmus Weng Karlsen
監督:トマス・ダネスコフ
出演:ラスムス・ビョーグ、ザキ・ユーセフ、ソフィー・グロベル、ビョルン・スンクェスト
https://www.skipcity-dcf.jp/films/intl10.html

ジャパン・プレミアでの上映だった『ワイルド・メン』。タイムスリップしてきたかのようなワイルドな出で立ちの男がコンビニで買い物をしているメインビジュアルからして、もうすでにどこか可笑しい(笑)。ユーモアが散りばめられていることが想像できます。

主人公は、ミッドライフ・クライシス(中高年世代が陥る鬱病や不安障害)の問題を抱えたマーティン。妻や娘に恵まれ、幸せな暮らしを手に入れていたものの、徐々に今の生活にプレッシャーを感じ始めて逃亡。森の中で原始的な暮らし始めます。

ある日、コンビニで食べ物を調達しようとするマーティンですが、現金やカードでの支払いを断固として断り、あくまでも原始的な交渉での清算を試みますが、当然聞き入れてもらえず、強盗を犯してしまいます。そんな矢先、自動車事故でケガをした麻薬の運び屋が森に迷い込み、二人は一緒に追われることに。

随所に見える壮大で美しいノルウェーの自然の中で、現代社会に反発し、バイキングのような生活のマネをするも、全く上手くいかない(スマホは必携)。どこかずっと滑稽で、ぎこちなさが続くところに笑いをこらえながらも、必死に逃げる男たちを見届けます。現実から逃げた男たちの行方は?

主演を務めるラスムス・ビョーグとザキ・ユーセフは、2019年の同映画祭で監督賞を受賞した『デンマークの息子』(19)(※)でも主要キャストとして登場しています。他のキャストも、北欧の映画・TVの世界で活躍する俳優たちが勢揃い。登場人物たちも際立っていて、ブラックユーモアの効いた面白い作品でした。(※映画祭上映当時は、『陰謀のデンマーク』というタイトルで上映)

今年は、「家族」や「個人の生き方」にフォーカスした作品が多数ノミネート。北欧2作品もまさにそのようなテーマが描かれていましたよ。

またどこかで上映される機会があれば、ぜひご覧になってみてくださいね!



SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022 受賞結果一覧



●国際コンペティション●
国内外から長編映画制作本数が3本以下の監督による60分以上の作品。10作品がノミネート。

■最優秀作品賞(グランプリ)
『揺れるとき』
サミュエル・セイス監督(フランス/英題:Softie)
■監督賞
『マグネティック・ビート』
ヴァンサン・マエル・カルドナ監督(フランス、ドイツ/英題:Magnetic Beats)
■審査員特別賞
『UTAMA~私たちの家~』
アレハンドロ・ロアイサ・グリシ監督(ボリビア、ウルグアイ、フランス/英題:Utama)
■観客賞
『彼女の生きる道』
セシル・デュクロック監督(フランス/英題:Her Way)

●国内コンペティション●
国内から公募しノミネートされた短編部門8作品。

■SKIP シティアワード
『Journey』霧生笙吾監督(日本)
■優秀作品賞(長編部門)
『ダブル・ライフ』余園園監督(日本、中国)
■優秀作品賞(短編部門)
『サカナ島胃袋三腸目』若林萌監督(日本)
■観客賞(長編部門)
『ヴァタ ~箱あるいは体~』亀井岳監督(日本、マダガスカル)
■観客賞(短編部門)
『ストレージマン』萬野達郎監督(日本)



SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022 ※閉幕しました
会期:
《スクリーン上映》2022年7月16日(土)~24日(日)
《オンライン配信》2022年7月21日(木)10:00~27日(水)23:00
会場:SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 映像ホール、多目的ホール(埼玉県川口市)、メディアセブン(埼玉県川口市)ほか
オンライン配信:特設サイト(Powered by シネマディスカバリーズ)にて配信
主催:埼玉県、川口市、SKIP シティ国際映画祭実行委員会、特定非営利活動法人さいたま映像ボランティアの会
公式サイト:http://www.skipcity-dcf.jp/

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(2022年08月15日更新)
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