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【展覧会レポート】日本初開催!アラビアで約50年活躍したフィンランドのアーティスト、ルート・ブリュックの展覧会(6/16迄)




今年2019年で没後20年、1940年代から60年代に活躍したフィンランドのアーティスト、ルート・ブリュックの展覧会「ルート・ブリュック  蝶の軌跡」が東京ステーションギャラリーにてスタートしました。

これまで日本で深く紹介されることがなかったアーティスト、ルート・ブリュック。本展では、約 200 点のセラミックやテキスタイルなど、彼女の多彩な仕事を紹介しています。

プレス内覧会では、数多くのブリュック作品を所蔵するフィンランドのエスポー近代美術館のピルビ・カルハマ館長より、「日本という共通項のある国で、作品を見ていただける機会。大変嬉しく思います」と挨拶がありました。



エスポー近代美術館のピルビ・カルハマ館長


色彩はカラフルからモノクロームへ
平面から抽象的かつ立体的な表現へ

ルート・ブリュックは、スウェーデンのストックホルムにて、オーストリア人の父、フィンランド人の母の間に生まれました。両親の別居後、6歳ごろのときにフィンランドへ。1942年からは、フィンランドのアラビア製陶所・美術部門専属アーティストとして活動したブリュック。驚いたことに、アラビアに入る時、彼女は陶芸の経験が全くなかったそうです。それから約50年も在籍したブリュックは、ここでの陶芸との出会いから才能を開花していきます。

3階の展覧会会場で初めに出会うのは、小さな陶のピースが並んだインスタレーション。これは、ルート・ブリュックと夫でデザイナーのタピオ・ヴィルカラの娘で現代アーティストのマーリア・ヴィルカラが、母・ルートが遺した陶のピースを使って手がけた作品「心のモザイク」。ブリュック生誕100周年記念展として、2016年にエスポー近代美術館にて開催された際にも12メートルにおよぶ大作を創り上げたそうです。日本での作品は、日本で古くから収納に用いられてきた茶箱を用いて積み重ねた日本バージョン。



「タイルを通して眺める、言葉のない年譜」とマーリアさんが言うように、この作品がプロローグであり、ブリュック作品の全体図がビジュアルで解説されたかのよう。全体を見て、またここに戻ると、ブリュックの膨大な仕事量への理解がより深まります。



ブリュックの初期に見られる陶板は物語性のある愛らしいイメージ。上から引っ掻いて下の色を出す陶芸で用いられる「描き落とし技法」で制作した作品。通常、部分的に使用される技法のようですが、ブリュックや同じアラビアに在籍していたビルゲル・カイピアイネンはこの技法を作品全体に使うことを好んだそうです。

陶板という平面から、立体作品も手がけていきます。釉薬を厚く重ねて立体感を出したり、ガラスのような風合いを出したりと、さまざまな表現を模索。宗教色のある作品は、子供の頃からイタリア文化や芸術に興味があったこと、夫・タピオと何度も旅行に行ったこともあり、ルネッサンスアートにも影響を受けています。



2階に降りると、展覧会のタイトルにもなっている蝶の作品がずらり。ブリュックの父が蝶類の研究者だったということから、蝶に着目した作品を作るようになったとか。変化を意味する蝶のように、ブリュックの仕事も転換期を迎えます。組み換え可能なモジュラーシステムの作品を作り出していきます。



初期の頃は、陶板といった1つの大きめのピースの中に世界を描いたり、かたどったりした作品が見られましたが、徐々に小さな陶のピースを制作するようになり、それを組み合わせて、より抽象的でダイナミックなレリーフの大作となっていきました。

こだわりにこだわっていた色彩も、晩年はほぼ色がなく、光のようになっていきます。これは、彼女の中にある心の平安、安らぎを表しているかのようにも感じます。

ブリュック作品の華麗なる変遷をたっぷりと見ることができる貴重な機会。ぜひお見逃しなく。東京ステーションギャラリー会場は、6月16日(日)まで。その後は、2019年から2020年にかけて、伊丹市立美術館、伊丹市立工芸センター、岐阜県現代陶芸美術館ほか全国数会場にて開催予定です。

▼ルート・ブリュックの長女で、アーティストのマーリア・ヴィルカラさんのインタビューもあわせてどうぞ!
【特集】ルート・ブリュックの長女が語る自分のこと、家族のこと マーリア・ヴィルカラ インタビュー



ルート・ブリュック  蝶の軌跡

会期:2019年4月27日(土)~6月16日(日)
会場:東京ステーションギャラリー
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
開館時間:10時~18時(金曜は20時まで開館。入館は閉館の30分前まで)
休館日:6月10日をのぞく月曜日
観覧料:一般1,100円、高校・大学生900円、中学生以下無料
※20名以上の団体は、一般800円、高校・大学生600円
※障がい者手帳等持参の方は100円引き(介添者1名は無料)
※展示室は一部撮影可能。
公式ウェブサイト:http://rutbryk.jp

<巡回先情報>

2019年~2020年にかけて、伊丹市立美術館、伊丹市立工芸センター、岐阜県現代陶芸美術館ほか全国数会場にて開催予定。

<展覧会ギャラリー>













(2019年09月06日更新)
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