2016/10/20

【特集】フィンランドのテキスタイルブランド「ラプアン カンクリ」のデザイナー、アヌ・レイノネン インタビュー

大好きなふるさとが見せてくれる、
四季折々の風景や色をデザインに。

10月上旬、厳選された質の高いアイテムを揃える北青山のdoinelて、フィンランドのテキスタイルブランド「ラプアン カンクリ」の定番ともいえるリネンシリーズ「USVA」「KASTE」のデザイナー、Anu Leinonen(アヌ・レイノネン)さんのアート&テキスタイル展「Anu Leinonen Art & Textile EXHIBITION」が開催されました。

展示会開催に伴い、フィンランドからアヌさんが来日。フィンランドで古くからなじみのあるリネン(亜麻)という素材と人々との関わりについて、また、出身地であるフィンランド東部の湖水地方での日々のアヌさんの暮らしなどをお聞きしてきました。


■小さい頃からなじみのあるリネンはオールシーズン使う

リネンというと、軽くて涼しくて、吸水性のあるサラリとした素材。夏に使うというイメージがある中で、アヌさんにとってリネンという素材は、ずっと古くから常にフィンランドの人々の身近にあるもの。自分たちで育てて織って使っているといいます。

もちろんアヌさんのおばあさまも織っていたそうで、赤ちゃんのときからずっとなじみ深い素材。アヌさんの母親はハンドクラフトの先生で、そのリネンを使ってテーブルクロスを作っていたのだそう。

せっかくなので、かけたり、シーツとして敷いたりする以外の素敵な使い方を知りたい。アヌさんに、リネンのブランケットをどんな風に使っているのかを聞いてみたところ、USVAシリーズを手にとって、こんな風に答えてくれました。

「私は、サウナ用のタオルとして使っているわ。リネンは夏も冬も、オールシーズン使えるのよ。夏には薄手のもの。冬にはちょっと毛羽立っている厚みのあるものを使うの」

フィンランドの寒い冬にもリネン。リネンは、夏だけのものではなかったのです。

■泳ぐのが大好き!湖に氷が張っても穴を開けて入る

USVAのブランケットをサウナタオルとして愛用しているというアヌさん。実際にどんな大きさのものを使っているのかというと、95cm×180cmのものが、サウナからの湖ダイブにぴったりだそうです。

真夏に海からあがってタオルを肩にかけていても、なんだか肌寒いなぁという経験はないですか?湖に入ったあと、リネンのタオルだけでも寒くないというアヌさん。慣れているからというのもありますが、どうやらリネンのタオルが「水分を全部とってくれるから寒くない」らしいんです。

とにかく湖で泳ぐのが大好きなアヌさん。「今(10月上旬)でも湖に入っているわ。10~13度の湖に入って、あがったら温かい緑茶を飲むの。この組み合わせがパーフェクト!毎日のちょっとした“儀式”みたいになっているわ」

アヌさんが入る湖は、フィンランド最大の湖といわれるサイマー湖。湖畔に家があり、祖父母、両親共にそこに住んでいるといいます。ちなみに、湖に入るのは朝。湖には12月くらいまで入るそうですが、「そうね、氷が張っても穴を開けて入ることもあるわ。朝に入ると目が覚めるのよ」と、にっこり。アヌさんが持ち合わせる透明感は、その毎朝の“湖水浴”にあるのかもしれません。

■ふるさとの風景はインスピレーションの宝庫

金曜から月曜までの4日間は湖のほとりに滞在し、火曜から木曜までの3日間はヘルシンキで仕事をするアヌさん。週の半分は森と湖に。

手作りのものに囲まれて育ってきた彼女は、ファッションデザイナーという子供の頃からの夢を叶え、パリで14年間過ごした頃、自分自身のルーツであるフィンランドの自然や新鮮な空気が懐かしく感じたそうです。パリにいたときも、祖父母のサウナ小屋の前で焚くかがり火が懐かしく、毎年1ヶ月はフィンランドに帰ってきて泊まっていたといいます。

また、デザイナーとしての活動を続けると同時に、Encounter  Art(日本の「臨床美術※」が基になっている)の指導者としての勉強を始めたそうです。それはアヌさんのアートワークにも影響を与えているとか。白樺の樹皮や苔などを使ったユニークなアート作品の制作や、リネンのプロダクトのデザインなど、湖畔で過ごすことがインスピレーションとなっているようです。

※臨床美術・・・創作活動を通じて脳の働きを活性化させ、認知症の症状の改善や、精神的健康の維持などを目的として開発されているアートプログラム。


本展のために描きおろされたアヌさんのドローイング作品。


■「USVA」は私の好きなフィンランドの色

会場には、アヌさんのドローイング作品とともに、日々インスピレーションの源となっている風景の写真なども展示されていました。トローイングは、アトリエの近くに自生する白樺の木の皮や苔が使われていたりと、彼女の身近にある自然がテーマとなっています。

白樺は秋になると葉っぱが黄金に輝き、これがイエローのUSVAに。グリーンは夏の森の緑。濃いブルー(ブライトブルー)は湖から。淡いブルー(ターコイズブルー)は空の色。そして、グレーのUSVAは、夏至祭の大きなかがり火の中に見える黒い木々からインスパイアされたもの。

季節によって美しく移り変わる、アヌさんの大好きなふるさとの風景から生まれているということがわかります。

この日、自らUSVAの生地で作ったという洋服を身にまとっていたアヌさん。袖には切れ込みが入っていて、そこから腕を通すと涼しく、完全に袖を通すと長袖感覚に。とても素敵でした!

【アヌ・レイノネン プロフィール】
ラハティの美術大学でファッションデザインを学び、その後15年ほどヘルシンキでファッションデザイナーとして経験を積んだ後、1993年にパリに留学。Centre  de  Formation  de  Modelismeでデザインとパターンメイキングを学び、その5年後にはパリにて「Anu  Leinonen」の名前でブランドを設立。高品質なマテリアルにこだわったアヌのブランドはヨーロッパだけでなく、当時スカンジナビア人気が少しずつ高まってきていた日本の顧客にも好まれました。2006年にフィンランドに戻り、ラプアン カンクリと出会い、ウォッシュドリネンを使った USVAとKASTE シリーズを開発。パリの踏やフィンランドの森などからインスピレーションを受けている。



会期中は、ラプアン  カンクリの「USVA」、「KASTE」のフェアも同時開催されていました。USVAは「霧」、KASTEは「朝露」の意。また、男女問わず、年中使えるファッションアイテムとしてスカーフも新登場。さらに柔らかで薄くて軽い「USVA」のスカーフにも注目です。

取材協力:doinel、daily press

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