2017/06/29

【特集】日本の伝統工芸と初のコラボレーション!マリメッコチームにインタビュー

マリメッコが日本の職人とコラボレーション!
ポップアップショップだけの特別なプロダクト。
そこに込められた思いとは?
来日したマリメッコの二人に直撃!



1951年にフィンランドで創業。日本には1970年代初期に上陸し、現在全国に36店舗を構えるデザインハウス「マリメッコ」。今年6月、伊勢丹新宿店本館1階=ザ・ステージに、木のぬくもりを感じるポップアップショップをオープン。大行列をなし、一部商品は初日で完売。6月7日から13日という1週間、大勢の来場者でにぎわいました。

今回マリメッコは、木製家具、有田焼、ブリキ缶、漆器、手ぬぐいといった、様々な分野の職人たちと手を組み、日本の伝統色を使った、これまでにないマリメッコのコレクションを伊勢丹限定で披露。

長きにわたり友好な関係を築いてきた日本はマリメッコにとって大きな存在。フィンランドの次に大きなマーケットでもあります。海外の職人とのコラボレーションは、フィンランド独立100周年ということもあり、そのお祝いと長いお付き合いと強い結びつきのある日本への感謝の思い、「日本大好き!」という特別な思いが込められているそうです。また、日本の職人が手がけると、どんなものが出来上がるのか、日本の色で作ってみたらどんな風になるのだろうかというワクワク感から、今回のプロジェクトがスタートしました。

ポップアップショップオープンに合わせ来日していた、ホームデザイナーのサミ・ルオツァライネンさんと、ストアデザインを手がけ、ヴィジュアルマーケティングディレクターでもあるロッタ・プリンッシさんの二人に、日本伝統工芸とのコラボレーションについての感想や製作にまつわるエピソードなどをお聞きしました。



■想像以上!二人を唸らせた日本の高度な技術

ロッタさんによると、日本の伝統技術とフィンランドの技術はまったく異なるため、マリメッコ自慢のパターンが、日本独自の色と技術により、どんな風に仕上がってくるのか。それはもう、マリメッコとしては初めての経験で、とてもエキサイティングな出来事だったようです。

今回使用されたのは、マリメッコのアーカイヴより、マイヤ・イソラ(Maija Isola)による「ウニッコ」、そして「キヴェット」。さらには、アイノ=マイヤ・メッツォラ(Aino-Maija Metsola)による新柄「ヴァスキナ」の3柄。これらに、藍鉄、漆黒、紅緋といった日本の伝統色をのせました。

サミさんが特に印象的だったのは、佐賀県・鍋島藩窯の伝統を継ぐ窯元、畑萬陶苑の手描きによる器。マリメッコはプリント技術がメインフィールドなので、手描きで柄を表現するということが、とても新しいと感じたようです。石川県・山中温泉にある畑漆器店によるウッドボックスもまた、「木という素材が新鮮」だとサミさん。ロッタさんもサミさんも、知っている限りでは、木にマリメッコのプリントを施したのはマリメッコ史上初のよう。かまわぬの手ぬぐいは素材も新しい上に、製作工程をビデオを見て、とても興味がわいたそうです。



■「難しかった」「苦労した」というより、全てが「学び」

異なる文化に異なる技術で作る初めてのマリメッココレクション。これまで他国の伝統工芸とのコラボレーションの例はなく、日本が初。フィンランドの地元の職人とのコラボレーションはあっても、今回のような規模は初めて。異国の技術で、いかに忠実にマリメッコのパターンを表現できるか、どこまで正確にできるかがポイントだったといいます。

ということは、きっと難しかったことや苦労した点があるのでは?と聞くと、「学び」という言葉のほうが適切かなとサミさん。マリメッコからこんな色でこんな風にしたいという希望があり、それを日本の職人が出来ることと出来ないことを伝えるなど、みんなで意見を出し合って作り上げた過程が「学び」。プロジェクトに関わる人がみんな納得できる点を探りながら、チーム全体で作り上げていったそうです。

そこから生まれた新しい発見とデザインが、東京・台東区にある加藤製作所とのコラボレーションで作られたブリキ缶で見ることができます。缶に使用する色の数が決まっているため、デザイナーのアイノ=マイヤ・メッツォラは、1色しか使えないという缶に合わせて、「ヴァスキナ」の柄から一部を抜き出し、ディテールを加え、美しい線画の柄を新しく描きおこしました。マリメッコの新しいデザインが、この缶をきっかけに作られた。こういった「学び」から新しいものが生み出されたのです。

■普段タブーな質問も今回は特別!?二人のお気に入りアイテムは?

「たとえば自分の子供の中で誰が一番好き?と同じで、自らデザインしたものに対し、どれが一番お気に入りなのかなんて普段なら答えないんだけどね。今回はあえて言わせてもらうよ(笑)」と前置きしながら、サミさんが指したものは、畑漆器店の木地師の熟練の技により製作された丸いウッドボックス。使用されているのは北海道育ち栓の木の丸太で、職人が機械でくり抜いて作っています。柄が施される前のものを見たとき、なんてシンプルで美しいんだと一目ぼれしたとか。

また、「仕上げがとても美しいですよね。ウニッコもヴァスキナも両方気に入っています」と、sake cup(盃)のハンドペインティングに感銘を受けたそうです。「サイズ的にも小さくて、繊細なのもいいのかもね」とサミさん。初日に完売となった手ぬぐいやウッドボックスを、大行列に並んでしっかりと手に入れたロッタさんもサミさん同様、sake cupのハンドペインティングの美しさには強く心惹かれたそう。ちなみにロッタさん、ウッドボックスはキヴェット、お茶碗も同じくキヴェットをご購入。

「伝統的なマリメッコを異なる世界で表現していて本当に素敵!New is always exciting!(新しいものはいつもワクワクするわ!)」とロッタさん。彼女からするりと放たれた言葉に頷くサミさん。二人ともすっかりこのコラボレーションに魅了されたようです。

■華やかな舞台裏で常に挑戦し続け、進化していくマリメッコ

常に新しい素材を探しているというマリメッコ。たとえば、地元の企業と連携して新しいファブリックを研究したり、環境に優しい素材の開発に取り組んでいます。またファブリック以外にも、マリメッコにはガラス製品があるので、トータルで見たときにマッチングできるような新素材を探しているそうです。(リネンや竹、ジャガードなど)

今冬には、フィンランド独立100周年を記念して、座面にマリメッコのジャガード織のテキスタイルを張った、マリメッコとアルテックによる「スツール60」がお目見えするそう(マリメッコの運営店舗と日本の店舗で発売予定)。マリメッコのジャガード織は、今では少なくなってしまったフィンランドの小さな会社が手がけており、「マリメッコのために新しい開発をしてくれる会社。こういった絆を大切にしていきたい」とサミさん。

「常に進化し続けること、私たちは創造することが大好き。それはマリメッコのDNAともいえます」とロッタさん。美しくありながら、実用性を兼ね備え、長く使えるものかどうか。買い方、買ったものには意味がある。それがフィンランドデザイン、フィンランド文化の真髄。

その精神を継承しつつ、チームで情熱とともに生み出された今回のコレクション。マリメッコというフィルターを通して、日本の伝統工芸の素晴らしさを再確認。それもマリメッコからのギフトといえるのではないでしょうか。

フィンランド独立100周年のキーワードは「Together(共に)」。まさにそのTogetherの思いが現実となった今回のプロジェクト。伝統に縛られすぎることなく、常にワクワクする新しいことにも挑戦していく姿勢。これまでもこれからも、多くの人々の心を掴んでいくマリメッコからますます目が離せなくなります。


●マリメッコのポップアップショップ(6/7~13)フォトギャラリー●

カリモクニュースタンダードのソファの張地に使用された、グレーとホワイトからなる柔らかなトーンのウニッコ柄のジャガードファブリックは、Annala社製のもの。2017年秋冬シーズンのホームコレクションに登場する予定。









取材協力:Marimekko、伊勢丹新宿店、ルック
写真:Akihide Mishima、北欧区
このページの先頭へ