2015/01/29

【特集】2015年は、フィンランドの才能あふれる作曲家ジャン・シベリウス生誕150周年

2015年は、フィンランドが誇る作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12.8.-1957.9.20.)生誕150年!
指揮者リントゥさん&新田さんが語るシベリウスの魅力とは?
コンサートや記念行事で、シベリウスの世界にふれてみましょう!



■シンプルであればあるほど美しい、魂に訴えかけるシベリウスの魅力。

2015年は、フィンランドが生んだ作曲家、ジャン・シベリウスの生誕150年の記念の年。世界中でコンサートや記念行事が開催される予定で、フィンランドはもちろん、日本国内でもシベリウスの音楽にふれる機会が増えそうです。

都内で開かれた記者会見で、フィンランド放送響主席指揮者であるハンヌ・リントゥさんと、昨年10月に日本シベリウス協会第3代会長に就任した指揮者の新田ユリさんが、シベリウスの魅力やシベリウスと日本の関わりについて話しました。

会見が行われた日本記者クラブでは、東京都交響楽団員による弦楽合奏曲『アンダンテ・フェスティーヴォ』(1922年)が披露されました。“フェスティーボ”とは、イタリア語で「祝祭的な」という意味。明るくにぎやかなイメージを抱きそうな言葉ですが、シベリウスのこの『アンダンテ・フェスティーボ』はなんとも穏やかで心地よいという表現がぴったり。演奏付きの記者会見というのは、日本記者クラブでも初めてのことだったそうで、とても和やかな空気に包まれました。シベリウス自身も大変気に入っていた曲です。

『アンダンテ・フェスティーボ』について、リントゥさんは、「シンプルであればあるほど美しい。魂に訴えかけることを教えてくれる作品」と表現。シベリウスの曲は特に中央ヨーロッパでは過小評価されているところがあったが、万人に愛されると思うと主張。ロマン主義的なものに、フィンランドの要素が絶妙に加わっているとシベリウスの魅力について語りました。

いつも新しい発見があり、歴史的な背景だけでなく、自然と人の内面とのつながりを繊細に描いているというシベリウスの曲。「この1年が、シベリウスの転換点となれば」と願うリントゥさんは、新たなシベリウス像が生まれることに期待を寄せていました。

■自然との距離の感覚が近い日本とフィンランド。日本でも深く愛される世界観。

日本シベリウス協会初代会長である渡邊暁雄氏の力強い解釈に感銘を受けたというリントゥさん。日本の人々には、シベリウスの世界観に理解があると感じたそうです。新田さんもまた、「自然といつも近い距離にいる日本には、シベリウスを好きな人が多い」と言います。来日したフィンランド人演奏家たちは口を揃えて、「日本はどの国より、シベリウスを感覚的に“わかってくれている”という感覚を受ける」と言うそう。

フィンランドでも日本でも共通していると感じるのは、自然との距離感。四季を感じ、花鳥風月を愛でる。また、言葉で自分の内側を出すことを控える日本人にとって、シベリウスの曲はスッと心に訴えかけてくるのでしょう。

そんな日本でも愛されるシベリウスに敬意を表し、日本でもシベリウスを紹介する活動の拠点として、1984年に日本シベリウス協会が設立されました。初代会長は、前述の渡邊暁雄氏。巧みにシベリウスを引き出したマエストロです(第2代会長は、舘野泉氏)。

1957年9月20日、シベリウスが亡くなった年の12月8日、日本フィルハーモニー交響楽団、渡邊暁雄指揮によるシベリウス記念公演が開催されました。その5年後の1962年11月に、ここ日本で、日本フィル&渡邊暁雄指揮によるシベリウス交響曲全集が世界で初めてステレオ録音されたそうです。遠い日本で初録音が行われたということに、深いつながりを感じます。

ちなみにフィンランドには、ヘルシンキとトゥルク、シベリウスの生誕地であるハメーンリンナの3ヶ所に「シベリウス・ソサエティ」があり、英国やフランス、ドイツ、アメリカにも同様な組織があるそうです。



■コンサート・記念行事、多数開催!シベリウスの世界にふれてみよう。

意外なことに、近隣諸国のスウェーデンやノルウェー、デンマークに「シベリウス協会」のような組織は存在しないそうですが、今年日本で、北欧4ヶ国の作曲家を集めた興味深いコンサートが開かれます。ノルウェー人指揮者のアイヴィン・オードラン氏を迎える「作曲家の肖像」シリーズVol.12は、「北欧」がテーマ。スウェーデンのアルヴェーン、デンマークのニールセン(ニールセンも今年で生誕150周年)、ノルウェーのグリーグ、そしてフィンランドのシベリウスという、個性豊かな作品を楽しむことができます。4月29日、池袋の東京芸術劇場コンサートホールにて開催。

会見でシベリウスの魅力を語ってくれた指揮者ハンヌ・リントゥさんもまた、この秋に再来日します。「ハンヌ・リントゥ指揮フィンランド放送交響楽団日本公演」は、東京のすみだトリフォニーホールほか、静岡、東京サントリーホール、山口、大阪と各地を巡る予定(11月2~8日)。

日本とシベリウスのつながりを教えてくれた新田ユリさん指揮の公演もあります。「新田ユリ指揮アイノラ交響楽団、マッティ・ヒュオッキ合唱指揮Laulu-Miehet、お江戸コラリアーズ」による記念公演は、この春3月3日に、すみだトリフォニーホールにて開催されます。

シベリウスの誕生日である12月8日は、「フィンランド音楽の日」に定められ、国旗が掲揚される予定。国をあげてシベリウスイヤーを祝うフィンランドをはじめ、国際的な行事やコンサート、講演会なども数多く予定されています。フィンランドから指揮者やオーケストラが多く来日する日本でも、今年はシベリウスをたっぷりと堪能できる年になりそう。最新情報は、下記リンクにて詳細を確認することができます。

ジャン・シベリウス生誕150周年特設ページ(駐日フィンランド大使館)
Sibelius Birth Town Foundation
日本シベリウス協会
Sibelius150公式Facebookページ

現在、ヘルシンキのアテネウム美術館では3月22日まで、展覧会「Sibelius and the World of Art(シベリウスと芸術家の世界) 」が開催されています。フィンランドの有名な絵画と音楽の世界を体験できるよう工夫されているとのことで、話題を呼んでいます。

また、フィギュアスケートのキーラ・コルピ選手は、2014-2015シーズンのフリー演技の使用曲に、シベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」を選びました。フィンランド人にとって欠かせない、偉大な存在というのが伝わってきます。コルピ選手の今シーズンの活躍にも期待です。

アテネウム美術館
キーラ・コルピ公式ホームページ

シベリウスを通じて、フィンランド人の真髄に迫ってみるのもよし、気軽に音楽を楽しむのもよし。この特別な1年を通じて、シベリウスの世界を楽しんでみてはいかがでしょう。

©Hahmo Design Oy

【ジャン・シベリウス(Jean Sibelius)】
フィンランドの作曲家。1865年12月8日、フィンランドのハメーンリンナ出身。作品は、7曲の交響曲、交響詩、ヴァイオリン協奏曲、劇音楽、歌曲、ピアノ曲など多岐にわたる。交響詩「フィンランディア」作品26は、1899年に発表した「愛国記念劇」の音楽の7曲目が改作されたもの。シベリウスの肖像はフィンランド100マルッカ紙幣に使用されていた。ヤルヴェンパーにて91歳で死去。

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