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【展覧会レポート】美術を愛し、美意識を貫き、理想を具現化したフィン・ユール デザインに触れる(10/9迄)



会場風景



7月23日より東京都美術館にて開催中の企画展「フィン・ユールとデンマークの椅子」。本日は、展覧会の会場レポートをお届けします。

同展は、椅子を中心にデンマーク家具デザインの変遷を辿りながら、モダン家具の黄金期を築いたデザイナー、フィン・ユールに焦点をあて、ユニークで独創的なデザインが生み出された背景を探る内容ということで開催前より北欧デザインファンの間でも注目度の高い展覧会となっていました。

筆者は個人的に、ローズウッドやウォルナット、チェリーといった濃い色の木材を使った家具を好む傾向にあり、デンマーク家具デザインの中でも、ひときわ個性を放つフィン・ユールのデザインは気になる存在でした。会場に一歩入った瞬間からワクワクが止まりません!

ところで、フィン・ユールの展覧会が東京都美術館で開催されることになったのは、2012年の同館リニューアルオープン時に、中央棟1階に「佐藤慶太郎記念 アートラウンジ」が新設されたのがきっかけだったそうです。


佐藤慶太郎記念 アートラウンジ ©東京都美術館


来館者がくつろげる空間となるようにとチョイスされたのが、フィン・ユールをはじめとするデンマーク家具や照明。同館学芸員で、同展を担当した小林明子さんは、「日本建築と北欧家具との親和性、さらには、フィン・ユールの椅子の座り心地と彫刻のような繊細な美しいデザインに魅了された」といいます。このときの経験から、フィン・ユールの椅子にスポットをあてた企画展を開催したいという思いがあり、今年実現に至りました。





エスカレーターを降りて始まる第1章は、「デンマークの椅子――そのデザインがはぐくまれた背景」。デンマーク家具デザインの歴史や変遷を辿ることができる展示スペースには、ずらりと並ぶ貴重な家具や名作椅子に気持ちが高ぶります。デンマーク家具の歩みを学習した後は、さらに下のフロアへ。第2章「フィン・ユールの世界へ」の展示スペースに向かいます。



こちらは、文字どおり、たっぷりとフィン・ユール・ワールドに浸れる展示スペース。年代を追って、初期の椅子やテーブルといった作品から、自邸の設計、住居や店舗、オフィスのインテリアデザイン、プロジェクトが披露されています。フィン・ユールといえば、椅子の作品への期待はもちろんありましたが、目を奪われたのは、壁面に展示された美しい図面の数々。展示会会場や椅子などの立面図や平面図がいくつか展示されているのですが、ここにもフィン・ユールの美意識が感じられます。





1930年代から40年代、50年代を経て、北欧デザインを紹介する国際展覧会の会場や国連本部、信託統治理事会議場など、アメリカで大規模なインテリアデザインのプロジェクトに携わり、活躍の場を広げます。フィン・ユールは意外にも店舗デザインなどインテリアも数多く手掛けていました。数でいえば、インテリアデザインに関する仕事が最も多いとのこと。

濃い色の木材を好んだフィン・ユールでしたが、刃物の切れ味を悪くする樹脂成分の多いチーク材をはじめ、オーク、ローズウッドといった量産には不向きと言われた木材での量産家具にも挑戦。自身が持つ美意識、理想と現実に苦しみながら、模索を続けました。苦悩が詰まったチーク材による初の量産家具にも注目です。

最後の第3章は、「デンマーク・デザインを体験する」。ゆったりとした室内で、アルネ・ヤコブセン、ポール・ケアホルム、コーア・クリント、ハンス・J・ウェグナー、ボーエ・モーエンセンなどなど、そうそうたるデザイナーたちの豪華共演。もちろん、フィン・ユールの椅子やソファもあります。デンマークの名作椅子に自由に座ることができるお楽しみスペース。こちらは写真撮影もOKなのが嬉しい。





展示されている貴重な作品は、椅子研究者の織田憲嗣さん(東海大学名誉教授)が長年、研究資料として収集してきた「織田コレクション」から多く出品されています。今回のように、この規模で「織田コレクション」を東京でまとめて紹介するのは初めてのこと。大変貴重な機会となっています。

暑い日が続きますが、上野公園内にある涼しい東京都美術館で、“ヒュッゲ”のような心地良さを常に大切にするデンマークで生まれたフィン・ユールの椅子や数々の仕事ぶりを見て、彼の哲学や美学に浸ってみてはいかがでしょうか。

企画展「フィン・ユールとデンマークの椅子」は、10月9日(日)まで、東京都美術館ギャラリーA・B・Cにて開催中です。

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「フィン・ユールとデンマークの椅子」東京都美術館にて開催(7/23-10/9)

<会場フォトギャラリー>

















フィン・ユールとデンマークの椅子
会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C
会期:2022年7月23日(土)~10月9日(日)
休室日:月曜日、9月20日(火) ※ただし、8月22日(月)、29日(月)、9月12日(月)、19日(月・祝)、26日(月)は開室
開室時間:9:30~17:30 金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
観覧料:一般 1100円 / 大学生・専門学校生 700円 / 65歳以上 800円
※高校生以下は無料
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料 ※いずれも証明できるものをご持参ください

※特別展「ボストン美術館展 芸術×力」のチケット(半券可)提示にて、各料金より300円引き

※10月1日(土)は「都民の日」により、どなたでも無料

※事前予約は不要ですが、混雑時に入場制限を行う場合があります。

主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館
https://www.tobikan.jp/finnjuhl

<同時期開催展覧会情報>
東京都現代美術館(江東区)にて、「ジャン・プルーヴェ」展(7/16-10/16)開催中
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/Jean_Prouve/




(2022年08月17日更新)
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