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【イベントレポート】食を通じてバルト三国を知ろう!紀行本『バルト三国のキッチンから』発売記念発表会レポート



こちらはリトアニア料理。色も形も個性豊か。日本人の口にも合うお味。


旅する食文化研究家・佐々木敬子さんの紀行本『バルト三国のキッチンから』の、メディア向け発売記念発表会が、駐日リトアニア大使館にて開催されました。

リトアニア、ラトビア、エストニアのバルト三国の駐日大使も登場。バルト三国で集まってこういったイベントを開催することはかなりレアなことのようで、3人の大使ともに、本を通じて日本にバルト三国のことに触れてもらえる素晴らしい機会をいただいたと、喜びの言葉を述べていました。

また、本の紹介をはじめ、本に書ききれなかったこぼれ話などを、著者の佐々木さんと、佐々木さんの友人でイラストレーターのとみこはんの二人によるトーク。そして、その後には、佐々木さんの新刊と2021年のエストニアのレシピ本に掲載されているレシピをもとに作られた料理やデザートを試食しました。どれもバルト三国を代表するものばかり。本日は、新刊発売記念発表会の模様をお届けします。


左から、オーレリウス・ジーカス リトアニア共和国大使、ズィグマールス・ズィルガルヴィス ラトビア共和国大使、ヴァイノ・レイナルト エストニア共和国大使。


ジーカス  リトアニア大使によると、バルト三国で何かをやるときは、立地的にも、アルファベット的にもリトアニアがいつも最後になりがちだそうですが、この日は一番初めに挨拶をすることが新鮮だったよう。

ラトビアは挟まれているので、どちらにしても二番手になることが多く、エストニアは、普段ならば一番手と、3大使とも打ち合わせたかのように”順番ネタ“に触れ、バトンを手渡していくような息の合った挨拶が面白かったです。

「佐々木さんの本は、バルト三国の食に触れています。単に食のことを話しているだけでなく、そこに住む人々、ライフスタイル、自然に対するリスペクトや思い、歴史背景なども盛り込まれた内容」と、ジーカス  リトアニア大使。

ラトビアのズィルガルヴィス大使は、(一つに括られがちな)バルト三国がどう違うのかがわかってもらえるきっかけになる本だと紹介し、「ラトビアで会いましょう」と笑顔で挨拶。エストニアのレイナルト大使は、「食というものは我々が生きていく上で重要なものであり、人々を繋ぐもの。バルト三国を食を通じて知ることができる本」と話しました。

ちなみに、ミシュラン二つ星のレストランが1軒誕生したエストニアでは、興味を持った旅行者がミシュランガイドを手に訪れるといいます。ミシュランガイドには、エストニアのレストランが34軒も紹介されており、注目の国の一つになっています。



佐々木さんの新刊『バルト三国のキッチンから』は、「バルト三国」「食」をテーマにした紀行本。なんと、昨年の6月から8月まで、75日間かけて、直接リトアニア、ラトビア、エストニアの家庭を訪問。その家庭のキッチンで作られる料理を見せてもらいながら旅を続けました。

キッチンで作られる、その土地の文化、歴史、人々の素顔に迫る内容。3カ国35のストーリーと、13の直伝レシピが、取材したそれぞれの場所ごとにまとめて掲載されています。また、日本でも再現できるレシピに調整されているので、日本にある食材で、バルト三国の料理を試すことができます。


リトアニアの料理(手前のパイは「キビナイ」。パイ生地で挽肉を餃子のように包んだもの。奥にあるギザギザの焼き菓子はリトアニアのバームクーヘン「サコティス」。一つひとつ手作りで、芯となる棒に生地を垂らしながら回転させ、焼き上げます。素朴な味が◎。ピンクのきれいなスープは冷たいビーツのスープ「シャルティバルシチュイ」。さっぱりとまろやか!)


■リトアニア、ラトビア、エストニアの順で食めぐり

佐々木さんが初めに入国したのは、リトアニア。トルコ経由でリトアニアから入り、ラトビア、エストニアと北上し、フィンランドから日本へ帰国しました。

旅をしている時に印象的だったのが、人の温かさ。一人旅で色んな家庭を巡らないといけない中で、緻密なスケジュールを組んでいた佐々木さん。しかし、やはり土地勘、距離感などがわからない部分もあるため、移動する際に、車に乗せてもらったりするなど、要所要所で助けてもらったことが大変印象に残っているそうです。

現地には、日本からのお菓子や調味料などを持参し、ちょっとしたお土産を手渡していたとか。特に、「わさび」は、バルト三国で販売されているにもかかわらず、日本からのものが、”ホンモノだ!“と喜んでもらえたとのこと。

佐々木さんは、日本にエストニア人のパートナーがいらっしゃるので、エストニアの親戚に荷物を預けたり、救援物資のように送ってもらったりして、極力身軽で動いていたようです。大切な写真をたくさん撮るために肌身離さず持ち歩いていたのが一眼レフのカメラ。その大切なカメラにトラブルが発生。

森の湿地帯をガイドの人と歩いていたルートから少し外れた矢先に、まんまと腰あたりまで沼地にはまってしまい、カメラも犠牲に。しかしながら運よく、そのカメラのメーカーの修理センターがエストニアのタルトゥあったので連れていってもらい、なんと、翌日の午後には修理を終えた状態で手元に戻ってきたといいます。(海外でのこのような素早い対応に驚きです!)

体験したこと、訪れた風景を少しでもたくさん伝えるために、こだわった写真は全て佐々木さんが撮り下ろしたもの。「まるで現地に行ったかのように読者の皆さんが楽しめるよう努めました」と話していました。


ラトビアの料理(右手前のカップに入っているのは「ベーコン入りの灰色豆」。伝統的なクリスマス料理で、日本でいうおせちに入っているおかずのようなイメージだそう。ベーコンとコショウが効いていてビールのおつまみにもぴったり。奥のカナッペは「ヨーロピアンスプラットのカナッペ」。古典的なお正月の前菜。左はお腹いっぱいでも一切れペロリと食べてしまった「ハチミツのケーキ」)


佐々木さんが「次の課題が出来ました」と言っていた、あるレシピが気になった筆者。それは、リトアニアのカウナスで有名な日本人、5000~6000人のユダヤ人にビザを発行し、日本の敦賀に彼らを送り出したことで知られる杉原千畝ゆかりの旧日本領事館を訪れたときのこと。

そこにリンゴの木が植えてあったそうなのですが(現在もリンゴの木があるそうですが、それが当時のものと同じかは不明)、杉原千畝は、リンゴを使ったケーキが大好物だったとか。佐々木さんは、彼が好きだったというケーキのレシピを今度は教えてもらいたいと話していました。これは日本人としては、どんなお菓子だったのか、ぜひ知りたいところ!

トークの最後には、2022年2月24日に勃発したロシアによるウクライナ侵攻について触れました。現地の人々は折に触れて、”明日は我が身“、何があってもおかしくないと話していたそうです。本書は、この戦争がバルト三国の人々に及ぼしている影響などもリアルに取り上げています。


エストニアの料理(「ライ麦パン」と「花とハーブのバター」は相性ぴったり。バターはニンニクが効いていて食欲がわきそう。真ん中のパックに入っているのは「ニシンのおかずケーキ」。塩漬けニシンや玉ねぎ、サワークリームにカッテージチーズと、小麦粉を使っていないさっぱりとしたおかずケーキ。奥にあるケーキは「クイーンケーキ」。こちらのベリーのケーキも美味でした!)


地理的には北欧の分類に入り、北欧5カ国と同じように、バルト三国は3カ国まとめて説明されることが多く、ロシアからの独立回復など、似たような歴史もありますが、言語も宗教観も三者三様、特徴があるようで、例えば食べ方など、違いがたくさん見受けられるようです。

例えば、ビーツを使った美しい冷たいピンクのスープなどは、エストニアとラトビアは茹でたジャガイモを中に入れた状態のスープになるそうですが、リトアニアでは、ジャガイモはスープとは別に添えた形でいただくのだそう。本書からも、各地の違う表情を感じることができます。

佐々木さんは、6月から8月までと、1年でも日が長く、花や緑が美しい季節を旅しています。「首都を回るだけでは、その国を知ったことにはならないと思うので、ぜひ郊外にも足を延ばしてみてください。(理想としては)1カ国につき、最低でも5日!」とにっこり。ますます行ってみたくなりますね!ぜひ今後の旅リストに!


ラトビアの有名な「ブラックバルサム」は、コーヒーにちょっとだけ入れて飲む薬用酒(45%)。リトアニアのハチミツのお酒「ミード」(左から2番目)、エストニアのシードル(一番右)は飲みやすくて美味しかったです。

バルト三国はビールもうまい!料理に合いますね!



『バルト三国のキッチンから』
(6月14日発売)
著者:佐々木敬子(Keiko Sasaki)
版元:産業編集センター
https://www.shc.co.jp/book/18706
定価:1,870円(本体1,700円+税)​仕様:A5判、120ページ(オールカラー)
 ​※電子書籍版も発売予定(時期未定)

【著者 佐々木敬子  (Keiko Sasaki)】
旅する食文化研究家。エストニア共和国外務省公認市民外交官。各国を旅しながら現地で味を修得。2018年より駐日エストニア共和国大使館のレセプション、駐日欧州連合代表部、来日アーティストに料理提供協力。企業、公共事業向けレシピ開発やワークショップ、食文化講演などを行う。料理教室「エストニア料理屋さん」バルト三国の情報サイト「バルトの森」主宰。書籍『旅するエストニア料理レシピ』(2021年)
「エストニア料理屋さん」https://estonianavi.com/
「バルトの森」https://baltnomori.com/

▼書籍『旅するエストニア料理レシピ』関連記事
食文化を知るとエストニアが見えてくる!エストニア料理に特化したレシピ本が日本初登場

<おまけ>

リトアニア大使館内にフィンランドのヒンメリのような装飾をいくつか発見。「ソダス」と呼ばれる伝統的な装飾で、大使館スタッフの方によると、季節問わず自然といつでも飾られているものだそう。とっても素敵でした。




(2023年06月27日更新)
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