シンプルな鳥のロゴマークで知られるフィンランドのデザインブランド「Kauniste(カウニステ)」。手描きの温かみのあるデザインに、柔らかなペールトーンの色彩が特徴的なヘルシンキに本社を置くテキスタイルメーカーです。
2008年8月にKauniste Finlandを設立し、翌年9月に初めてヘルシンキデザインマーケットに出展。フランスやドイツの国際見本市などにも出展し、フィンランド国内のみならず、欧州での取引もスタート。日本への本格参入は2011年12月から。日本への輸出は約30%を占めており、取り扱い店舗は約60店舗ほどあります。(2017年12月現在)
2012年7月にヘルシンキ市内中心部に念願の路面店1号店をオープン。2013年、2015年とヘルシンキ国際空港に期間限定店を出すなど、着実にファンを増やしてきたカウニステは、ついに2016年11月、ヘルシンキ大聖堂前に路面店2号店をオープン。日本からの観光客でもにぎわう、ヘルシンキのショッピングスポットにもなっています。
ヘルシンキ大聖堂店の様子。
ケースギャラリー(元代々木)での展示会や、21_21デザインサイト(六本木)で開催されたポップアップイベント「FIN/100」、名古屋タカシマヤなど、昨年11月から12月にかけて日本でもいくつかのイベントに出展。ちょうど来日していたカウニステのクリエイティブディレクター、ミッラ・コウックネン(Milla Koukkunen)さんに話を聞きました。カウニステの特徴、あの世界観はいったいどのようにして生まれたのでしょうか?
伝統技法で、新しいデザインと、
他にないオリジナルカラーで彩る。
――「カウニステ」をスタートしたきっかけは?
ミッラ・コウックネンさん(以下ミッラ):
カウニステの前は、ヴィンテージのプロダクトを扱う仕事をしていたんですが、クラフトマンシップを感じるヴィンテージに触れるうちに、何か自分たちで新しいものを生み出せないかと思い、2人のデザイナーに声をかけて、テキスタイルブランドを立ち上げようと決めたんです。そこで、まずはキッチンタオルを作ろうと思いました。
――ヴィンテージの世界からテキスタイルメーカーへ。なぜ、プリントテキスタイルを選んだのでしょう?
ミッラ:
テキスタイルはフィンランドの伝統、財産だからです。フィンランドにはたくさんのテキスタイル会社があったのですが、1990年代の経済不況に陥った時にテキスタイルの会社を含む多くの会社が廃業し、フィンランドのテキスタイル産業が大きく衰退してしまったんです。ですから、私たちがテキスタイルブランドをはじめようと思った頃には、限られたブランドしか市場に残っていなかったため、私たちのような新しいテキスタイルブランドであっても、多くの人からその誕生を歓迎してもらうことができたのです。結果的に、私たちがテキスタイルブランドをはじめたのは、良いタイミングだったのかもしれません。
手始めにキッチンタオルを作った理由は、フィンランドのどの家庭でも日常的に使われているものだからです。だいたい10から20枚くらいはあるんじゃないですかね。日本のてぬぐいのような感じです。キッチンタオルは、50×70センチのほぼ典型的なポスターサイズ。シルクスクリーンの技法を採用しました。素材は、リネン55%、コットン45%という伝統的な北欧のプリントテキスタイル。フィンランドでは洗濯するとき、通常60℃から90℃くらいの熱湯を使うため、褪せず耐えられるかどうか、色をしっかりとテストしています。
キッチンタオルは、ブランド創設時よりフィンランドにて生産が続いている綿麻素材のロングセラーアイテム。こちらは2017年春に発表、色鮮やかなパンジーの花々を大胆に表現した作品「Orvokki(オルヴォッキ)」。
――パステルというかペールトーンでしょうか。優しげな色彩が印象的ですね。カウニステのデザインはどのようにして作られているのでしょう?特徴や作る過程で大切にしている点を教えてください。
ミッラ:
カウニステのデザインで大切にしていることは、ハンドドローイング(手描き)。コンピューターでは出せない、手描きの持つ線やタッチを大切にしたいというのと、最終的にプロダクトになったときに、柔らかい雰囲気が出るので、きちんとハンドドローイングが出来るデザイナーさんと一緒に仕事をさせていただいています。
色は、そうですね、ペールトーンかな。くすんだ感じの、控えめで優しげな色ですかね。原色は使いません。しかも、既存のカラーではなく、自分たちで完全オリジナルのカラーを作り出すことが多いです。フィンランドでは私たちのようなペールカラーはあまり使わないですね。時間はたくさんかかりますが、結果的にとても良いものに仕上がります。そのあたりがユニークですし、他ブランドにはないカウニステならではの世界が出来上がるんだと思います。日本の方に好まれやすい色あいですか?それはラッキーですね!(笑)特に意識していなかったです。
デザインが上がってきたら、色に関しては私が中心になって進めています。いろんなデザイナーさんがいるので、インテリアでもファッションでも、他のプロダクトとも合うようにトーンを合わせて統一感を出すようにしています。
――カウニステのデザイナーさんは、どんな風に見つけるのでしょうか?どんな方がいらっしゃいますか?
ミッラ:
カウニステのプロダクトは、北欧の才能あふれるデザイナーと職人が集まって作られています。私たちと今一緒に仕事をしているデザイナーは約10名。Bjorn Rune Lie(ビョーン・ルネ・リー)やHanna Konola(ハンナ・コノラ)、Matti Pukkujamsa(マッティ・ピックヤムサ)といったデザイナーたちと活動しています。日本人では、ミロコマチコさんとご一緒しました。ミロコさんは有名な方ですが、私たちは普段、学生さんだったり、まだ名前が知られていない若手デザイナーとの作業が多いです。デザイナーは人の紹介が多いのですが、素晴らしい作品をお持ちでも、なかなか私たちの色彩や世界観と合致する人はそう多くないので、一緒にお仕事をするデザイナーを探すのは容易なことではないですね。
カウニステのクリエイティブディレクター、ミッラ・コウックネンさん。
――現在、フィンランド国内以外では、どんな国で展開していますか?今後出店を考えているところは?
ミッラ:
ヘルシンキには直営店が2店舗。ありがたいことに、国内でもヨーロッパにもたくさんの小売店で取り扱っていただいています。あと、オンラインショップでも展開しているのですが、日本にはまだ店舗がありません。海外にももっとたくさんのお店を持ちたいですね。ショップの存在は私たちにとって、とても大きい。ヘルシンキのショップを知って、私たちのブランドを好きになってくれる方が多いので。お客様と直接接点を持つことが重要だなと感じます。海外では、日本での出店は私たちが今最も望んでいることです。いつになるか、ですけどね(笑)
――今はテキスタイルがメインですが、他の素材など、今後カウニステが挑戦してみたいことはありますか?
ミッラ:
小さな会社なので、引き受けられない仕事もありますが、とりあえず今は、私たちの原点であるテキスタイルにこだわって、カウニステという会社を大きく成長させたいですね。もちろん、いろんな素材やテクニックを試してみたりして。たとえば、ウールコレクションでは以前からブランケットはあったけれど、クッションカバーやマフラーは初めて。今年もプロダクトの種類を増やしていく予定です。
2017年の秋にデザインを一新したウールコレクション。ウール素材の中で最高品質であるメリノウールを
使用。ブランケットのほか、クッションカバーやマフラーなども。
――カウニステのファンの皆様をはじめ、北欧、フィンランド、デザインが好きな、読者の皆様へ一言お願いします!
ミッラ:
カウニステのショップスタッフは朗らかでフレンドリー。私たちのブランドのコンセプトが、「ハッピー&フレンドリー」なので、英語が話せなくても、自然とコミュニケーションがとれるような雰囲気の店内になっています。いつでも大歓迎!ヘルシンキにもぜひ遊びに来てくださいね。そして、もし日本でオープンできたら、ぜひいらしてください。(指をクロスさせて)皆さん、日本出店を願っていてくださいね!
今年2018年で創業10周年を迎えるカウニステ。何か特別な企画やイベントなどを予定されているかを尋ねたところ、10周年記念の「Helsinki」という名前の柄をリリースするそう。この柄は2018年のみ日本でも販売されますが、それ以降はヘルシンキ直営店のみの限定販売になる予定。カウニステの新作も要チェックです。
Kauniste(カウニステ)HP
http://www.kauniste.com/
Kauniste(カウニステ)Facebookページ
https://www.facebook.com/Kauniste/
一輪ずつ異なる顔を持つパンジーの花の魅力を、テキスタイルパターンとして美しく描いた「Orvokki(オルヴォッキ)」のファブリック。2017年春に発表。
カウニステの代表的なアイテム。ちょっとしたお出かけに最適なミニサイズのトートバッグや、iPhoneケース、ポーチなども人気。
「お砂糖」を意味する Sokeri(ソケリ)のクッションカバー(左)トレーはフィンランド産の白樺でできており、表面を防水加工してあるので、食洗機や水洗いが可能。
2016年11月にオープンした2号店となるヘルシンキ大聖堂店。大聖堂のすぐ前ということもあり、世界中から多くの人が来店します。
▼ブログ記事では、筆者の「カウニステ」エピソードも。
https://ameblo.jp/hokuwalk/entry-12343227515.html