2012/04/11

What is Finnish Fashion? ~駐日フィンランド大使夫人 アンナ・グスタフソンさんに聞く~

What is Finnish Fashion?
~駐日フィンランド大使夫人 アンナ・グスタフソンさんに聞く~
2012年3月上旬
場所:フィンランド大使館(東京・広尾)

  


  清々しい陽気の3月の昼下がり。フィンランド大使館へおじゃましてきました。
駐日フィンランド大使夫人である、アンナ・グスタフソンさんに「フィンランドのファッションとは?」というテーマでいろいろとお話を伺ってきました。
ファッションにも非常に興味のあるアンナ夫人。フィンランドの「ファッション」というフィルターを通して、人として生きていく上で大切なフィンランド流の考え方を教えていただきました。
 
   
   
 
 
 


      清々しい陽気の3月の昼下がり。ご縁あって、「お茶にどうぞ」と大使館へお招きいただきた北欧区。
フィンランド大使館へ入るのは初めてです。
 

ユーロの旗とフィンランド国旗がはためいていました。敷地内にはとってもナチュラルですっきりとした建物が並んでいます。

多くの方をインタビューしてきましたが、公的な方へのインタビューの機会はなかなかないので、緊張という言葉知らずの北欧区もさすがに緊張しました(笑)。思わず、社会人になって初めて担当したあの有名作家さんの取材を思い出したほど(苦笑)。

     




 


    そんな私をにこにこと癒しの笑顔で迎えてくれたアンナ夫人。自らセッティングしたというイッタラ「LUMI」のテーブルウェアでのおもてなし。すぐにコーヒーと焼きたてホヤホヤのプッラ(シナモンロール)が登場!身も心もほぐれていくのがわかりました。

いろんなことを伺ってみたいところでしたが、ここはテーマを絞ってみました。インテリアや建築といったジャンルでは優れたデザインで日本にもファンの多いフィンランド。それでは日本人も関心の高い「ファッション」はどうだろう?フィンランドのファッションとは一体?
 
               
               
北欧区:衣食住、 建築、インテリアがとかく注目されるフィンランドにおいて、現在のファッションの位置づけ、今後どうなっていくとお考えですか?フィンランド人にとって”ファッション”とは?  
   
アンナ夫人:日本ではファッションというと「流行」という意味合いあるかもしれませんが、フィンランドでは流行を追うというよりは、個性やユニークさを求めます。マリメッコような老舗や60年代より活躍しているヴオッコ・ヌルエスニエミのようなデザイナーもあれば、新しい若手デザイナーのものもあります。
フィンランド人はヨーロッパの中でも衣服に最もお金をかけない国民だと思います。流行っているからたくさん買うというよりは、着心地の良さ、長持ちするものを求めます。

また、ご存知のように、フィンランドはどちらかというと気候が厳しく、冬が長い。洋服というものは私たちにとって身を覆うもの、あたたかくなければならないんです(笑)。そいうことをいろいろ踏まえると、制限があるんですよね。

たくさんの若手ファッションデザイナーがいますが、国内で自分のブランドを立ち上げるというよりは、海外の大手のデザインハウスに所属しています。なぜなら、自ら国内でブランドを立ち上げるととても高くつくので資金が必要。さらにはフィンランドの人口が少なく、マーケットシェアが小さいという2つの理由があります。
 
   
   
北欧区:素敵なワンピースをお召しのアンナさん!アンナさんのお気に入り、またはおすすめのフィンランドファション・ブランドはありますか?もしあれば、教えてください。

アンナ夫人: マリメッコをたくさん着ます。オフィシャルにもプライベートにもよく着ますよ。

北欧区:おお!やはりフィンランドといえばマリメッコなんですね。国民的なブランドですが、でもなぜ、マリメッコがお好きなんですか?

アンナ夫人:マリメッコの考えすべてが好きなんです。①提案しているライフスタイル②考え方③マリメッコを身につけることで幸せになる、ということ。

私たちの生活の中にしっくりとフィットしてくれる洋服です。自分自分を変えず、背伸びする必要もない。自然と娘とも似たようなスタイルになったりしますね。そういうマリメッコの精神が好きです。

北欧区:肩肘張らずに、自分自身でいられるファッション、ということで広く愛されているんですね。

アンナ夫人:私のお気に入りは、元マリメッコのデザイナーで今は自分のブランド( Samuji)を立ち上げているSamu-Jussi Koski。靴デザイナーのJuha Tarsala。彼の靴はよく公的な場所に履いていきます。彼の靴にたくさんのお金をかけていますね(笑)あと、イブニングドレスやパーティー用のドレスはJanne Renvallが手がけたものを着ます。
     


この日のワンピースは
Samu-Jussi Koski氏、
靴はJuha Tarsala
デザインによるものだとか。
 





 
   
   
北欧区:フィンランドではいま、おしゃれなエコ&リサイクルショップが増えてきていると耳にします。たとえば、フィンランド人がデザインし、運営しているCaring Handsというフェアトレードアクセサリーが登場するなど、フィンランドで発展途上国をサポートする”フェアトレード” 、公共的な”ソーシャルデザイン”が活発な社会的背景などを教えてください。  
   
アンナ夫人:北欧では、物を大切にするライフスタイルを小さい頃から教えられます。日本にもありますが、「もったいない」という考えがあります。

フィンランド政府は70年代から消費者に対して教育をしてきました。買うときに、いろんなものを“選んで買える”という教育です。たとえばフィンランド産にはフィンランドの小さな旗のマークをつけたり、オーガニックであるというマークをつけたり、地球温暖化ガスをあまり発生しない作り方で作られたものだったりと、長年の歳月をかけて、国の広報誌や民間の新聞・雑誌に掲載して“啓蒙”してきました。持続可能な漁業や林業などにつながる商品だったり、何がどういうふうに出来ているとか、どういうふうに買えばよいかなどを私達は良く知っています。

そうです、循環型の考え方です。こういう考え方を教育するのは、何十年もかかると思います。ものを買う、消費するというのはドミノエフェクト。一つのもののライフサイクルを考えて買います。買ったものは以前は何だったか、廃棄した後は何に使われるのだろうかという考え方です。きっと日本ではまだ新しいと思います。始まったばかりの考え方だと思います。この何十年間、これはフィンランドでとても成功している面だと思います。
 
   
北欧区:日本でもかつてありましたよね、もったいない精神。残念ながら大量生産&大量消費国となってしまいました・・・。
 
   
アンナ夫人:日本が経済大国第3位になれたのは、国民が大量に消費してきた背景が大きいと思います。消費をすることと、持続する経済との両立は可能だと思いますよ。バランスがとれなければならないと思います。
 
   
   
北欧区:今年はフィンランドの大きな巡回展「フィンランドのくらしとデザイン展」が開催されますね。マリメッコというメジャーブランドの展示のほかに、販売の方では、まだあまり知られていないフィンランドのデザイナーが手かげたジュエリーも並んでいます。フィンランドのファッションジュエリーはまだ日本では多く見かけないですが、日本で紹介されるということをどのように感じていらっしゃいますか?

アンナ夫人:とても嬉しく思います。私にとっても、ジュエリーというのは特別なものです。日本の方もジュエリーがとても好きですし、とても上手に身につけるのでいつも感心します。ジュエリーはパーソナルなもので、直接身につけますよね。そういう意味でもフィンランドものが紹介されるのはとても嬉しいことです。
       
           
           

  

      北欧区:最後に、日本のフィンランド・ファンのみなさまへ、メッセージをお願いします。

アンナ夫人:私は日本に来て2年半になります。フィンランドにいるころから、自然に触れることが自分たちの心にも健康にも良いと思っていました。日本にもたくさんの自然がありますが、フィンランドもとてもたくさん自然があります。もし北欧の自然を楽しみたいと思っていらっしゃるのであれば、ぜひ夏には白夜、冬にはオーロラ、フィンランドの森を歩いてベリーやキノコ狩りを楽しむのがおすすめです。「everymans right」というのがあり、森のオーナーはいるのですが、観光客でも森に入ってベリーやキノコ狩りを自由に楽しむことができるので、ぜひ楽しんでいただけたらと思います。

北欧区:ありがとうございました!Kiitos!!

Caring Handsのアクセサリーも
「お気に入りです」とアンナ夫人。
       
         
         
         
シンプルな会話やお話なら、日本語も理解してくださっていたアンナ夫人。
一つの質問に対して、ものすごく丁寧に答えてくたさいました。

一つのもののライフサイクルを考えながら買って捨てる。
「以前は何だったのか、それが何になるのだろうか」という考え方が根付いているというのを伺ったとき、心底感動を覚えました。

「モノを大事にしなさい!」と頭ごなしに言うのではなく、なぜモノを大切にする必要があるのかを教え、それが自然と行動や言動となってゆく。

モノを大切にする人々。そんなフィンランドの人は、人も同じようにとても大切にする国民なのではないかと私は思います。自分が関与するすべてのモノやヒトが、どうしたら幸せでいられるのかを常に考えているような。

国をあげて長年育ててきた“循環型”の考え方が、フィンランド人の中に深くしっかりと根付いているということ。このたびの「ファッション」というテーマから、深く感じることができました。

アンナ夫人、貴重なお話をありがとうございました。
   






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