「ムーミン」の原作者として知られるトーベ・ヤンソンの半生を描いた映画『TOVE/トーベ』が、いよいよ10月1日より公開されます。
昨年、本国フィンランドで公開されるや、スウェーデン語で描かれたフィンランド映画として、史上最高のオープニング成績を記録。公開から7週連続で興行収入ランキング第1位になるなど、ロングラン大ヒットとなった話題作です。
日本でも長きにわたり愛されるムーミンの物語。時に自分を見つめなおすきっかけをもたらし、考えさせられ、生きるヒントをくれるなど、いつの時代も色褪せることなく、我々を魅了する物語、そして、そのキャラクターたちは、トーベの人生の中でどのように生まれていったのでしょうか。
映画『TOVE/トーベ』では、アートとムーミンの創作過程で苦悩した、トーベの30代から40代前半までの情熱的な恋愛や交友関係が鮮やかに描かれています。紙があれば走り書きをし、描きためていたムーミンのキャラクターに、命が吹き込まれ、トーベの人生とともに躍動していく瞬間にワクワクさせられる映画です。
第二次世界大戦下のフィンランド・ヘルシンキで、画家のトーベ・ヤンソンは「ムーミントロール」の物語を描き始めます。戦争が終わると、彼女は爆撃で廃墟と化したアトリエを借り、本業である絵画制作に集中。しかし、著名な彫刻家でもある厳格な父ヴィクトルとの軋轢、保守的な美術界との葛藤の中で、悶々とした日々を送っていました。
そんな中、舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラーと出会い、激しい恋に落ちます。ある日、トーベの部屋で見つけたムーミンのイラストを見て、ムーミンの舞台劇の話を持ち掛けたヴィヴィカ。そこから、ムーミンの物語、トーベ自身の運命が大きく動いていきます。(物語に出てくるトフスランとビフスランは、トーベとヴィヴィカがモデルになっています)
<フィンランドにおける同性愛>フィンランドでは、1894年に制定された刑法において同性愛は犯罪とされ、最大で懲役2年の実刑が課されていました。1971年になり、同性愛が非犯罪化され、1981年に疾病分類リストから削除、2017年には同性婚が合法化されました。同性愛が犯罪だった時代、トーベとヴィヴィカはトフスランとビフスランと呼び合い、お互いにしか通じない言葉や暗号で愛を伝えあったそうです。ムーミンの物語に登場するトフスランとビフスランが、自分たちだけの独特なことばで話しているのも、ここからきています。
この映画を手掛けたザイダ・バリルート監督は、トーベをリサーチしていくうちに、彼女が持つ情熱とエネルギー、強い感情と表現力、そして彼女の型破りな考え方に大変驚いたといいます。トーベがいかに情熱的な人物で、自由を愛していたかを知ってもらいたいと、彼女の知られざる側面を可能な限り忠実に、繊細に描くことを意識したそうです。
トーベ・ヤンソンを演じたのは、女優のアルマ・ポウスティ。アニメーション映画『
劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』(2014)では、フローレン(スノークのおじょうさん)の声を担当しました。また、スウェーデン語で上演されるヘルシンキのスウェーデン劇場にて、2014年のトーベ・ヤンソン生誕100周年を記念して制作された舞台『トーベ』で、若かりし頃のトーベ・ヤンソンを演じています。
劇中のトーベを見ていて、彼女は、真っ直ぐで愛情深く、人を惹きつけ、立場や性別の壁をすんなり取っ払ってしまう。トーベの周りの人たちは、常に彼女にとってインスピレーションの源で、彼女自身もまた、周りに大きなインスピレーションを与える存在でした。強く、冷静で、何が自分のしたいことなのかをわかっているトーベ。それが結果、縛られることなく、“自由を愛したトーベ”に繋がっているように思えます。
『TOVE/トーベ』は、10月1日(金)より、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開!
TOVE/トーベ出演:アルマ・ポウスティ、クリスタ・コソネン、シャンティ・ローニー、ヨアンナ・ハールッティ、ロバート・エンケル
監督:ザイダ・バリルート
脚本:エーヴァ・プトロ
2020年/フィンランド・スウェーデン/カラー/ビスタ/5.1ch/103分/スウェーデン語ほか/日本語字幕:伊原奈津子/字幕監修:森下圭子/レイティング:G/原題:TOVE
協力:ライツ・アンド・ブランズ、ムーミンバレーパーク
配給:クロックワークス
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2021年10月1日(金)より、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー▼関連記事
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