今年は本当にたくさんの北欧映画が公開されている中、劇中で重要なポジションを担う「音楽」がタイトルに入る映画が登場しています。
まず、フィンランド映画「白夜のタンゴ」が来て、その1週間後にスウェーデン映画「ストックホルムでワルツを」が公開。そして来年1月17日からは、ドキュメンタリー映画「
パンク・シンドローム」が、シアター・イメージフォーラムにて公開されます(ほか全国順次公開)。
【11/22公開】タンゴ愛をめぐる愛おしい人たちの音楽ドキュメンタリー「白夜のタンゴ」 【11/29公開】困難を乗り越えて頂点を極めた女性歌手の感動の実話「ストックホルムでワルツを」 本日は、こちらのテンションあがる作品をご紹介!
すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、「パンク・シンドローム」は、2013年10月に開催された山形国際ドキュメンタリー映画祭で市民賞を受賞し、話題となっているドキュメンタリー映画です。
(左から:カリ、ペルッティ、サミ、トニ)
フィンランド×パンク音楽×知的障害者のパンクバンド?!
清々しいほどに魅力的な個性を持った4人のパンク・ドキュメンタリー
足の爪を切られるが苦手!だけど愛する彼女を守りたい男前なヴォーカルの
カリ
ことあるごとに「服の縫い目」が気になる!心優しく涙もろいギターの
ペルッティ
お目当ての美人議員の選挙ボランティアに参加!プライドが高いバンドの頭脳ベースの
サミ
両親と一緒におうちに居たい!可愛い表情に目が離せない最年少ドラムの
トニ
知的障害を抱えるこの 4 人のパンクバンド「
ペルッティ・クリカン・ニミパイヴァト」の日常生活からレコードデビュー、海外ツアーの様子が、寄り添うようにていねいに、誠実に描かれた作品です。
「精神科施設のメシはまるで豚のエサ」
「いつかグループホームを爆破してやる」
「少しばかりの敬意と平等が欲しい」
「施術師のバカ野郎 俺の時間を奪うな!」
といった、施設や社会への不満を、なんともストレートに歌詞に乗せ、叫ぶ彼ら。
ちょっぴり攻撃的にも聞こえますが、彼らの奏でる音楽に耳を傾け、自然と身を揺らせてリズムをとってみたくなるから不思議。
この映画は、2013年10月、山形国際ドキュメンタリー映画祭で「市民賞」を受賞。2014年2月、座・高円寺ドキュメンタリー映画祭ではクリエイター箭内道彦セレクションとして上映され大好評を博し、批評家のみならず、一般の観客の心をも鷲づかみにした話題作です。今年の
フィンランド映画祭2014 では公開に先駆け、プレミア上映されました。
バンドメンバー4人それぞれはもちろんのこと、背景に見えるフィンランドの施設環境の良さにも着目したいところ。また、バンドの指導者であり、よき相談役のカッレさんにも魅了されます。彼らの言葉ひとつ一つ、ていねいに最後までゆっくりと聞き、とにかく同じ目線で、上手く自分たちでやれるように、そっと見守っています。
笑い、嘆き、怒り、歓び。人間が持ち合わせるさまざまな感情をまっすぐにパンクに乗せて表現し、社会とのバランスをとっている彼ら。チラっと見え隠れするやさしげな笑顔や自信に満ちた表情に出逢うたびに、充実感が伝わってきます。叫ぶことのできる風土があるのは、たいせつなこと。彼らにしかできない叫び。
ヒトは欲する生き物。
欲することは、夢をもつことである、そこには希望がある。
期待すると、当然悲しみや怒りといった感情をを経験することもある。
そういうのが怖くて、避けて逃げているよりも、ガンガンありのままの自分たちの道を行く4人。パンクとともに。
それが生きていることなんだと。
彼らの生ライヴに行ってみたい!と思った方も多いはず!私もその一人。
「お涙ちょうだいの映画じゃないぜ」
いろんな垣根を、パンクで「ひょいっ」と吹き飛ばしてしまう魅力的な4人に、ぜひ会いに行ってみてくださいね!
パンク・シンドローム(原題:Kovasikajuttu)
監督:ユッカ・カルッカイネン、J-P・パッシ
フィンランド・ノルウェー・スウェーデン/2012年/フィンランド語/
カラー/ビスタ/DCP/英題:The Punk Syndrome
提供:新日本映画社
配給・宣伝:エスパース・サロウ
後援:フィンランド大使館
公式HP:
http://punksyndrome.net/ ©Mouka Filmi Oy
2015年1月17日、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開!
●ちょこっとノート(フィンランド社会政策研究者・山田真知子氏のコラムより)●
バンドメンバーはどんなところに住んでいるの?普段どうしてるの?彼らはそれぞれ自宅、またはグループホームやサポート付き住宅に住んでいます。日中は、1993年に設立されたNPOリュフトゥ(Lyhty ry)のワークショップに通い、演奏家としての仕事をしているそうです。ワークショップには音楽のほか、園芸、ラジオ放送、喫茶室、テキスタイルなどの活動があり、指導員のもとでそれぞれの能力を活かした活動が行われています。
多くの障がい者にとって理解が難しいといわれる「音符」。音楽はどうやって覚えているの?「フィギャーノート」という色と形を使った音符が発明されています。発明したのは、ヘルシンキで知的障がい者のためのレソナーリ音楽学校を開いているカールロ・ウーシタロ氏とマルック・カイッコネン氏。この学校では、フィギャーノートを使って楽器の演奏を教え、バンドを育成しています。この作品のバンドメンバーもレソナーリ音楽学校に通い、プロとして活動を続けています。