引き続きトーキョーノーザンライツフェスティバル2014からもう1本。鑑賞してきましたアイスランドのギスリ・スナイル・エリンソン監督作
「ベンヤミンの夏」(1995年/アイスランド・スウェーデン・ドイツ/アイスランド語/88分/原題:Benjamin dufa/Benjamin Dove)について触れたいと思います。
この「ベンヤミンの夏」は、“子供映画に定評のある北欧ならではの作品”と聞いていましたので、ぜひ鑑賞したいと思っていました。こちらもまた、
【TNLF2014】ミカ・カウリスマキ監督「ファーザーズ・トラップ 禁断の家族」と同じく、
劇場未公開・国内DVD未発売作品。
火事で家を失った独り暮らしの近所のおばあちゃんのために、仲良し4人組で結成した「赤竜騎士団」。笑ったり、泣いたり、傷ついたり。大人になった主人公・ベンヤミンが、4人とともに過ごしたひと夏の思い出を回顧する。
手作りの衣装に盾や剣を身につけ、家を尋ねて歩いては、おばあちゃんの家を建てるための募金活動を続け、銀行までが少年たちの思いに賛同。ついに、いつもみんなを見守ってくれるおばあちゃんの家を建てることができ、赤竜騎士団の名前は近所中に轟くことに。
実は途中で意見の食い違いから、仲間割れが発生。戦いがしたい!血気盛んなアンドレスは赤竜騎士団を抜け、黒い騎士団を結成。ベンヤミンたちは果たし状を渡される。戦いがしたいわけではないベンヤミンたち3人は、この果たし状を無視。
ある晩、いつもアンドレスにいじられていた大人しいバルドゥルが黒い騎士団に誘拐されてしまった。アジトにしていた処理場で両者が剣を交えることに。黒い騎士団は降参し、アンドレスは謝罪。再び仲間に。ほっとした束の間、この後思いがけない事態が発生してしまう・・・。
両親に愛情たっぷりで育てられているベンヤミン、親の帰りが遅く、幼い妹の世話をするバルドゥル、叱られてばかりで親に構ってもらえないアンドレス、外国暮らしで知識があり、冷静なローランド。
ひとり一人の少年の言動を見ていると、それぞれのバックグラウンドである家庭・家族がものすごく密接に関係していることがひしひしと伝わってくる。
この作品は、少年たちの単なる冒険物語では終わらない。大人にも伝えたい、でも決して押しつけがましくはない、教育的な要素が組み込まれているようなところがなんとも北欧らしい。
設定は10歳くらいでしょうか。子供たちだけの世界を作るようになる年頃。無邪気でまっすぐな子供たちが、成長とともに大きく膨らむ好奇心や正義感は、実のところ常に危険と隣り合わせ。
大人の目の届かない場所へと冒険したくなるのは成長の証しですが、それがときに残酷な結果を招くことにもなります。
冒頭からずっと「恐怖」や「死」、「命」に何かあるのか、何か起こるのか、と常に気持ちが落ち着きません。微笑ましいシーンがあると思えば、次に来る展開は・・・。その絶妙な危ういバランスに、最後の最後まで目が離せない作品。劇場未公開・国内DVD未発売です。
冷静なリーダー格のローランド役を演じた
Gunnar Atli Cautheryは、今でも俳優で活躍されているようです。スティーブン・スピルバーグ監督の「戦火の馬」(2011年)では、ドイツ兵士の役で出演。TVドラマシリーズにも出ているようです。
アイスランド映画「ベンヤミンの夏」、機会があればぜひ。
気になる作品は、チェックできましたか?
来年の
北欧映画祭「トーキョーノーザンライツフェスティバル」はどんな作品が披露されるのでしょうか。楽しみですね!
参考記事:
【2/8-14】北欧映画の一週間!北欧映画祭「トーキョーノーザンライツフェスティバル2014」
トーキョーノーザンライツフェスティバル2014
期間:2014年 2月8日(土)~14日(日)
会場:渋谷ユーロスペース、渋谷アップリンク・ファクトリーほか
主催・運営:トーキョーノーザンライツフェスティバル実行委員会
http://www.tnlf.jp