9月14日より、東京国立近代美術館工芸館にて開催中の「インゲヤード・ローマン展」。前日13日に行われた記者発表会に、主役のインゲヤード・ローマンさんが登場!記者発表会の模様と会場の様子、本展の見どころをお届けします。
日々の暮らしの中で使われることにこだわったガラス器や陶磁器を手がけるスウェーデンのデザイナー、インゲヤード・ローマン。本展では、2016年にスウェーデン国立美術館で開催された「インゲヤード・ローマン展」をベースに、初期から2017年の最新作まで約180点を紹介。自身でセレクトした代表作を中心に、陶磁器、ガラス、企業コラボアイテムなど、彼女のこれまでの活動を網羅した内容となっています。
▼インゲヤード・ローマン展とは?
スウェーデンの国民的デザイナー日本初の展覧会「インゲヤード・ローマン展」(9/14-12/9)
POTTERとDESIGNER
追求してきた2つの側面を感じることができる展覧会
1982年に家族で日本を訪れたときから、日本とのつながりを強く感じていたというインゲヤードさん。一昨年の陶器(有田焼創業400周年事業「2016/プロジェクト」)と、昨年のガラス(木村硝子店)という2つのプロジェクトへの参加は、彼女にとって非常に思い入れのある大きな事だったそうです。
特に、木村硝子店とは長年親交を深めていたものの、スウェーデンの大手ガラスメーカーとの契約があったため、他メーカーのガラス製品を制作できずにいましたが、オレフォスとの契約が終わり、木村硝子の製品を作ることができたというのが、昨年の大きな出来事だったと明かしました。
「日本語は全くできないけれど、ものづくりを通じて職人と語りあえることができる、心を通わせることができます」と話すインゲヤードさん。手に持っている知識を使い、思考し、研ぎ澄まされた集中力でロクロを見つめるクラフトマンの顔と、他の人とのコミュニケーション、人のことを知っていくことがとても重要なガラスデザイナーという顔。ものの作り方は全く異なるけれど、自分自身で追求してきたこの2つの側面が本展で披露されているといいます。
1968年にガラスに携わるようになり、その後potter(陶工)として焼き物に専念。「自分が望むシンプルなものがまわりに理解されなかったり、興味を持ってもらえなかったり。振り向いてもらえなければ、行き詰ってしまう。でも、カラフルな色づかいや、奇想天外なものを作ることが私は嫌だったんです」と、当時ガラスの世界からいったん身を引いたそうです。
それから10年ほど、potterとして家族を支えつつ、1981年に再びガラスの世界へ。ここで自分に約束したことは、「これからは自分が使いたいもの、自分の好きなものだけを作ろう」ということ。ここ数年の自身の活動も、この展覧会を通じて伝えることができたと思うと嬉しそうなインゲヤードさん。
そんなインゲヤードさんのものづくりの世界をたっぷりと堪能できる本展の見どころはまず、彼女の特徴ともいうべき多くのガラス作品。気泡が入っていたり、吹きガラスの竿の跡が付いているなど、スウェーデンの工房による手のぬくもりを感じる味わい深い作品や、陶芸では、老舗の窯元と手がけた有田焼とグスタフスベリ向けに作った器と比較した展示なども楽しめます。近年では建築プロジェクトに関わったりと、さらに活動の幅を広げています。
各展示テーブルにはモニターが設置されており、インゲヤードさんのインタビュー映像を見ることができます。時間によって光の入り方が異なる自然光を取り入れた会場展示、ガラスケースはいっさい使わず、展覧会のために特別に作られたさまざまな素材のテーブル20台に露出展示という斬新なスタイル。暮らしの中でどんな風に見えるのか、来場者が想像力を膨らませて楽しむことができます。
「インゲヤード・ローマン展」は、12月9日(日)まで、東京国立近代美術館工芸館にて開催中。
日本・スウェーデン外交関係樹立150周年
インゲヤード・ローマン展
会期:2018年9月14日(金)~2018年12月9日(日)
会場:東京国立近代美術館工芸館
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日、10月9日(火)※10月8日は開館
http://www.momat.go.jp/cg/exhibition/ingegerd_2018/
<展覧会フォトギャラリー>