2018/12/11

【特集】フィンランドデザイン×無印良品トークショー IFFT/インテリア ライフスタイル リビング(後編)

今回一般に初めて開放されたアトリウム内の「Lifestyle Salon 2018」。
IFFT初登場のフィンランドのデザイナー、ハッリ・コスキネン氏と
無印良品の矢野直子氏によるトークショーの模様をお届けします!



今回初めて一般開放されたアトリウム


11月中旬に東京ビッグサイトにて開催された、家具を中心に国内外のキッチンツールやテーブルウェア、テキスタイル、ジュエリー、フードなどを扱う400社を超える企業が集結した国際見本市「IFFT/Interior Lifestyle Living(IFFT/インテリア ライフスタイル リビング)」。

毎回のように足を運んでいる恒例の見本市なのですが、いつも楽しませてくれるのが、入場してすぐ現れる開けたスペース「アトリウム」。毎回いろんなクリエイターがブランドやプロダクトをより魅力的に見せてくれます。

普段はバイヤーや業界関係者、メディアのみの見本市なのですが、なんと今回初めてアトリウムのみ一般に開放。「日本仕事百貨」代表のナカムラケンタ氏をディレクターに迎え、出展者の製品一つひとつの「はじまりのストーリー」を紹介した「はじまりの仕事展」が開催されました。ものの背景にあるストーリーや作り手の思いを伝え、多くの発見や出会いの場となったのではないでしょうか。

トークショー会場、カフェスペース、プレスルームも全てアトリウムに集約。ここまでオープンなプレスルームは初めて。不思議な感覚でした(笑)(プレスルームの画像はブログ記事に掲載)

前編では、デンマーク、フィンランド、ノルウェーのブランドをお届けしました。後編では、今回一般に初めて開放されたアトリウム内の特設ステージ「Lifestyle Salon 2018」で行われたフィンランドのデザイナー、ハッリ・コスキネン氏と、無印良品の㈱良品計画生活雑貨部企画デザイン室室長の矢野直子氏によるトークショーの模様をお届けします。



■日本と縁の深いデザイナー、ハッリ・コスキネン

愛媛・松山に行ってきたというハッリさん。(もしかすると、12月16日まで愛媛で開催されている「石本藤雄展-マリメッコの花から陶の実へ-」へ行ってこられたのでしょうか?)トークショーのあった二日後には、フィンランドへ帰るという多忙なスターデザイナーが、今回IFFTに初登場。イッタラでのガラス作品、アルテックのチェア、ライ麦パンが映ったショットが出てくると、「これは自分で焼いたもの」とさりげなく付け加えるハッリさん(笑)自身のこれまでの活動や手がけた作品などを写真で紹介しました。

日本と初めて関わりを持ったのは、2000年のイッセイミヤケとの仕事。時計を手がけました。また、MUJIとはカップで関わります。ここから15年、日本の企業と徐々に繋がりを持ち始め、10年前にはマルニ木工のチェアをデザイン。さらに、2012年よりイッタラのデザイン・ディレクターを務めるハッリさんは、縁のある二つのブランド、イッタラとイッセイミヤケのコラボレーションを実現。ディレクションを担当しました。

フィンランドでは、ヘルシンキのスタートアップカンパニーのJalo Helsinkiのスモークアラーム(煙感知器)をデザイン。無機質なスモークアラームに、テキスタイルのカバーを付け、ギフトアイテムにもなるプロダクトを作りました。さらに、最も最近手がけたというプロダクトは、ジェネリックのアルミウム製のスピーカー。また、パラシューター向けのアルミニウム入りバックパックを手がけたかと思ったら、道路のメンテナンス車、さらには、工場で建てて運べるログハウスメーカー、Honka社製のキャビンなど、デザインする対象プロダクトは多岐にわたります。

■フィンランドの夏を発掘し、Mujiが見つけたもの

さまざまなジャンルの企業向けプロダクトデザインを手がけるハッリさんと、無印良品のコラボがスタートしたのは、約15年前のこと。作り続け、商品数を増やしていった無印良品が、「探す」「見つけ出す」という原点に立ち返り、世界を回って良いもの見つけ出す「Found Muji」というプロジェクトをスタートさせました。

現在28カ国を巡り、今年2018年はフィンランドの夏に使うものを発掘するというテーマで、ハッリさんファミリー全面協力のもと、「Found Muji Suomi Finland コレクション」を展開。多くの場所を巡り、伝統工芸の職人のところも回ったことは、ハッリさんにとっても大変嬉しく、良い体験だったといいます。




今年初夏に、青山のFound Mujiにて開催された「Found Muji Suomi Finland」展


フィンランド人にとって、とても大切な資源の白樺で作る「バスケット」、サウナで使う伝統的な「メタルバケツ」、ハッリさんのお母さんがまとっていた伝統的なコスチュームやリボン、木べらやスプーン、矢野さんがお気に入りだという「蚊取り線香」。蚊取り線香は日本にもあるので、「非常にユニバーサルなプロダクトですね」と二人で話していました。

ライ麦パンやカレリアパイといった日常的に食べるパンのある、何気ないキッチンや朝食セッティング、ご近所さんとのやり取りなど日常風景も会場で披露。秋の収穫直前の原風景の写真も美しくうっとりしました。

今回はMujiチームが夏のフィンランドを探りに行きましたが、「冬のフィンランドをFound Mujiとしてやるなら、どんなところへ連れていってくれますか?」という矢野さんの質問に、「自分なら、アイスフィッシングに連れていきたいかな。1日ずっと氷の上で過ごすのはとてもいい。ホットチョコレートを持って、強いアルコールで身体を温めながらね」とハッリさん。夏も冬も、やはり静寂と自然の中で過ごすというのは変わらない様子。

そしてやはり、冬もサウナ。サウナとウィンタースイミングというコントラストはまさにフィンランド。家族や近い親戚との時間を過ごしてリラックスするのが、ハッリさんおすすめの過ごし方だそう。



■無印良品が自動運転シャトルバスをデザイン!2020年の実用化に向けて来年試運転をスタート 

無印良品は昨年、ヘルシンキで開催される、家具・インテリアデザインフェア「ハビターレ」でのポップアップが大好評。無印良品は、「世界一美しいMujiをフィンランドで作りたい」と宣言。今年ヘルシンキにて、ポップアップストアをオープンし、2018年12月現在、3度目のポップアップストアをカンピセンターにて展開中(2019年1月20日まで)。そして2019年、有楽町の無印良品級の大きさを誇るヨーロッパ最大の店舗を、ヘルシンキに出店することが決定しました。

MUJI HOTELが中国でオープンし、来年、銀座にもオープンすることが決定している無印良品。活動の場を広げる無印良品は、現在進行中のプロジェクトの話も披露。来年3月、ヘルシンキにて、フィンランドで16人乗りの全天候型自動運転シャトルバス「ガチャ(Gacha)」の試運転を実施するそう。対極な「伝統」と「最新テクノロジー」という組み合わせはフィンランドのデザイン思考。日本とフィンランドの素晴らしいコラボレーションだとハッリさん。フィンランドの公共交通バスとして2020年の実用化を目指します。

※フィンランドでは法律上、公道を走る乗り物に必ずしも運転手が乗車している必要がなく、自動運転車の実用実験がしやすい環境下にあるようです。>>株式会社良品計画プレスリリース

ますます強く、深くなるフィンランドと無印良品のつながり。ハッリさんにも今後どんどん無印良品に関わってもらいたいとのこと。近い将来、どんな提案を我々に投げかけてくれるのか、どんなプロダクトが生まれるのか、楽しみです。

Found Muji
https://www.muji.net/foundmuji/
Harri Koskinen
http://www.harrikoskinen.com/

IFFT/Interior Lifestyle Living
IFFT/インテリア ライフスタイル リビング

会期:2018年11月14日(水)~16日(金)※終了
会場:東京ビッグサイト西ホール1・2+アトリウム
https://ifft-interiorlifestyle-living.jp.messefrankfurt.com/tokyo/
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