2015/07/09

【特集】フィンランドのテキスタイルメーカー「ラプアンカンクリ」オーナー来日インタビュー ― インテリア ライフスタイル(後編)

「Lapuan Kankurit(ラプアンカンクリ)」オーナー来日インタビュー
「インテリア ライフスタイル」(後編)
フィンランドの小さな街、ラプアで生まれたテキスタイルの物語



6月10日から3日間、東京ビッグサイトで開催されていた「インテリア ライフスタイル」。今回は後編をお届けします。来日したフィンランドのテキスタイルメーカー「Lapuan Kankurit(ラプアンカンクリ)」のオーナー、エスコ・ヒェルト氏(写真左)とヤーナ・ヒェルト氏(写真右)にお話をうかがってきました。

前編でも触れたアトリウム「Curation store」にブースを構えていたラプアンカンクリ。フィンランドのラプアという小さな街で生まれたテキスタイルとは?ラプアンカンクリの世界に触れることができました。

▼前編はこちら
【特集】クロスしあう北欧デザイン ― インテリア ライフスタイル(前編)

厳しい冬と、短い夏。
愛されるテキスタイルは、
小さな街ラプアから始まった。

「ラプアンカンクリ」とは、フィンランド語で「ラプアの織り手たち」という意味。ラプアは、フィンランド西部に位置する人口約15000人ほどの小さな街です。一年の半分近くを雪景色が占めてしまうという極寒の冬と、短くとも森の緑が美しい夏。そんな環境の中で、質の高いタオルやブランケットが作られています。

ラプアンカンクリのオーナー夫妻のうち、ヤーナさんは来日経験がありますが、エスコさんは今回が初めて。とにかく東京の街が大きいことに驚きを隠せず、建物の上階から点在する夜の灯りを見て、「こっちに居る人と、向こうに居る人は、お互いに知ってるの?どうやって交流するの?」と、不思議に思ったとか。なぜならラプアでは、街の人全員がほぼ知り合いだから。「ヘルシンキでさえも、行くと知り合いが多いので。日本の大きさには本当に驚きますね」とヤーナさん。

街の大きさ、人の多さも異なり、さらに国同士の距離も離れている日本とフィンランド。「フィンランド人も静寂を好みますね」と語るように、エスコさんもまた、日本はフィンランドと似ている部分が多いと感じているようです。デザインもシンプルなものを好むし、鈴木マサルさんや鹿児島睦さんのデザインのように、動物や植物といった、自然からアイデアを得るところも似ているといいます。

ラプアンカンクリは、現在でも家族経営。テキスタイルビジネスでは、エスコさんは4代目。ラプアンカンクリになってからは、2代目なのだそう。戦後は貧しく、ものがない時代だったため、ウール製品をほどいて、再利用したウールで靴を作っていたそうです。エスコさんの曽祖父から始まり、1917年の創業からおよそ100年。ファミリービジネスとしては、フィンランドで最も古い一社に入ります。1956年にはジャガード織り、ラプアンカンクリの顔ともいえるリネンは約20年前から始まりました。



身をゆだねたくなる安心感は、
産地・素材へのこだわりと、
絶妙なチームワークの賜物。


100年も続くファミリービジネスを続けるというのは、並大抵なことではないはず。彼らを支えてきたものは一体何なのか?品質に厳しいという日本で、ますます多くのファンを魅了するラプアンカンクリ。生地に使われている糸はどこからやってきたものなのか?エスコさんとヤーナさんが熱く教えてくれました。

ウールの繊維は、パラグアイやウルグアイをはじめとする南米やニュージーランド。モヘアは南アフリカのものを使っているとか。フィンランドや北欧のものは、丈夫で良質ではあるものの、ゴワゴワするため、いい具合にブレンドするそうです。一瞬、コーヒーの話をしているのかと錯覚してしまうほど。ウールのバリスタ!?また、リネンに関しては、100%ヨーロッパのもので、主にフランスやベルギーから。

産地に関しては「どこで育ったものなのかはとても大事」とエスコさんとヤーナさん。糸の産地、紡績工場についてもしっかり把握し、生産者から紡績工場、製造工場まで、それぞれに対して厚い信頼があり、すべてがお互いに責任を持って製造にあたっています。ラプアンカンクリもそれを保証する団体のメンバーで、厳しい基準をクリアした生産者や紡績工場によって作られたリネン製品に与えられる“Masters of Linen”の認定を受けています。

エスコさんは織りの専門家。デザインが届くと、実際に自分で機械で織ってみたりと試行錯誤しているとか。大切に仕上がってきた糸やデザインを自分たちの工場で織り、店頭に並び、購入者のもとへ届いていく。このつながりが大事。



ラプアンカンクリの大きな特徴の一つが、このディテール。布を織るときに、織った段階で端の部分が完結する織り方になっているそうです。一般的には、端を折り、縫い合せて処理しているタイプがよく見られますが、ラプアンカンクリのものは、織った段階で仕上がっているという状態。これはエスコさんが考えたテクニックなのだとか。結果、織り方を変え、丈夫であると同時に、端の部分が肌に当たっても柔らかくて気持ちがいい。

日本の商品も無駄がなく、効率的に美しく仕上げています。作っていく段階で完成させる、そういった点がラプアンカンクリの考えと合致しており、日本で共感してもらえる理由のひとつではないかと感じているそうです。

今後の日本での展開をたずねると、「大きなマーケットでたくさんの人に届いてほしいという願いはあります」と、ワクワクした嬉しい気持ちがある反面、ヤーナさんは、「でも、もう少しまだそばにいてほしいような・・・(笑)」と、まるで子供が巣立っていく親の気持ち。それほど、真心をこめて製品づくりにあたっています。

インテリア ライフスタイルでは、新作のウォッシュドリネンがずらりと紹介されていました。リネンというと、少しゴワゴワとしたイメージがあったのが、軽やかで柔らかい。吸水性もよく、速乾性もあるというリネンは、日本のジメジメとした暑い夏にぴったり。シンプルなデザイン、くたっとした雰囲気も心地よく、バスタオル代わりにも使えてしまう優れものだとか。

ちなみに、駐日フィンランド大使館内にあるサウナのゲスト用リネンにも、ラプアンカンクリのものが使われているそうです。

ラプアにも「ぜひ遊びに来てね!」と、エスコさんとヤーナさん。
ヘルシンキから車で5時間のところにある小さな街、ラプア。気になる街がまたひとつ、“行きたい場所リスト”に加わることになりそうです。

ラプアン カンクリ
http://lapuankankurit.jp/

取材協力:
ラプアンカンクリ
doinel
デイリープレス


インテリア ライフスタイル
会期:2015年6月10日(水)~12日(金)
会場:東京ビッグサイト西ホール全館
http://www.interior-lifestyle.com/

参考記事:
【特集】クロスしあう北欧デザイン ― インテリア ライフスタイル(前編)
【特集】鈴木マサルのテキスタイル 傘とラグとタオルと(5/24迄)
【特集】フィンレイソンの人気柄「エレファンティ」のデザイナー、ライナ・コスケラさんインタビュー!
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