2019/03/12

【特集】色や表情で癒しを生み出すフィンランドのイラストレーター、レーナ・キソネン インタビュー

自分の足で歩き回ると、思いがけない発見や出会いがある。
何に出会うか、どんな発見があるかわからないから、面白い!



今年2月、日本橋三越で初めて、ポップアップショップ「FLORA&FAUNA Leena Kisonen Finland POP ~色とりどりの世界~」を開催し、大盛況だったというフィンランドのイラストレーター、レーナ・キソネンさん。

北欧菓子「FIKA」のパッケージデザインや、日本企業とのコラボレーション商品も多数手がけているレーナさん。思わず惹きつけられてしまう色使いやパターン、モチーフが特徴的で、北欧好きな皆さんもどこかでレーナさんのデザインに触れているかもしれません。



ポップアップでは、トークイベントやライブパフォーマンスも行われ、男女問わず幅広い年齢層の来場者と交流。直接、日本で生の声や反応を聞くことが出来て良かったとレーナさん。最も多かった反応は、作品の大きな特徴ともいえる色づかいやモチーフを見て、「癒される」という声だったそうです。

そんなレーナさんの「癒される」デザインとは?作品を生み出すにあたり、どんなことを意識し、何がインスピレーションとなっているのでしょうか?人々に癒しを与えるデザインの秘密に迫ります!



――色やモチーフがとても印象的ですね。レーナさんのデザインの特徴を教えてください。

レーナさん:
おっしゃるとおり、私にとって、色が最優先。最初の印象は、ハッピーな気分になるとか、色が楽しい、面白いと言われます。ポジティブな雰囲気なので、気持ちが落ち着き、癒されるというのに繋がるのだと思います。あと、北欧フィンランドのデザインの特徴のひとつでもあるシンプルであることを心がけています。

――デザインする時に、どんなところからアイデアが浮かんだりしますか?レーナさんがインスパイアされるものや瞬間は?

レーナさん:
日常の生活からインスピレーションを受けています。歩いているときも、バスに乗っているときも、常に目を開けて、観察することを心がけています。旅行はとても良いですよね。日常生活からちょっと飛び出して、何か新しいものを発見できます。旅は大きな刺激になります。物事に対する見方、考え方、視点を変えられるからですね。

――具体的にこれ!というものはあったりしますか?北欧、フィンランドのデザイナーさんに色々お話をお聞きすると、自然からインスピレーションを受けているという方が多くいらっしゃいます。

レーナさん:
そうですね。私も自宅の庭の花や植物など、自然にもインスピレーションを受けています。あと、ヴィンテージのパッケージデザインも好きで、よくチェックしています。

――有名なパッケージデザインに、スウェーデンのデザイナー、オーレ・エクセルの「カカオアイズ」がありますよね。全く個人的な感想ですが、レーナさんが描く世界観が、オーレ・エクセルのデザインに通ずるものがあると感じました。

レーナさん:
オーレ・エクセルですね!私も好きな、お気に入りのデザイナーの一人です。


手にしているのは、フクロウがモチーフの作品。「フクロウは知恵の象徴でもありますよね」と、レーナさん。日本でも、縁起の良い鳥として、アクセサリーやインテリアなど、いろんなシーンで見られます。



――デザインする時、何から始めますか?ハンドドローイング?それともデジタルで?

レーナさん:
最初は手を動かして始めます。紙でいろんなモチーフを切って作って、組み合わせ、それをスキャンしてコンピューターで色を付けていくといった流れです。デジタルが多い中で、わざわざ切り紙から始めるのは、より身近でパーソナルな気持ちを伝えるため。

紙は白黒を使います。輪郭がくっきりと見えてくるし、スキャンしやすいというのが理由です。そこから色を入れていきますが、しっくりと来る瞬間があったら、それ以上手を加えることは控えます。

さっきも旅から刺激を受けると話しましたが、学生時代にポーランドに行ったときに、そこで出会った伝統的な切り紙の作品に強く影響を受けました。紙を切ってデザインを作るきっかけになったのは、学生のときに出会ったポーランドの切り紙です。その国の家にあるような、あたたかみのある民芸にとても興味があります。

――将来的にやってみたいことは?今手がけているもののほかに、どんなことにチャレンジしてみたいですか?

レーナさん:
大きなもの、空間を作りたいです。グラフィックやイラストレーションという平面のデザインを手がけてきたので、立体的なものにもチャレンジしてみたいですね。空間の中で、自分の表現をしてみたいです。

これまでに、空間とのコラボレーションでは、パリにあるカフェ「coutume(クチューム)」のウィンドウディスプレイを手がけたことがあります。また、フィンランドのデザインシューズブランド「Minna Parikka」のウィンドウディスプレイも、アニマルパターンでコラボレーションしました。

――日本で行ってみたいところはありますか?何か体験したいことは?

レーナさん:
今回の来日では、フィンランドのサウナ文化と近いと言われる温泉を初めて体験する予定です。日本には仕事で来ることが多いので、東京や京都以外に足を伸ばしたことがありません。手仕事に興味があるので、ローカルなものをもっと見たいですね。

日本民芸館に行ったのですが、そこで日本の陶磁器やテキスタイル、染め物を見ました。私自身が紙で作品づくりをして、紙のプロダクトも扱っているため、和紙にも興味がありますね。あと、埼玉の大宮盆栽村にもエージェントさんに連れていってもらいました。樹齢500年や1000年の盆栽を見ましたけど、さすがにこれはフィンランドにはない文化。とてもユニークですね。

フィンランドは2017年でやっと100歳を迎えた若い国です。日本には歴史も伝統もあり、フィンランドと全然違います。全てが新鮮で刺激を受けています。

――レーナさんおすすめのフィンランドのスポットを教えてください!お気に入りの場所はありますか?

レーナさん:
お気に入りは図書館。静かなのが好きだからです。探し物はインターネットでも探せるけれど、私は自分の足で歩き回るのが好きです。歩いて偶発的に入ってくるもの、何か発見や出会いがあるから、結果どうのよりも、自由に歩いてみたいんです。そういったプロセスが好きです。わからないから、面白い。

お気に入りの図書館は、最近出来たヘルシンキの中央図書館「Oodi」。ここは大きいので映画を見たり、楽器を演奏する部屋や何かをレンタルしたりと、本以外のサービスが充実した大きな施設ですが、純粋に本だけしかない「Rikhardinkadun Kirjasto」という図書館にもよく行きます。

▼Oodi関連記事(北欧ニュース:2018/11/06)
http://www.hokuwalk.com/Topic/page/page_id/022018110600015001/cat_id/3

――レーナさんから何かニュースがあればぜひ!

レーナさん:
日本では過去に少しだけ個展をやったことがありますが、日本橋三越のような百貨店で、しかも比較的長い期間、自分の作品を見ていただいたりすることは初めてでした。来場者の方の生の声を聞くことが出来て本当によかったので、ぜひまた日本でこういったイベントが出来たら嬉しいです。

実はゴールデンウイークにまた、イベントを開催することが決定しています。これから全国で展開できたらいいなと思っています。

開催期間:2019年4月27日(土)~5月6日(月)
会場:エディオン蔦屋家電(JR山陽本線、広島電鉄本線「広島駅」徒歩1分)

<レーナ・キソネン オリジナル作品ギャラリー>
オリジナルの切り紙の作品(Transparent series/トランスペアレント シリーズ)は、透明なアクリル板に作品を挟み、額装されています。写真ではわかりにくいかもしれませんが、ちょっと宙に浮いたような雰囲気が素敵。ドライフラワーやプリザーブドフラワーを瓶に入れて楽しむ「ハーバリウム」から、この額装のアイデアを思いついたというレーナさん。ポップアップでは、奥様にプレゼントしたいと購入される方もいて、たくさんの良いリアクションが聞けたようです。今後のレーナさんの活動にもぜひ注目してみてください。

 
(左)Black Butterfly/(右)Bear in Spring ※切り紙作品
 
(左)Backyard/(右)Tiny ※切り紙作品

(左)KakigoriⅡ/(右)Pudding ※水彩画

【LEENA KISONEN(レーナ・キソネン)プロフィール】
フィンランドを拠点にアジア、ヨーロッパ、アメリカなど、世界各地に活躍の場を広げているグラフィックアーティスト。日常と空想、色彩と形状が調和した豊富なデザインが魅力。三越伊勢丹で販売している北欧菓子「FIKA」をはじめ、グーグル、オルビス、スナップチャット、パピルスなど、世界中のクライアント企業から支持されている。https://leenakisonen.com/

(c)2019 LEENA KISONEN
ライツマネージメント:(株)ブルーフォリオ

このページの先頭へ