昨年の東京国際映画祭で審査委員特別賞と最優秀女優賞に輝き、話題をさらったスウェーデン・デンマーク・ノルウェー3ヶ国による映画『サーミの血』が、この秋、劇場公開となります。
『サーミの血』は、1930年代、スウェーデン北部の山間部で暮らす先住民族サーミの少女の物語。父親がサーミ人、母親がスウェーデン人という、自身のルーツでもあるサーミの血を引く、アマンダ・シェーネル監督による長編デビュー作です。
サーミは、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの北部に居住する先住民族で、フィンランド語に近い独自の言語を話します。1930年代当時、サーミはスウェーデン語を強要され、同化政策の対象となり、劣等民族として差別を受けていました。
ラップランドの美しい自然の中で、母や祖父母、妹、トナカイたちと暮らしていた主人公のエレ・マリャは、妹を含む10名のサーミの子供たちと共に、親元を離れ、寄宿学校でスウェーデン語教育を受けます。成績優秀で、教師にも気に入られていたエレ・マリャでしたが、「この学校の子供たちは進学は無理」と教師に一方的に拒まれてしまいます。外の世界への憧れの気持ちと好奇心が抑えきれなくなったエレ・マリャは、学校から飛び出していきます。
アマンダ監督の祖父母もスウェーデン人になりたかったため、サーミ人であることを隠し、家ではサーミ語さえ話さなかったそうです。年配のサーミ人の多くがルーツを捨てスウェーデン人になった姿を目の当たりにして育った監督は、「自分の過去を捨てたサーミ人は、本当の人生を送ることができたのだろうか」という疑問が沸いてきました。
監督の親類の中には、自分もサーミなのにサーミを嫌う人もいるとか。離れていった者と留まった者との間にはわだかまりがあり、対立があるといいます。本作は監督の親類から発想を得た部分も大きく、今なおそういったデリケートな状況がまだ存在するそうです。
エレ・マリャを演じるレーネ=セシリア・スパルロクや、妹ニェンナを演じるミーア=エリーカ・スパルロクの姉妹は、ノルウェーに住むサーミ人。監督自身、北部サーミ語がわからないので、南部サーミ語を話せるサーミ人を探していたところ、スパルロク姉妹との奇跡的な出会いを果たしました。
また、本作に登場するサーミ人は全員本物のサーミ人。外国人から依頼される人種調査のための撮影などで懐疑的だった年長者のサーミ人には、監督とプロデューサーで慎重に話を重ねながら出演の許可をもらい、本作が完成しました。
※サーミ語は全部で9つあり、話す人口が最も多いのは北部サーミ語。南部サーミ語は少数とのこと。
作品の中のサーミ人を見て感じたのは、サーミの人々の強さ、生きる能力。空や風や大地と対話し、ナイフを巧みに操り、美しい民族衣装や細工が施された工芸品など、高い文明と独自の文化を持つ。サーミの人々はタフであるように親から教育されるのだとか。監督はトナカイ放牧で育った父親から、「泣くな」「涙はただの目の汗だ」と言われて育ったそうです。
リアリティあふれる美しい描写、ナチュラルな演技で高い評価を得たエレ・マリャ役のレーネ=セシリア・スパルロクの表情や眼差しに目が離せない『サーミの血』。9月16日より、新宿武蔵野館、アップリンク渋谷ほか全国順次公開です!
【ストーリー】
1930年代、スウェーデン北部のラップランドで暮らす先住民族、サーミ人は差別的な扱いを受けていた。サーミ語を禁じられた寄宿学校に通う少女エレ・マリャは成績も良く進学を望んだが、教師は「あなたたちの脳は文明に適応できない」と告げる。そんなある日、エレはスウェーデン人のふりをして忍び込んだ夏祭りで都会的な少年ニクラスと出会い恋に落ちる。トナカイを飼いテントで暮らす生活から何とか抜け出したいと思っていたエレは、彼を頼って街に出た──。
一時「バターコーヒー」が話題になりましたが、サーミ人は、「コーヒーチーズ」をいただくそうです。コーヒーの中にチーズ、これどうですか?ちょっと試してみたいですね!
サーミの血
監督・脚本:アマンダ・シェーネル
音楽:クリスチャン・エイドネス・アナスン
出演:レーネ=セシリア・スパルロク、ミーア=エリーカ・スパルロク、マイ=ドリス・リンピ、ユリウス・フレイシャンデル、オッレ・サッリ、ハンナ・アルストロム
2016年/スウェーデン、ノルウェー、デンマーク/108分/南サーミ語、スウェーデン語/原題:Sameblod
配給・宣伝:アップリンク
http://www.uplink.co.jp/sami/
(c) 2016 NORDISK FILM PRODUCTION
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予告編
https://youtu.be/9R5AasNNRUs
2017年9月16日(土)より、新宿武蔵野館、アップリンク渋谷ほか全国順次公開
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