青い空と陽射しがまぶしい、梅雨の合間のある日。 |
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石本さんといえば、フィンランド・マリメッコ社のテキスタイルデザイン。 2階のスパイラルマーケットから続くスロープを1階へ向かって降りてゆくと、まずは壁にディスプレイされた大きなテキスタイルが目に飛び込んできます。 そしてスロープを降りきると、まるでお花畑に舞い降りたような気分。陶の花たちに囲まれます。 |
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石本さんが平面に描くテキスタイルプリントだけでなく、立体で表現する陶芸を始めたのは1989年。 今回、スパイラルではフィンランド・ヘルシンキのデザインミュージアムで2008年夏に開催された「Uniflora」展での作品をはじめ、新作を含む陶芸作品約90点とともに、これまでに手がけたテキスタイル作品30点が展示されました。 |
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「Uniflora」展で展示された作品 |
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「会期中はずっと、会場にいらっしゃるんですか?」 |
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「今回の個展が決まってから作ったのが、こっちね」と、石本さんが指を差したのは、こちらの壁一面の作品。 今、石本さんを“虜にしている”花たちがずらり。今回の個展にかける意気込みが感じられます。なんでも、ほとんどが「名も無き花たち」なんだそうです。 石本さんの中にある、空想の花。 |
「日本のように花がない」というフィンランド。最近、石本さんは花ばかり描いているそうです。 | |
もしかすると、日本への郷愁の念にかられて生まれた作品・・・? | |
テキスタイルにも随所に感じ取られる和のテイスト、花や植物。 石本さんを象徴するテキスタイルデザインの中で「Suuri Taiga(大草原」といった、モノトーンで「草」を美しく描いたものがあります。 それ以来、石本さんのデザインには「草」や「線」のイメージがくっついてまわっているのは私だけでしょうか。 |
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もしかすると、幼い頃に遊んだ草原の草花の存在が石本さんの中に潜在的に眠っていて、それが今になってじんわり、じんわりと、土を通じて陶芸作品として生まれ出てきたのかもしれない・・・などと、思わず勝手に物語が浮かんでしまいました。 |
たとえば、こちらの松葉のように見える作品。 「これ?ただの、草だよ」とだけ、ぽつりと語る石本さん。 きっと、「ただの草」と「石本さん」にだけわかる、ヒミツが隠されているはず。 |
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日本では年中、花が咲いています。春なら桜。今の季節なら、紫陽花など。 花屋の店先に華やかに並べられる花もあれば、まったく注目されないような小さな草花などもあります。 |
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「布と土に共通して、クリエイションの興味の中心にいつも“色”を置いている。的確な色と、色の世界を見つけることは、私にとって非常に大切なことである」 石本さんの色彩へのこだわりが込められているように、一つひとつ、色づかいにも目を奪われます。 日本の美しいお茶菓子に使われるような、とても優しい、柔らかな色彩。 可憐で繊細な中にも力強さ、意志がうかがえます。 |
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柔らかな光の中で、花に囲まれ、鑑賞している人が皆、笑顔になっている瞬間を目の当たりにしました。 目を閉じて、すーっと、思わず深呼吸したくなる爽やかな空間。 ちいさな花や、おおきな花。 ひとつとして同じものなんて全くない、世界にひとつだけの花たち。 帰りがけ、ぐるりと館内を見渡すと、花の一つひとつが、こちらを見て微笑んでくれているかのようでした。 |
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photo:(c)SPIRAL/Wacoal Art Center Photo by Ichikawa Katsuihro |
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石本藤雄展「布と陶に咲く花」 会期:2010年6月15日(火)~27日(日) 会場:スパイラルガーデン(スパイラル1F) |
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