左からソフィア・ヤンソン氏(ムーミンキャラクターズ社代表)、ヨンナ・ウィベリウス氏(フィンランド
貿易局ライフスタイルプログラムディレクター)、木村正裕氏(フィンランド大使館上席商務官)
11月7日から9日まで、東京ビッグサイトで開催された「IFFT/インテリア ライフスタイル リビング」。前編では、特別企画エリアで出会ったノルウェーデザインと、デンマークデザインを紹介しました。
▼前編はこちら
【特集】IFFT特別企画「THE HOTEL」の北欧ブースを直撃!注目の北欧デザインを探る!IFFT/インテリア ライフスタイル リビング(前編)
後編の今回は、8日に大盛況の中、開催されたムーミンキャラクターズ社のソフィア・ヤンソンさんのトーク。「フィンランドのライフスタイルに育まれたデザイン」をテーマに、フィンランドのライフスタイルから生まれたデザインを、ヤンソン一家の話を交えてお話していただきました。また、フィンランド企業が集結したフィンランド・パビリオンの様子もお届けします。
フィンランドデザインは、自然との対話、自由な時間から生まれる
「フィンランドのデザインは、自然と対話することによって生まれた」と話すのは、フィンランド貿易局ライフスタイルプログラムディレクターのヨンナ・ウィベリウスさん。アルヴァ・アアルトの建物やイッタラ、アラビアの工芸品からも感じるように、自然から強く影響を受けたことがわかります。
また、「創造は自由な時間から生まれる、それが作り手のインスピレーションになっている」という話もあり、これは、これまでの取材や、フィンランド人デザイナーにインタビューしたときに感じていたことで、ものすごく腑に落ちました。
どんな素材を使って作るのでしょうか。フィンランドには、湖(水)があり、森があり、木(木材)があり、石もあります。特に石は、トーベ・ヤンソンにとても大きな影響を与えたそうです。(トーベはクルーヴハルの小屋に石を集めて並べていましたよね)
具体的にはどんなライフスタイルから、フィンランドのデザインが生まれてくるのでしょうか?ヤンソン一家の四季の過ごし方に、そのヒントが隠されているかもしれません。ソフィアさんはまず、「冬」から話を始めました。
■冬――家の中で家族と一緒に過ごす。
暗くて寒い冬、ヤンソン一家は屋内で過ごしました。トーベは母と一緒に絵を描いたり、読書もたくさんしていたとか。読書はトーベが作家になった影響ともいえるよう。また、冬は家族でテーブルを囲んで一緒に過ごします。1つのランプを共有して母と寝る。ヤンソン一家にとって、なんといっても家族が中心。
■春――待ちに待った屋外へ。島に渡る準備を。
ヤンソン一家は外へ出ていきます。アーキペラゴ(群島)で過ごします。島につくと、自由を感じる。シンプルでゴミゴミしていない。水も電気もなく不便。でも360度の風景を楽しみます。ここから、短くとも、ギュッと凝縮した夏を過ごします。トーベのイラストレーションに、貝殻など、海と繋がっているものが多いのは、島での暮らしが影響しているといえます。
■夏――屋外で家族と過ごす。一人になる時間も大切。
ベリーがたくさんあふれる季節。いろんな種類のベリーがあります。水の中に入るトーベの写真からは、体で自由を感じて楽しんでいるのがわかります。島の岩盤の上に自然に抱かれる形で家族で寝転がっています。夏は外で家族と過ごします。
また、さまざまなものを手で作ります。そういった高い技術を持っています。トーベの母は、樹皮や石でおもちゃを手作りしました。トーベたち兄弟のために、小さな風景を作り上げます。トーベの弟(ソフィアさんの父)ラルスは、植物や昆虫を採集していました。都市から離れて田舎で過ごします。
みんなで一緒にいることも必要だけど、一人になって静かに何かものを作るということも大切。一人になる、ということに敬意を表する。これも大切。
■秋――天候が荒れる、変化がインスピレーションとなる。
冬のための準備をします。濃い色の空が広がり、木々が紅葉し始めると、ヤンソン一家は徐々に屋内へと移動します。嵐がくる前にボートをしまったり、つないでおきます。季節が変わると、天候が荒れやすくなる。変化が起こる。これがまた、トーベにとって、インスピレーションとなったようです。
ボートはフィンランド人にとって、とても大切なもの。理由は、半島や島、湖などで移動に必要だから。フィンランド人はボートを作る能力を持ち合わせています。
外が寒くなるにつれ、徐々に色がなくなっていくため、屋内はできるだけ温かい色に。クルーヴハルの小屋の中も、オレンジなど温かい色を使っています。
ソフィアさんのお話を聞いていると、ムーミンの物語を読んでいるかのような感覚に。四季や自然に逆らわず、自然の声に耳を傾け、ともに生きる。厳しければ、いかに楽しく明るく過ごせるか、そのためにはどうすればいいのか。常に自然と自分に問いかけながら。フィンランドデザインが生まれる背景は、自然との対話と、全身で自由を感じる時間、そして、家族と過ごす時間というのも、大切な要素のようです。
フィンランド大使館上席商務官の木村さんは、「フィンランドと日本には、デザインコンセプトに共通点が見られる」といいます。シンプルで機能的で美しいデザイン。IFFT/インテリア ライフスタイル リビングでは、インテリアを中心としたデザインを、表参道では、ほぼ同時開催で、ファッションを中心としたデザインを披露しました。
この第1回となる「フィンランド・ライフスタイル・ウィーク」は、フィンランド貿易局が企画したもの。木村さんは、「フィンランドの人のライフスタイルを体験したり、感じられる展示にしたい」と、好評であれば来年以降の開催の可能性を示唆しました。来年も期待!
IFFT/インテリア ライフスタイル リビングに現れたフィンランド・パビリオン。見てまわっていると、フィンランドデザインは、素材や、製作に関わる人、思想、精神をとても大切にしていると感じました。
19のブースから、5つのブースをピックアップしてご紹介!
サウナ、スパ、テラス、園庭など、屋内外で使用できる木製家具メーカー「EcoFurn(エコ・ファーン)」。そこにあるだけで「自然」との距離がグッと近く感じるデザイン。厳選された木材とロープのみで作られており、座ると自然に体にフィットしてくれる優れもの。硬いはずの木なのに、まるでハンモックに包まれたような感覚。http://www.ecofurn.eu/
ワクワクするようなグラフィックが目に飛び込む「MORE JOY(モア・ジョイ)」のスポンジワイプに思わず釘付け。モダンな北欧パターンは、飾ってインテリアにしても素敵。100%再生可能な材料で出来ており、長持ちするとか。写真はデザイナー兼CEOのSusannaさん。展示されているスポンジワイプのデザインすべて彼女が手がけています。http://www.morejoy.fi/
イラストレーターによるアートプリントを日常に。さまざまなクリエーターとコラボするなど、鮮やかな色使いとデザインにすでにファンも多い「Kauniste(カウニステ)」。秋の新作は、スタッフさんが着けているエプロンや壁のファブリックパネルのデザイン「Potpourri(ポップリ)」。クッションや靴下、iPhoneケースやキッチンタオルにいたるまで、暮らしの中でテキスタイルを取り入れる楽しみを教えてくれます。http://www.kauniste.com/
テーブルウェアシリーズ「ティーマ」やカルティオグラス、オイバ・トイッカによるバードなど、普段づかいのシンプルで機能性を重視したものから、アート色の強いプロダクトまで、幅広く扱う「iittala(イッタラ)」。Issey Miyakeとのコラボアイテムも発表し、要望の多かった折りたためるトートバッグの日本での発売が決定したようです。http://www.iittala.com/
2017年、埼玉県飯能市にある自然豊かな宮沢湖を中心とした広大なエリアに、ムーミンの世界や北欧の雰囲気を体験できる施設「メッツァ」がオープン予定。ムーミンゾーンと、誰もが気軽に楽しめるパブリックゾーンの2つのゾーンで構成されます。四季折々のパネルを見ているだけでワクワク。飯能市のふるさと納税の返礼品(ムーミングッズ)もディスプレイされていました。>>「メッツァ」について
IFFT/インテリア ライフスタイル リビング ※終了しました。
会期:2016年11月7日(月)~9日(水)
会場:東京ビッグサイト
※こちらの見本市は、B to B/商談見本市であり、一般来場者の入場は不可となります。
※会場内での写真撮影は不可。北欧区は撮影許可を得て撮影を行っております。
【特集】フィンランドデザインが生まれる背景とは?IFFT/インテリア ライフスタイル リビング(後編)
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