(左から)本作の製作を担当したメルヤ・リトラ氏、マイヤ・イソラの孫で本作にも出演しているエンマ・イソラ氏、本作を手掛けたレーナ・キルペライネン監督
フィンランドのデザインブランド「マリメッコ」の伝説的デザイナー、マイヤ・イソラの知られざる人生を描いたドキュメンタリー映画『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』が、3月3日より公開中。
旅を愛し、旅先で出会った人々、町、自然など、見たもの、感じたもの全てをデザインに落とし込み、生み出してきたマイヤ・イソラ。色彩豊かなデザインやモチーフ、貴重な絵画を、アーカイブ映像で振り返るドキュメンタリーは必見。デザインパターンが誕生していく瞬間、その時のマイヤの心情を感じることができる作品です。
映画公開前に、フィンランドから本作を手掛けたレーナ・キルペライネン監督(以下レーナ監督)と製作担当のメルヤ・リトラ氏(以下メルヤさん)、マイヤ・イソラの孫で本作にも出演しているエンマ・イソラ氏(以下エンマさん)の3名が来日していました。
レーナさんとメルヤさんには、映画のストーリーに突っ込んだお話を、エンマさんには祖母マイヤ・イソラとの幼い頃の貴重なお話、マイヤのデザインがこれまでに愛される理由などを3名にお聞きしました。
――来日は皆さん初めてとのことですが、もうどこか出かけられましたか?(取材日は来日3日目)差し支えない範囲内で、行きたい場所はありますか?
メルヤさん:この(インタビュー)後、初めてフリータイムになります。楽しみにしているのは浅草です。
レーナさん:私は海の近くにある歴史的な街、鎌倉に行く予定です。
エンマさん:私は、(人気イラストレーターの)ヒグチユウコさんの展覧会(「ヒグチユウコ展 Circus Final End」4/10迄)に行きたいです。(取材当時)ちょうど東京でスタートしたばかりで、(日時指定制になっていたので)チケットが取れないかもしれませんが。
――お天気も良いのでフリータイム、楽しんでくださいね。さて、日本では、マリメッコは人気ブランドの一つで、フィンランド、北欧を代表するデザインブランドして認知されています。マイヤのデザイン(特にウニッコ)が、こんなにも日本で人気があるというのは、ご存知でしたか?どんなお気持ちですか?
(3人同時に「はい、もちろん。とても嬉しいことですね」と笑顔)
メルヤさん:本当に、心からとても誇りに思います。
レーナさん:日本とフィンランドは、シンプルなものを好むなど共通した感覚や意識があるから人気なんだと思います。
エンマさん:日本で愛されているというのは、とても特別な気がしますね。
――エンマさんは、祖母マイヤと母クリスティーナさんから直接、実践教育を受けてデザインを学んだそうですが、二人から学んだ大事なことはありましたか?
エンマさん:マイヤからは、ただ作るだけでなく、とにかく何でも“記録”に残すことが大事だと言われました。クリスティーナからは、リアリティを大事にすること。ナチュラルなものづくり。デザインに関してはそう言っていました。
メルヤさん:制作の際に多々資料を見たり、調べたり、聞いたりしたところでは、マイヤのデザインには遊び心があり、抽象的な表現が多かったのに対し、クリスティーナさんのデザインは、よりリアルさを追求されていたのではないでしょうか。
――祖母マイヤはどんな人でしたか?一緒に過ごして楽しかったこと、印象に残っている具体的な思い出やエピソードはありますか?
エンマさん:幼い頃、「マシュマロが食べたい」とマイヤに尋ねたところ、イチから作り始めたんですが、卵に砂糖を加え、フライパンで焼き始めたんです(笑)もちろん、味はマシュマロでもなんでもなく(笑)
当時はモノがない時代だったということもありますが、マイヤは、なんでも「全てのことにおいて、自分たちで作ろう」というマインドを持っていた人でした。
今回、来日するにあたり、母クリスティーナさんに宛てた大切なマイヤの手紙や葉書、日記などを持参してくれたエンマさん。また、なんと、マイヤからもらったというペンダントも着用してきてくれました。嬉しそうに笑みを浮かべながら見せてくれました。
――映画についてお聞きします。アーカイブ映像やナレーションで、とても静かに淡々と事実が綴られていますが、劇中でクリスティーナさんの当時の思いや気持ちなどには触れていません。あえて心理面には触れなかったのでしょうか?その狙い、意図は?
レーナさん:マイヤの物語なので、マイヤに集中したかったんです。もっと掘り下げることは可能だったんですが、クリスティーナの表情や顔を見たらわかると思います。なので、ミニマルに描きました。マイヤとクリスティーナがストックホルムで別れるシーンは、とてもエモーショナルな瞬間。あそこに思いが全てが集約されていると思います。
――皆さんにお聞きします。なぜマイヤのデザインは、これほどまで長く愛されていると思いますか?
メルヤさん:パターンを作り始めた時は戦後で、あるものといったらシンプルでグレーのような色味のない時代でした。マイヤは色彩を使いたかったし、それをみんなの家に置いてもらいたかったんです。どんな人の家にも、気軽にアートにアクセスしてもらいたいという思いで作っていたと思います。
レーナさん:ポップアートからインスピレーションを受けて、家や学校の一部、図書館など、大きなパターンが作られるようになりました。マイヤのパターンはインテリアに使われれるようになったのも大きいと思います。(マリメッコのファッションは、当時、デザイナーのヴォッコ・ヌルメスニエミが担っていました)
フィンランドに居ただけでは決して生まれていないパターン。いろんな文化が入っているのが魅力。
エンマさん:どの世代にも新しいと感じてもらえるデザインだから長く愛されているんだと思います。祖母から娘、孫へと伝え、何世代も持っている人もいる。代々受け継がれている。安心感があるのだと思います。
――映画を見る日本の皆様へ、ひと言メッセージを!
メルヤさん:女性はキャリアと家族のバランスに悩まされることが未だにありますよね。フィンランドの場合、もちろん昔に比べたら保障があったりするけれど。とにかく、罪悪感を持つ必要はないということを、マイヤの生き方から感じてもらえたら嬉しいです。
レーナさん&エンマさん:エンジョイ!楽しんでください。
――映画を見る日本の皆様へ、ひと言メッセージを!
メルヤさん:女性はキャリアと家族のバランスに悩まされることが未だにありますよね。フィンランドの場合、もちろん昔に比べたら保障があったりするけれど。とにかく、罪悪感を持つ必要はないということを、マイヤの生き方から感じてもらえたら嬉しいです。
レーナさん&エンマさん:エンジョイ!楽しんでください。
▼Hyvää Matkaa!で開催されたトークイベント
【イベントレポート】フィンランドより3名来日!『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』日本公開記念トークイベント
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<映画情報>
マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン
監督:レーナ・キルペライネン
出演:マイヤ・イソラ、クリスティーナ・イソラ、エンマ・イソラ
2021年/フィンランド・ドイツ/フィンランド語/100分/カラー・モノクロ/ビスタ/5.1ch/原題:Maija Isola 英題:Maija Isola Master of Colour and Form/字幕翻訳:渡邊一治/字幕協力:坂根シルック
後援:フィンランド大使館
配給:シンカ + kinologue
http://maija-isola.kinologue.com
2023年3月3日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開