10月28日から11月5日まで、フィンランドのテキスタイルデザイナー、ヨハンナ・グリクセンさんの展示イベントが都内3会場で開催され、ヨハンナさん自身も来日。来場者と交流するなど、充実した1週間だったようです。
期間中、haus&terrasse2階では、ヨハンナさん自身がプロデュースするリビング空間が登場。1階のショップもまた、「JOHANNA GULLICHSEN STORE」に変身。1930年代に注目を集めた豪華客船ノルマンディ号からネーミングされた、ヨハンナ・グリクセンを代表するパターン、ノルマンディ・コレクションをはじめ、ノルマンディから進化した新作オセアニードの生地や、バッグ、小物類が並んでいました。オセアニードは、ノルマンディ・コレクション誕生20周年の今年のみの限定コレクション。
さらに、代々木八幡会場のケース・ギャラリーでは、今年5月にヘルシンキのアルテックショップで開催された展示「「20 years of voyages with Normandie」を再構成し、デザインとものづくりの背景をインスタレーション形式で紹介。男性にも大人気で、連日大盛況だったようです。新宿会場のリビングデザインセンターOZONE5Fにある「暮らしのかたち」では、ヨハンナ・グリクセンの生地を張ったインテリアアイテムのほか、20周年記念の限定プロダクトなどが販売されました。
イベント期間中、来日していたヨハンナさんにインタビュー。長きにわたり愛される、あの幾何学模様のデザイン「ノルマンディ」の秘密に迫ります。また、フィンランドで古い家具がずっと大切に使われている理由も判明!
ヨハンナ・グリクセンといえば「ノルマンディ」。
haus&terrasse1階ショップはヨハンナ・グリクセン仕様に。
「ノルマンディ」が誕生して20年。
フィンランドの新たなクラシックの顔。
――ノルマンディ・コレクションが誕生から20周年を迎えた今の気持ちを教えてください。
ヨハンナ:ノルマンディをこんなに長く育ててこれて嬉しいです。20年前、手がけた頃は、こんなにクラシック的な存在になるなんて、想像できなかったですね。
――あらためて、ノルマンディ・コレクションについて教えてください。このパターンが生まれた背景、インスピレーションとなったものは何だったのでしょうか?
ヨハンナ:私の場合、デザインは部屋で生まれます。はじめはデザインをスケッチして、織り機で実際に手を動かしながらパターンを作り出していくというプロセスです。ノルマンディは横線でパターンを作り、縦線は同じ。それでバリエーションをつけていっています。最初からコンセプトやテーマを考えて織るのではなく、それは後から付いてやってくるという感じです。織ること自体が閃きを与えてくれるのです。(織り機のことを、フィンランド語でKangaspuut(カンガスプート)」というそう)
もともと、家具の張り替え生地から入ったんです。20年前は、ベッドスプレッドなど、インテリアファブリックのパターン、バリエーションが少なかったんです。そこで、デザインはもちろん、機能性、二重織りにすることで耐久性のあるものを作りたかった。ヨハンナ・グリクセンは柄物のイメージがあると思いますが、単色のプレーンもあるんですよ。でも、プレーンのものよりパターンのほうが人気ですね。インテリアで柄だらけだと強すぎるという場合に、単色を合わせたりしてもらえたら。
――二重織り。表と裏で反対色が出るようになっているんですね。触り心地もとても良いです。糸の組み合わせで色のバリエーションを出すアイデアには驚きました。ブルーとブラックの糸を織ると紺のような深みのあるブルーに、イエローとレッドを織ると艶のある味わい深いレッドに。
白い部分に注目。白の糸とグレーの糸を織ることで柄にアクセントが付きます。
(photo by hokuwalk.com)
ヨハンナ:日本は家具はすでにレディ・メイド、既製品で売られている傾向にありますよね。だけど、フィンランドではオーダーメイドが基本。ショップで生地を選んで作ってもらうシステムです。「VERHOOMO(ヴェルホーモ)」という、カーテンやソファにしつらえてくれる職人さんのいるところに生地を持っていくんですよ。彼らはとても忙しく、フィンランドではビッグビジネスです。ヨハンナ・グリクセンのヘルシンキのショップで職人さんを紹介したりすることもあります。若い世代の方も利用していますよ。
――フィンランドでは古い家具を代々受け継いでいる印象はありましたが、そんな風に気軽に家具の相談をしたり、生地の張り替えなどを頼める場所があるというのは心強いですね。そういった土壌があるというのは羨ましいです。
話変わりますが、ノルマンディは日本の畳にも通じるような「和」を感じるのですが、ヨハンナさん自身は、何か日本と通じるものを感じたりしますか?
ヨハンナ:日本を感じるというのはよく言われます。作品を作る上で、日本を特に意識したりすることはありませんでした。でも、日本とフィンランドを行き来している中で、両国が似ていると感じます。昔から、どこかお互いに刺激しあいながら、影響を与えあっている気がします。江戸時代のアンティークなどを見ていると、無駄のないシンプルなものが多いですよね。たとえば、お酒を入れたり、ものを量るための枡とか、木の板を組み合わせて作られたバケツなんかも、フィンランドが昔使っていたのと似ているって思ったりします。
haus&terrasse2階のヨハンナさんがプロデュースしたリビング空間。
ヨハンナさんのアイデアノート、写真展示なども。
――ノルマンディ・コレクションの新しいテキスタイル「オセアニード」について教えてください。このデザインはどのようにして生まれたのでしょうか?
ヨハンナ:オセアニードは、ノルマンディ・コレクションのひとつで、今年限定になります。全部で3パターン。こういった丸い形にするのは初めてで、今までやったことのない幾何学模様を作ってみたかったんです。いつもお願いしている工場だったので、作るのはそれほど難しいことではありませんでした。いつも“シンプルなもの”が好きです。
――丸いのは、アルテックのスツール60の座面とぴったり同じサイズなんですよね。豪華客船「ノルマンディ号」からとったネーミングのノルマンディ・コレクション。ノルマンディ号の船の窓をイメージしたとか?
ヨハンナ:船の窓ね!それは言われるまで気づかなかったわ。
――オセアニードで新しい展開が見られるかもしれないですね。楽しみにしています。ところで今後ヨハンナさんが、テキスタイル以外でチャレンジしてみたいことはありますか?
ヨハンナ:こないだのハビターレ(家具の国際見本市)スペインの会社向けに床や壁、タイルなども手がけたことがあります。そういうことも続けてみたいです。木や陶器も好きで、他の素材もぜひいろいろチャレンジしてみたいですね。
――20年間、ノルマンディ号で旅をしてきて、またこれからも未来に向けて素敵な船旅を続けていかれる、ということですね!
ヨハンナ:はい、そうですね。今後もどんな旅になっていくか、楽しみです。
長きにわたり愛される理由。それは、ヨハンナさんの作るものにブレがなく、常に質のいいものを届けられる自信があるから。とにかく手を動かして作ってみる。モノづくりの原点を見た気がしました。
男女問わず、年齢問わず、取り入れやすいヨハンナ・グリクセン。ポーチやバッグなども人気ですが、ランチクロスからクッション、ベッドリネン、カーテンといった、インテリアアイテムとしても使ってもらえたらとのこと。今後のヨハンナ・グリクセンに注目です。
取材協力:haus&terrasse、ヨハンナ・グリクセン ジャパン(D.E.F COMPANY)、case gallery、デイリープレス
ヨハンナ・グリクセンのある暮らし
- 20 years of voyages with Normandie - (※終了しました)
会期:2017年10月28日(土)~11月5日(日)
会場:haus&terrasse(渋谷)/case gallery(元代々木)/暮らしのかたち(西新宿)
http://johannagullichsen.jp/
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