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【展覧会レポート】後世に大きな影響を与えたフィンランドの建築家エリエル・サーリネンの展覧会(7/3-9/20)




フィンランドのモダニズムの原点を築いたエリエル・サーリネン(以下エリエル)と、彼が手掛けた数々のデザインや建築を紹介する「サーリネンとフィンランドの美しい建築展」が、パナソニック汐留美術館にて開催中。エリエルが渡米する前までの“フィンランド時代”(※)にスポットを当て、図面や写真、家具や生活のデザインといった作品資料が展示されていました。

(※)サーリネンのフィンランド時代は、共同設計事務所仲間3人のうちのリンドグレンが事務所を離れる1905年までを前期、1907年までのゲセリウスと2人の時代を経て、個人で活動した1923年の渡米までが後期。

後に活躍する息子エーロ・サーリネン、チャールズ・イームズ、フィンランドデザインの巨匠の一人といわれるアルヴァ・アアルトといった、後世のデザイナーや建築家に多大な影響を与えたエリエル・サーリネン。展覧会の見どころをお届けします。

展覧会はまず、エリエルの故郷フィンランドについて。ロシアから独立し、1917年に建国を果たしたフィンランド。そのナショナリズムの高まりは、独自の文化や芸術を築こうとする情熱に繋がり、エリエルをはじめとする芸術家たちにインスピレーションを与えた民族叙事詩『カレワラ』に関する展示からスタートします。





一躍スポットを浴びることになったのは、1900年のパリ万国博覧会。エリエルは、共同設計事務所仲間のゲセリウス、リンドグレンとともにフィンランド館の設計を担当しました。パビリオンは、周囲の他国ものと比べて小さなパビリオンだったにも関わらず、建築や展示物のディテールを称賛され、国際的に高い反響を得ました。



エリエルたちが設計したフィンランド館は、中世の教会のような外観で、クマやカエル、リスといった自然界の動物たちの装飾が施されていました。会場にはCGと新しく制作された模型が展示されています。



エリエルの建築の原点ともいえるヘルシンキ西部に建てられたヴィトレスクは、エリエル・サーリネン、ヘルマン・ゲセリウス、アルマス・リンドグレンによって設計された共同設計事務所兼共同生活の場でした。

ヴィトレスクは、自然の中の暮らしの理想を体現したもので、3人のうち唯一エリエルのみ、渡米するまでの約20年間、自邸兼アトリエとして家族と住み、渡米後も毎年帰省していた愛着のある場所として知られています。

会場では、メインルームや寝室で使われていたエリエルがデザインした家具などが展示されており、ヴィトレスクの雰囲気を感じることができます。



住宅建築にも快適な空間を追求したエリエルは、室内装飾をはじめ、トータルでのデザインを意識しました。共同設計事務所で手掛けた集合住宅や商業ビル、個人の邸宅の写真や図面が披露されています。相手にコンセプトを伝えるのに役立ったという水彩で描かれたエリエルの芸術性の高い透視図にも注目です。



また、テーブルウェアやテキスタイル、家具といったデザインも数多く手掛けたエリエル。空間の一部としてのテキスタイルデザインに関心を持ち、カーテンやテーブルクロス、クッションといった小物のテキスタイルもデザインし、それをフィンランド手工芸協会が製造。バラをあしらったロマンチックで愛らしいデザインを見ることができます。



妻のロヤ・サーリネン(共同設計事務所仲間ゲセリウスの妹にあたる)はパリで彫刻を学び、建築模型を制作するなど、夫エリエルを支えた人物。テキスタイルデザインにも励み、クッションやカーペットが展示されています。渡米後も公私にわたり重要な役割を果たした存在でした。



各国で近代都市が出現し、公共建築や商業施設、集合住宅を繋ぐ交通網として鉄道の駅が次々に建設された20世紀初頭、エリエルは個人名でヘルシンキ中央駅の駅舎の1等を獲得。駅周辺の整備にも携わり、ヘルシンキ市全体の都市計画に繋がっていきます。エリエルがデザインした駅のレストランの椅子なども展示されています。



すでにフィンランド国内外で名前を知られていたエリエルは、1922年に実施された米日刊紙「シカゴ・トリビューン」の本社ビルの国際コンペに参加し、2等を獲得。「世界で最も美しく壮大なオフィスビル」というお題で挑んだコンペでの建築は実現しなかったものの、高い評価を得て、これをきっかけに家族と渡米。新しい建築人生がスタートすることになります。

これまでに高層のオフィスビルを設計した経験がないにも関わらず、外国人でありながら、アメリカ人の理想主義に訴えるような洞察力を持ち、アメリカの建築家が思いつかなかったような賢明な方法で問題を解決したと絶賛されました。



渡米後、建築教育に力を入れたエリエルの教えは、息子のエーロに継承されます。父を深く尊敬していたエーロは、1950年にエリエルが亡くなるまで父と共に働きました。自動車交通やターミナルへの関心は、都市計画家でもあった父エリエルの影響が見えます。

また、盟友チャールズ・イームズと共に家具デザインも手掛け、才能を発揮。アメリカのミッドセンチュリーを代表する建築家の一人となったエーロの「ウーム・チェア」や「チューリップ・チェア」を会場で見ることができます。


フィンランド新政府がエリエルにデザインを依頼した紙幣。


展覧会図録やオリジナルポストカードやクリアファイル、関連グッズも。

サーリネンとフィンランドの美しい建築展
会期:2021年7月3日(土)~9月20日(月)
会場:パナソニック汐留美術館(東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F)
開館時間:10時~18時(入館は17時30分まで)
※9月3日(金)は夜間開館20時まで(入館は19時30分まで)
休館日:水曜日、8月10日~13日
入館料:一般800円/65歳以上700円/大学生600円/中・高校生400円/小学生以下無料
※障がい者手帳提示の方、付添者1名まで無料で入館可能。
https://panasonic.co.jp/ls/museum
※新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、日時指定予約サイトにて来館日時指定予約をしてください。詳細はホームページを参照。

▼巡回先(予定)
2021年11月6日(土)~12月19日(日)いわき市立美術館
http://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1617095340692/index.html

<サーリネン親子の誕生日を祝おう!>
Onnea!みんなで祝おうエリエルとエーロ、サーリネン親子の誕生日、8月20日!
エリエル・サーリネンと息子エーロ・サーリネンの誕生日は、なんと、共に8月20日。親子で同じ誕生日なのだそう!お誕生日メッセージをSNSで投稿して一緒にお祝いしてみませんか?会場内にも特設撮影コーナーが設けられています。※Onnea(オンネア)はフィンランド語でおめでとうの意味。
ハッシュタグ:#サーリネン誕生日 #サーリネン親子おめでとう

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(2021年07月19日更新)
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