3月1日の開会式に出席した(左から)ピーター・タクソ-イェンセン駐日デンマーク王国大使、 インガ M. W. ニーハマル駐日ノルウェー大使、織田憲嗣氏、タンヤ・ヤースケライネン駐日フィンランド大使、ペールエリック・ヘーグベリ駐日スウェーデン大使。
3月1日から日本橋髙島屋で開催されていた日本橋髙島屋開店90年記念「ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展」が、21日で幕を閉じました。
本日は、行きたかったけれど、残念ながら行けなかった、また、巡回先で行く予定だけれど、予習がてら見てみたいという人のために、展覧会レポートにてお届けします。
まず、本展についてあらためてお話すると、織田氏が長年かけて収集・研究した「織田コレクション」をもとに構成されており、300点以上の北欧デザインが披露されています。世界的にも名高い同コレクションの全貌に迫る初めての展覧会となり、総勢70名以上のデザイナーによる、300点以上の作品を一堂に見ることができる貴重な機会となっています。
▼織田コレクションとは織田氏が長年かけて収集・研究してきた、北欧を中心とした椅子やテーブルから照明、食器やカトラリー、木製のおもちゃ等のコレクション。写真や図面、文献などの資料が系統立てて集積されており、近代デザイン史の変遷を俯瞰できる学術的にも極めて貴重な資料として、世界的にも高い評価を得ている。北海道の東川町複合交流施設「せんとぴゅあ」にて常設展示。
https://odacollection.jp▼展覧会について日本橋髙島屋開店90年記念「ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展」
まず、エンストランスを抜けると、フィンランドのオイバ・トイッカの代表作「バード」がずらりとお出迎え。そして、第1章「椅子と生きる ~Chairs for life~」では、やはり北欧デザインを語るのに外せない椅子が披露されています。北欧各国の名作椅子がずらりと並ぶ姿は迫力があります。
第2章「デザインの源泉 ~Design beginnings~」では、主にデンマークとフィンランドの巨匠10名の作品が展示されています。
カラフェ カイ・フランク フィンランド 1957~62 ヌータヤルヴィ
カラフェ クレムリンベル カイ・フランク フィンランド 1957 ヌータヤルヴィ
カルティオ カイ・フランク フィンランド 1953 ヌータヤルヴィ
フィンランドのカイ・フランクによるヌータヤルヴィで作られた作品「カラフェ」「カラフェ クレムリンベル」「カルティオ」が、真っ先に目に入ってきました。姿、形、落ち着いたカラーがとても美しく、多くのメディアの足を留めていた作品です。
開会式前には、東海大学名誉教授・北海道東川町文化芸術コーディネーターの織田憲嗣氏が、自らメディアツアーで作品を解説。
ボーレ タピオ・ヴィルカラ フィンランド 1967 ヴェニーニ
本展のチラシにも登場していたフィンランドのタピオ・ヴィルカラの「ボーレ」も存在感を放っていました。「bolle」は「泡」という意味で、別々に吹いたガラスを一つに合わせて成形するといった高度な技(インカルモ技法)で制作された作品。イタリアのヴェニーニ工房のヴェネツィアングラス職人の技とヴィルカラの色彩・造形感覚が融合した逸品です。
第2章「デザインの源泉 ~Design beginnings~」、フィンランドからは、カイ・フランク・タピオ・ヴィルカラの他にも、ティモ・サルパネヴァやアルヴァ・アアルトの作品を紹介。展示の壁のグラデーションがナチュラルな優しい色で設えられていて、とても心地よく美しい空間でした。
こちらも第2章より。デンマークからは、アルネ・ヤコブセン、フィン・ユール、ハンス J・ウェグナー、ヘニング・コッペル、イェンス・クイストゴー、ポール・ケアホルムの家具たちがずらり。名作椅子たちの豪華共演。
名作中の名作椅子、ハンス J・ウェグナーの「ザ・チェア」。織田氏によると、2脚のみ試作で作られた、そのうちの1脚が真ん中の椅子(右から2つ目)だとか。また、椅子の背もたれ部分で一番上部に横渡しされている笠木(一番右の椅子の前に置いてあるもの)は、向かって右半分が加工済み、左半分は未加工。家具メーカーJohannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)〔PPモブラーの前身〕の職人が作った唯一のものだそう。左側はチャイナ・チェア。これらの3脚は全て同じ系譜。
第3章「心の居場所 ~Where the heart is~」では、北欧の部屋を再現し、椅子や家具を展示。リビングとダイニングの2つの空間の前に設置された現行商品の北欧の椅子に座って、雰囲気を体感することができます。
そんな2つの部屋の照明には秘密があり、昼と晩を再現した光の演出に合わせて、部屋の雰囲気がガラリと変わります。昼間の照明のない状態と、晩の照明のある状態とで異なる家具の表情を楽しむことができます。
右端に見えるチェアは、ベント・ヴィンゲの「イージーチェア」。1958-59年のもの。現存するものでは世界で唯一。背もたれの角度を変えることができる可動式。
織田氏が実際に日常生活で使用しているフィン・ユールのキャビネットやアルヴァ・アアルトのワゴンも展示されており、「いくら名品でも使わないと何にも意味がない。いいものほど使うべきだと思う」と話していました。
第4章「美しい同居人 ~Handsome housewares~」では、インテリアアクセサリーや食器などと、アートピースを交えて展示。カイ・ボイスンの「ライオン」、ニルス・ランドベリ「チューリップグラス」、スティグ・リンドベリやリサ・ラーションの作品も。
会場内数カ所にて、北欧デザインを使ったスタイリングも披露されていました。こちらのテーブル「エジプシャンテーブル」は、デンマークのモーエンス・ラッセンが1922年にデザインしたもの。照明はポール・ヘニングセンの「PH3½-2½テーブルランプ」、個性的な椅子「ハープチェア(バイキングチェア)」は、1968年にヨルゲン・ホヴェルスコフが手掛けた作品。フィンランドのイッタラのガラス器との組み合わせも素敵です。
第5章「ていねいに暮らす ~Living mindfully~」では、北欧の人々の暮らしを紹介するオリジナル映像を、アルテックのカラフルなスツール60に座って見ることができました。行った皆さんは、どの色のスツール60に座りましたか?ちなみに、スツール60は今年で90周年を迎えます。
「ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展」は、日本橋髙島屋を皮切りに、ジェイアール名古屋タカシマヤ、大阪髙島屋を巡回する予定です。会場が変わるとまた雰囲気が変わると思うので、お近くの皆様、行くチャンスがある方はお見逃しなく!
ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展会場:日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール
会期:2023年3月1日(水)~21日(火・祝)
時間:午前10時30分~午後7時(午後7時30分閉場)
※最終日3月21日(火・祝)は午後5時30分まで(午後6時閉場)
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/hokuou/index.html<巡回予定>2023年4月20日(木)~5月7日(日)ジェイアール名古屋タカシマヤ 10階特設会場
2023年8月9日(水)~20日(日)大阪髙島屋 7階グランドホール