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【イベントレポート】フィンランドより3名来日!『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』日本公開記念トークイベント



左からレーナ監督、(通訳さん)、メルヤさん、エンマさん


3月3日より公開される映画『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』の日本公開記念トークイベントが、表参道の北欧カルチャースペース「Hyvää Matkaa!」にて開催されました。

フィンランドから、本作を手掛けたレーナ・キルペライネン監督(以下レーナ監督)と製作担当のメルヤ・リトラ氏(以下メルヤさん)、マイヤ・イソラの孫で本作にも出演しているエンマ・イソラ氏(以下エンマさん)の3名が来日し、イベントに登場。3人とも今回が初来日です。

マイヤ・イソラは、マリメッコのアイコン的存在のパターン「ウニッコ」柄をはじめ、1949年から1987年までの38年間で、マリメッコに提供したデザインは500以上。数々の代表作を生んだ伝説的デザイナーです。

そのマイヤ・イソラのドキュメンタリー映画をなぜ今撮ろうとしたのか、さらには、祖母マイヤ・イソラとのエンマさんの思い出など、貴重なお話を披露してくださいました。

まだ封切り前の映画についてのイベントですが、ネタバレしないよう、言葉を選びながらお話してくださったレーナ監督とメルヤさん。エンマさんは、祖母マイヤが母クリスティーナさんに宛てた手紙やポストカードを一部披露。直筆の日記といった貴重な宝物を持ってきて会場でシェアしてくれました。

本日は、そのとても濃い内容のトークイベントの模様をお届けします!



映画『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』日本公開記念トークイベント~PART1~



■なぜ今、マイヤ・イソラの映画を作ったのですか?

なぜ今、マイヤ・イソラの映画を作ったのかについて、「マリメッコのことは、たくさんの人が知っています。マリメッコのデザインもよく知られているけれど、マイヤ・イソラが誰であるかというのは、実はあまり知られていませんでした。なので、彼女の物語を綴りたいと思ったのがきっかけですね」と、レーナ監督。偉大なデザイナーの顔と、みんながよく知っているデザインを結び付けることができる映画を作りたかったと話していました。

■どんなアクションがきっかけで、このドキュメンタリーをやろうと決めたのですか?

あるマリメッコのデザインの本(カタログ)に惹かれたレーナ監督とメルヤさん。その中で、レーナ監督もメルヤさんも、マイヤが画家であるという側面をその本で初めて知ったのだとか。手紙のことなども書かれており、メルヤさんから「映画にしたらどうか」とレーナ監督に提案。少し考えた後、レーナ監督も映画にしたいということで、マイヤの娘クリスティーナさんに連絡をし、こういった映画を作りたいと話したところ、快諾を得たそうです。

レーナ監督とメルヤさん、エンマさんの三人が初めて会ったのは、撮影のとき。エンマさんは馬を5頭飼っているそうなのですが……映画のどこかで馬が出てくるという、ちょっとしたご愛嬌のネタ晴らしがありました。その馬は、エンマさんの馬。ちょっとだけ念頭に置いて映画を見ると、より楽しめるかもしれません。



■数あるデザインパターンの中から、どのデザインを映画に使うか、選ぶのが難しかったのでは?


38年間で500以上ものマリメッコのデザインを手掛けたマイヤ。「デザインがシリーズで出てくるので、シリーズで選びました。もちろん、それ以外の美しいパターンも出てくるので、映画を見たときに、じっくりと見てもらえたら」とレーナ監督。

■画家としてのマイヤについて

「本を読むまで、実はマイヤが画家というのを知らなかった」というレーナ監督。とても好奇心をそそられたそうです。生涯、いろんな場所で生活していたマイヤは、場所によって異なるスタイルの絵、多様なスタイルの絵を生み出しており、「当時彼女が住んでいた場所が、常に絵で描かれているような印象を持った」そうです。マイヤが画家としても活躍していたという事実は、フィンランドの人でさえも、あまり知られていませんでした。

■マイヤの娘クリスティーナさんを長期間撮影していて、二人はどんな関係だったと思いますか?


レーナ監督は、ネタバレしないように慎重に言葉を選びつつ、「クリスティーナさんが小さい頃は一緒に住んでいないけれど、その後、一緒に暮らし、連名での作品もあるように、仕事を一緒にすることになった二人」という印象。メルヤさんは、「(母娘というよりも)友情、仕事仲間に近かったのでは」と、周りが想像するよりももっと、デリケートな関係性だったかもしれないと話していました。

祖母マイヤと母クリスティーナさんの関係は、孫のエンマさんから見ても、「二人は母娘というより、仕事仲間、友人のように見えました」とのこと。エンマさんにとってマイヤは、いわゆる“おばあちゃん”という感じではなく、いつも名前で呼んでいたらしく、街に住んでいる“シティばあちゃん”のような感じだったとか。「絵を描くこともそうだし、人生の知恵なんかも、マイヤにたくさん教えてもらいました」とエンマさん。


エンマさんは、クリスティーナさん宛てのマイヤの直筆のポストカードや手紙、日記を披露してくれました。


日記の最後のページは、亡くなる少し前に書かれたもの(亡くなったのは2001年)。電車で見かけた女性や、自宅の近くで見たリスを描いたりしていたそうです。そのリスは、電線の上を走っていたようなのですが、突如大きな鳥に襲われたのを目撃。そんなシュールなシーンをマイヤは書き留めていました。


■自分語りの映画構成にしたのは?

劇中では、マイヤ自身の声でのナレーションだったり、手紙やポストカードなどが登場します。マイヤはたくさん旅をして、クリスティーナさんに手紙やポストカードを書いていたと同時に、日記もたくさん書いていました。レーナ監督は、「彼女の物語なので、彼女の声でお伝えしたほうがいい」と思ったそうです。

■手紙やポストカードといった非常に個人的な資料をもとに、どうやって映画にしていこうと思いましたか?

メルヤさんは、「パーソナルなものは、とてもワクワクするけれど、自分宛のものではないので、本当に自分が読んでもいいのかな?と感じました。普通なら人の手紙を見てはいけないですし、非常にプライベートなものなので」と、初めは躊躇したようです。

マイヤの手紙は、旅でのことが書かれており、とても端的でわかりやすく、遊び心にあふれ、見たもの、聞いたものが美しく綴られていたとか。遭遇したものに対するリアクションがしっかりと書かれていたので、マイヤの声を届けたいと思ったそうです。

■マイヤのデザインを次に受け継いでいく時に気をつけていることは?(来場者質問)

事前に募ったという来場者質問に、エンマさんは、「マイヤやマリメッコを知らなくても、必ずウニッコはフィンランドの人なら知っている花。ウニッコをたくさん見すぎて飽きている人がいるかもしれないですね」と、お茶目に返答した後、「花の形やアウトラインはずっと残していきたい。新しいアイデアを生み出しつつ、ウニッコの魂というものは、これからもずっと引き継いでいきたい」と考えているそうです。


© 2021 Greenlit Productions and New Docs
1964年に誕生した、マリメッコの顔ともいえるマイヤ・イソラの代表作「ウニッコ(ケシの花)」。来年2024年で、ウニッコ誕生から60周年を迎えます。


■マイヤのどのファブリックが好きですか?(何度も聞かれていると思うので今日の気分で)(来場者質問)

来場者から、やはりこれは聞いておきたいといった質問が出ました。ただ、3人ともこの質問は何度も聞かれているようなので、今日の気分でどのファブリックが好きかを選んでもらうことに。まず、レーナ監督は、「Musta lammas(ムスタラマス)」をチョイス。

ちょっとヒントになってしまいますが、劇中にも出てくる絵柄で、その絵柄にまつわるエピソードはアニメーションを使って出てきます。この映画では、絵柄がどのようにして生まれたのかが描かれているので、知っている柄も知らない柄も非常に身近に感じてきます。

メルヤさんがチョイスしたファブリックは、「Madison Wisconsin(マディソン ウィスコンシン)」。スマートフォンの画面で見せてくれたその柄は、当時あまりプリントされなかったため、たくさん出回らなかったというレアなデザイン。

エンマさんは、「ずっと灰色の日が続いていて、今日は晴れたから」と、明るい太陽のようなひまわり柄「Auringonkukka」(アウリンゴクッカ/ひまわり)を選んでいました。

■今、この映画を通じて、マイヤ・イソラの人生を知ってもらうというのには、どんな意味があると思いますか?どんなことを知ってもらいたいですか?

最後の質問に、エンマさんは、「マイヤの人生、マイヤのことを思って、見ていただければ」と答え、レーナ監督は、「もし見る機会があれば、何度か見てもらいたいです。見るたびに何か発見があると思います」と回答。実は、この返答の仕方は、メルヤさんの定番の答え方だったようで、レーナ監督は、「メルヤのをコピーしちゃったわ」と、お茶目に締めくくってくれました。

「レーナが私の答えを取っちゃいましたね」と、笑顔のメルヤさんは、「ぜひオープンマインドで見てもらいたいです。みなさんにもマイヤのように、たくさん旅をしてもらえたら。自然やアート、歴史を学び、何も考えずに、マイヤとともに旅立ってください」と、心からただ楽しんで見てもらいたいとアドバイス。

また、メルヤさんは、「ご覧になるときは出来たら、(パートナーに関してのお話でもあるので)パートナーの方(夫、ボーイフレンド、ガールフレンド、妻等)と一緒に行って、楽しく見ていただけたら嬉しいですね。アリガトウ」と付け加えました。

マリメッコの数々のデザインを手掛けたマイヤ・イソラという人は、こういった生き方をした人物なんだと感じることができる映画。人は、もっと自由でいいと、教えてもらえる作品です。

『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』は、2023年3月3日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開!

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マリメッコ伝説的デザイナーの人生を綴った『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』(3/3公開)


日本版の映画ポスターを見て、とても気に入っていたレーナ監督。「見ていて面白い、とてもアーティスティックだわ!」と絶賛していました。


マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン
監督:レーナ・キルペライネン
出演:マイヤ・イソラ、クリスティーナ・イソラ、エンマ・イソラ
2021年/フィンランド・ドイツ/フィンランド語/100分/カラー・モノクロ/ビスタ/5.1ch/原題:Maija Isola 英題:Maija Isola Master of Colour and Form/字幕翻訳:渡邊一治/字幕協力:坂根シルック
後援:フィンランド大使館
配給:シンカ + kinologue
http://maija-isola.kinologue.com

2023年3月3日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開



会場となった北欧カルチャースペース「Hyvää Matkaa!」の店頭では、2月14日まで、Pop Up Store「marimekko Vintage Kauppatori」が開催されています。(最新情報はHyvää Matkaa!のSNSをチェック)

マリメッコのデザイナー、マイヤ・イソラが手掛けたデザインのアイテムをはじめ、ヴィンテージ食器も販売中。さらには、まだ日本ではレアな北欧生まれのチョコレートもずらりと並んでいます。パッケージデザインも惹かれるものばかり。お気に入りを見つけに行ってみてはいかがでしょう。

Hyvää Matkaa!(ヒュバ・マトカ)
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-18-10 エクサスペース1-A
営業時間:11:00~18:00(不定休)
※最新情報は下記SNSでご確認ください。
Twitter Hyvää Matkaa @finntour_HMC
Instagram Hyvää Matkaa @finntour_hmc



(2023年02月14日更新)
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