2015年創業、フィンランド・ヘルシンキ生まれのオーガニック・ローチョコレートブランド「Goodio(グーディオ)」。創業者Jukka Peltola(ユッカ・ペルトラ)氏は、なんと元IT業界勤務。独立して起業し、チョコレート業界に参入しました。
グーディオは、原材料のカカオを探しに自ら中南米やアフリカへ赴き、カカオ豆からチョコレートになるまでの全ての製造工程を一つの工房で行うBean to bar(ビーントゥバー)のチョコレート。ココヤシの花蜜が原料のココナッツパームシュガーや、オーガニックの食材を使用。さらに、カカオ本来の栄養素を保つために低温で加工したローチョコレートでもあります。
Natural & Organic Awards Scandinavia 2017(第2位)やウーシマー県が選ぶ今年のベストカンパニーに選出されるなど、徹底したこだわりのチョコレートと、その背景にある新しい考え方を持つ会社として高い評価を受けています。
もともとIT業界にいたペルトラ氏は、なぜチョコレートを作ろうと思ったのでしょうか?そこには徹底したこだわりと、チョコレートに乗せた大きな想いがありました。いったい「グーディオ」とはどんなブランドなのか。何がユニークで何が違うのか。その秘密を探るべく、ペルトラ氏に話を聞きました。
味だけでなく、持続性、公平性、透明性を追及した
究極のチョコレートで、業界や消費者の意識を変えたい。
――前職はIT業界だったとお聞きしました。そこからなぜチョコレート作りに関心を抱いたのでしょうか?
ユッカ・ペルトラ氏(以下ユッカ):
ゲーム「アングリーバード」で知られるRovioという会社でゲーム制作をしていました。とても楽しかったけれど、あるとき、もっと多くの人に広く貢献できることをしたくなったんです。健康、そして幸福感とは何か。自問自答し、それを意識し続けました。栄養学を独学で学び始め、そこで「カカオ」に目をつけました。それまでチョコレートは体にあまり良くないイメージがあったのですが、カカオが持つ素晴らしさを知り、自分で取り寄せて、チョコレートを作ってみました。いろいろと調べていくうちに、西アフリカのファームを持つ大手のチョコレート会社では、子供労働者が含まれていたりと、そのサイクル、システムにとてもフラストレーションを感じました。しかも、大手の作るチョコレートは大量生産し、コストを減らすためにいろんなものが含まれています。自然がもたらした素晴らしいカカオを、白砂糖やその他のもので価値を落としてしまっている。それではカカオがもったいない。それで、徹底的に体にいいチョコレートを作ろうと決めました。
――グーディオのチョコレートの特徴、こだわりを教えてください。ほかのチョコレートとは何が違う?
ユッカ:
私たちの使命は、「世界にポジティブな変化をもたらすこと」です。それには、フード業界で何ができるのか。我々のいう「世界最高のチョコ」のコンセプトというのは、味だけでなく、持続可能性を最適化するベストな組み合わせのことも含まれます。フェアトレードを超える公平性を追求したい。というのも、フェアトレードは実はまだ完全にフェアではないんです。生産地、生産者、環境、輸送など、グーディオに関わる全てが健全であることが大事。根本的なところでいう透明性が必要です。それがないと、信頼を得ることができません。将来的には、テクノロジーを利用して、たとえば、QRコードのようなものを使い、パッケージから生産地だけでなく、私たちのチョコレートの製造過程も見ることができるような仕組みを検討中です。
海外のどこかに現金を寄付しても、そのお金がちゃんと現地の人に届いているのか、行方を探るのは難しいですよね。どの寄付団体または企業を信じていいのか。でも、チョコバーを購入すると、それはとてもダイレクトで具体的。生産地の人々の生活や教育の一端を担うことができます。そのことにより、彼らの人生においてより良い選択肢を持つことができ、健康かつ豊かになっていくと信じています。みんながWin-Win-Winの状態を作りたいんです。
グーディオは、石臼で3日間かけて、規定温度の48度より2度低い46度でカカオを挽くことで、カカオ本来の栄養素を高いレベルで維持する「ロー(Raw)」と呼ばれるチョコレート。「ワイルドブルーベリー」には、フィンランドの森で自生するワイルドベリーが、手前の「コーヒー」には、エスプレッソで抽出したコーヒーがブレンドされています。もちろんオーガニック。
――これまでに苦労した点、難しいと感じたことはありましたか?
ユッカ:
グーディオは私自身が2011年に前職を辞めて、2012年に他2人と一緒に始めました。実際、本格的にビジネスとしてスタートしたのは2015年になります。2015年まで数年間ありますが、その間は毎日試行錯誤の連続でした。スキルもない、資金も尽きてくるしで、とても苦しい時期でしたね。2015年から劇的に変わっていきました。グーディオに賛同してくれる知人やサポートしてくれる人たちとの出会いを経て、そこから商売が上向きになっていきました。失敗を重ねたことで、学ぶことがたくさんあったし、今はとてもよかったと思っています。”Mistakes are Good”!同じ失敗は良くないけれど、新しい失敗は良いことですね。自分がハッピーでないと、成功はないと思います。ずっと長いテスト期間があったけれど、やっと今、飛行機で言うと、テイクオフしたような気分です。今、気持ち的にはとてもハッピーです。
――グーディオのチョコレートの人々の反応は?フィンランド国内以外にも展開されていますか?
ユッカ:
反応は上々です。嬉しいことに、(インタビュー日の2週間前に)Natural & Organic Awards Scandinavia 2017(北欧で第2位)に選出され、あと、フィンランド・ウーシマー県が選ぶ今年のベストカンパニーにも選ばれました。
現在は、フィンランド国内だけでなく、エストニア、スウェーデン、ノルウェー(2017年12月1日にローンチ)、UK、US、ドイツ、フランス、スイス、ポルトガル、スペイン、香港で販売しています。取り扱いの量は国によってさまざまですが、USは大きいですね。中国からも引き合いがあったのですが、まだ始めていません。もっとたくさん作れるように、フィンランドに新しい工場を作る予定なんです。創業時から比較すると、だんだん大きな工場になっています。工場見学もできますよ。
グーディオで働くスタッフはとてもエネルギッシュ。現在約30名いて、そのうちの約10%は、メンタルや体に問題を抱えていたり、サポートを必要としている人です。2017年8月に「Goodio Cafe」をオープンしたばかりで、ケーキやクッキーなどはグルテンフリー、Veganやヘルシーなものを揃えていて、とても良い反応をいただいています。
「シーソルト」はカカオ含有率77%。コンゴ産の特別なカカオとアイスランドの天然塩がインパクトある一品。
――今後の展望を教えてください。今後挑戦してみたいことは?
ユッカ:
考えているのは、ドリンク。カフェで頼むドリンクって、コーヒーや紅茶が主流ですよね?ココア(飲むチョコレート)は、コーヒーや紅茶より注文する人が少ないと思います。この比率を変えていきたい。人々の意識を変えて、生産地やチョコレートのフレーバーを選んで飲めるように。カカオの種類で飲むココア。それはぜひやってみたいと思います。
私たちはとにかく、チョコレートだけを作っているというより、ライフスタイルを提案している会社ですね。新しいチョコレート工場にヨガ・ルームを作るのもいいかもね。チョコレートの香りもいいし。でもこれに関しては私の担当じゃないのでわからないけどね(笑)
――日本の北欧やフィンランドが好きな方、チョコレートファンの皆さんにメッセージをお願いします。
ユッカ:
これはフィンランドでのことだけれど、グーディオのチョコレートは人にあげるために購入する人が多い。パッケージデザインにもこだわっているので、贈り物にぴったりだと思います。ただ、自分用となると、みんな「ちょっと高いかな」と控えてしまう。私から伝えたいことは、「Love yourself, too!」(あなた自身のことも愛してあげてください)。もっと自分のことも大切にしてもらえたらいいなと思います。あと、収穫したカカオ、ベリーなどは、年ごとに違うので、グーディオのチョコレートは同じ味にはならないんです。まるでワインのように、その年のカカオを楽しめる。毎年、ちょっとずつ違う味が楽しめるかも。ぜひカカオとの素敵なバランスを楽しんでみてほしいです。
チョコレート作りに関わるカカオやその他の原料選びから、生産、輸送、製造工程、パッケージにいたるまで、徹底的に良いものを貫いているグーディオ。食べ物が病気を引き起こすものではなく、健康を促すものになるよう、食品業界と消費の構造を根本的に変えたいというユッカさん。ただチョコレートを製造販売しているわけではなく、行動と知恵とアイデアで、人々の意識、社会の考え方までも変えていけたら。そんな高い意識のもとに、グーディオのスタッフたちと毎日奮闘しています。フィンランドでのメディア取材も多くなってきている注目の起業家。グーディオの今後の展開に期待!
Goodioホームページ
https://goodiochocolate.com/
Facebookページ
https://www.facebook.com/GoodioGoods/
取材協力:ラクシアトレード、松屋銀座
11月29日~12月12日まで松屋銀座にて開催されていたフィンランドの暮らしを伝える「ライフインフィンランド」で、グーディオのチョコレートが地下1階で販売されました。