2018/01/29

【特集】北欧モデル最新情報――北欧5カ国大使による共同記者会見(後編)

『北欧モデル最新情報』
2017年12月13日(水)@ 日本記者クラブ

スウェーデン : マグヌス・ローバック大使
ノルウェー : トム・クナップスクーグ参事官
(アーリン・リーメスタ大使代理) 
アイスランド : ハンネス・ヘイミソン大使
フィンランド : ユッカ・シウコサーリ大使
デンマーク : フレディ・スヴェイネ大使
司会:石川洋氏(日本記者クラブ)


左からフレディ・スヴェイネ デンマーク大使、ユッカ・シウコサーリ フィンランド大使、ハンネス・ヘイミソン アイスランド大使、アーリン・リーメスタ ノルウェー大使代理 トム・クナップスクーグ参事官、マグヌス・ローバック スウェーデン大使、石川洋氏(日本記者クラブ)


昨年末の12月13日、2016年に続き、日本記者クラブにて北欧5カ国の駐日大使による共同会見が行われました。各国の大使が、それぞれ移民問題、男女平等、教育、社会保障、労働市場政策といったテーマで、メリット・デメリット、課題を含め、自国の最新事情を話してくれました。幸福度や住みやすい国ランキング上位の常連国である北欧の気になる取り組みとは?国民がより住みやすく、働きやすく、幸せに暮らせるための具体的な施策、考え方は?その裏に潜む課題は?後編では、教育(アイスランド)、ベーシックインカム導入(フィンランド)、フレキシキュリティ(デンマーク)についてお届けします。


まずは、アイスランド編。「教育へのオープンアクセスと競争力」と題し、ハンネス・ヘイミソン アイスランド大使が、国際競争力を高めるためにアイスランドが実行していること、アイスランドの教育について話しました。



●教育へのオープンアクセスと競争力(ハンネス・ヘイミソン アイスランド大使)

自国の得意分野はしっかりと伸ばし、足りない部分は海外で補う

1907年の教育法設立とともに、10歳から14歳に教育が義務づけられたというアイスランド。1911年に大学が設立され、1918年に主権を獲得したアイスランドは、今年2018年で独立100周年を迎えます。

どこに暮らしていようと、どこにいようと、誰でも教育を受けられること。農村地域・過疎地は先生不足が課題のようですが、国際社会でも競争できるように、クリエイティブな面を強化してきました。

アイスランドには現在7つの大学があり、そのうち3つの大学に伝統的な学科があります。漁業、技術、文化、芸術などを学ぶことができ、より高いレベルを目指すなら、海外の大学へ行く人が多いというアイスランドは、90%以上の教員が海外留学経験者。これにより、教育レベルも高まっているといいます。

たとえば、医学ならスウェーデンやアメリカ、持続可能なエネルギーや科学技術ならノルウェー、デザインや経営学、マーケティングならデンマーク、建築や音楽、デザインを学ぶならフィンランドといった具合。日本の大学とも提携していて、交換留学プログラムもあります。アイスランドにやってくる留学生は、地熱といったアイスランドならではの持続可能な最先端のエネルギー技術を学びにきます。

「留学しても、アイスランドに戻ってくることが大切」とヘイミソン大使。留学経験者は、国に新しい視点をもたらし、競争力を高めてくれる大切な人材だといいます。

アイスランドの高等教育は、自国の強みをきちんと持って伸ばし、足りないところは海外で補うという考え方。一人ひとりの学生のレベルが上がると、国全体のレベルが上がるというのは、過去30~40年の経験に基づいているといいます。学校だけでなく、経済が伸び、社会全体に発展が見えるので、継続されています。


次に、フィンランド編をお届けします。「社会保障改革:ベーシックインカムの実験」と題し、ユッカ・シウコサーリ フィンランド大使が、注目の社会保障制度「ベーシックインカム」について、導入の目的やどういった効果が得られるのかを解説しました。



●社会保障改革:ベーシックインカムの実験(ユッカ・シウコサーリ フィンランド大使)

ベーシックインカム導入は、雇用創出が目的で貧困援助ではない

無作為に選ばれた25歳から58歳までの失業者2000人に(日本円でいう)現金約7万5千円(560ユーロ)が毎月支払われる「ベーシックインカム」という制度を実験中のフィンランド。所得制限はなく、就業後ももらい続けることができるシステムになっています。この実験は2018年12月までの2年間実施され、
のちに結果が公表される予定。

シウコサーリ大使は、ベーシックインカム導入の目的を、「高齢化が進み、社会保障制度を簡素化するため。雇用のためのインセンティブを与えること」だと話しています。あくまでも雇用創出が目的で、貧困援助ではない。ベーシックインカムの真の狙いは就業を促すこと。労働形態の多様化にともない、自営業やフリーランサーといった職業にも合っているシステムだといいます。

560ユーロも支給されるため、「無職の人が短期労働契約でも働こう、という気にならないのではないか」、「企業の賃下げにならないか」という疑問の声があがりましたが、それでもベーシックインカムは効率的だとシウコサーリ大使。ベーシックインカムは役所仕事を減らし、企業に支払うのではなく、直接個人に現金を支払う制度。企業は最低賃金から下げることはできないといいます。

また、AIが導入されると、将来的に労働市場は中間の仕事がなくなり、二極化する可能性があるとシウコサーリ大使。「最低限の所得を与えられるというのは大きな意味がある。2018年に実験結果が出るので公表したい」とのこと。他の北欧諸国もフィンランドの実験結果がどうなるか、興味を抱いています。


最後に、デンマーク編をお届けします。「グローバル化への推進力としてのフレキシキュリティ」と題し、フレディ・スヴェイネ デンマーク大使が、90年代に導入したフレキシキュリティについて、日本に参考にしてもらいたい取り組みを解説。



●グローバル化への推進力としてのフレキシキュリティ(フレディ・スヴェイネ デンマーク大使)

グローバル化が進む中で、自分の仕事を確保しなくてはならない

北欧諸国は全部合わせても世界で経済12位。「それでも日本にも参考になるものがあるかもしれない。北欧の取り組みが何かインスピレーションになれば」とスヴェイネ大使。

デンマークは貿易国。グローバル化につれ、自分の仕事を確保しなくてはならないというところから来た社会保障制度が「フレキシキュリティ」。

「フレキシキュリティ」とは、フレキシビリティとセキュリティを合わせた言葉で、労働市場の融通性と労働者の社会保障とを組み合わせた政策。フレキシブルな雇用が可能なシステムで、90年代に導入されました。

また、すべての産業を超えて、同じ職種で転職しても同じ賃金をもらえる「同一労働同一賃金」を実施しているデンマーク。日本にとって、同職種で転職しても同じ賃金というのは、あまりにも大胆すぎるため、産業を超えてまで実施するのは難しい、日本には合わないと言われています。(※安倍政権が、同じ企業内での正規社員と非正規社員の賃金格差をなくすために、同一労働同一賃金を法制化しようとしています)

さらに、北欧諸国の高い消費税についても言及。高い税率にも関わらず、なぜ国民はそれを納得できるのか。消費税25%というのは、社会に投資しているという認識があり、その見返りとして、医療や教育が無料になっています。国で話し合いを重ねながら意思や意見を一致させながら進めているといいます。

「税は投資。どうやって国民に信頼してもらうか。信頼性が大事である」という、ローバック スウェーデン大使に同調したスヴェイネ大使は、「消費税を支払い、リターンされること。これはぜひインスパイアされてほしい」と付け加えました。

前回もパフォーマンスを見せてくれたスヴェイネ大使。今回は、レゴを見せて、「壊してもいいし、また違う形に作り直せばいいんです。北欧5カ国の取り組みをぜひ参考にしてもらえたら」と、北欧を代表して締めくくりました。
▼ブログでは、北欧5カ国に共通する考え方や共通意識についても掲載。
https://ameblo.jp/hokuwalk/entry-12347092502.html

▼前編では、スウェーデン、ノルウェーの駐日大使のお話です。こちらもぜひご覧ください。

▼2016年の共同会見の模様はこちら!
【特集】北欧5カ国の駐日大使、北欧の旬な話題を語る!

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