(C)Aalto Family
フィンランドが生んだ世界的建築家でデザイナーのアルヴァ・アアルト（1898-1976）が、今年生誕125年を迎えます。それを記念して映画『アアルト』が10月13日に公開されます！
また2023年は、アルヴァ・アアルトが手掛けた「スツール 60」が生まれて90年になる記念の年でもあります。人と環境に優しいデザイン、時代を超えて現代の生活にも溶け込む逸品はどのようにして生まれたのか。アアルトの知られざる素顔を知ることができる、お祝いムードの年にぴったりな作品になっています。
▼参考記事
近年、トーベ・ヤンソン、マイヤ・イソラなど、フィンランドの著名人をフィーチャーした映画が続々と公開されています。
マリメッコ伝説的デザイナーの人生を綴った『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』（2023年）
自由と愛に生きたムーミンの原作者トーベ・ヤンソンの素顔に迫る『TOVE／トーベ』（2021年）
アアルト作品といえば、アイコン的アイテムと言える「アアルトベース」といったプロダクトから、「ルイ・カレ邸」といった建築まで、数々のデザインや名建築を生み出したことでも知られていますが、彼のデザイナーとしての人生を突き動かしていたのは、アルヴァと同じ建築家であった最初の妻アイノの存在でした。
アアルト夫妻がどのような過程で数々の伝説を作り上げていったのか。手掛けた作品やプロジェクトを時系列で紹介しながら、夫妻の手紙のやり取りや、彼らを取り巻くキーマンたちの登場を通して、アアルト夫妻の関係性や心情などが鮮やかに感じられる作品。アアルト夫妻の作品をまた新たな視点で見ることができそう。
本作を手掛けたのは、長年アルヴァ・アアルトの映画を撮りたいと考えていたフィンランドの新鋭、ヴィルピ・スータリ監督。子どもの頃に、アアルトが設計したロヴァニエミの図書館が彼女の午後の隠れ家だったといい、「一歩踏み入れると、氷点下30度のような寒い日でも、建物の持つ温かさに受け入れられている気がした」と回想。アアルトの建築の虜になったスータリ監督は、アルヴァ・アアルトとは何者なのか、人生をともにした二人の妻はどのような人物であったのかを探求したいと思ったそうです。
家族写真、アルバム、過去のインタビュー、手紙といった数々の貴重な資料、そして徹底したリサーチを重ね、同世代を生きた建築家や、友人たちなどの証言を多数盛り込み、アアルトの素顔を浮かび上がらせました。
(C)Aalto Family
映画を見て、2021年に開催されていたアアルト夫妻にフォーカスした展覧会「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話」を思い出しました。この展覧会で、アイノの存在の大きさをまざまざと感じたのですが、本作で紹介されていた夫妻の手紙のやり取りを見ていると、アルヴァやアイノのキャラクターが浮かび上がり、とても身近に感じました。想像していたとおりだったり、意外な感じがしたり。アルヴァの肉声や映像も必見です。
シャイなフィンランド人のイメージとはちょっと異なるアルヴァの人懐っこさ、コミュ力の高さに驚き、自由に動き回るアルヴァをフィンランドからユーモアのある手紙の内容で監視（？）するアイノ。アアルトというと、アルヴァの一人称になりがちですが、アアルトは二人称で完成。二人のバランスの良さやコンビネーションも見どころの一つです。もちろん、後妻でアルヴァの晩年の仕事を支えたエリッサのことも忘れてはいけない大きな存在です。
▼参考記事
【展覧会レポート】共通の眼差しで歩んだ夫妻の25年に迫る！「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」展（2021/3/20-6/20）
時代を超えて今の我々の時代の生活にも溶け込むアアルト・デザイン。名作が生まれた背景、貴重なエピソードも見逃せません！
映画『アアルト』は、2023年10月13日より、ヒューマントラストシネマ有楽町、UPLINK吉祥寺、シネ・リーブル梅田、伏見ミリオン座 他全国ロードショー！
アアルト
監督：ヴィルピ・スータリ（Virpi Suutari）
制作：2020年
配給：ドマ
宣伝：VALERIA
後援：フィンランド大使館、フィンランドセンター、公益社団法人日本建築家協会
協力：アルテック、イッタラ
2020年／フィンランド／103分／原題：AALTO
https://aaltofilm.com/
(C)FI 2020 - Euphoria Film
2023年10月13日より、ヒューマントラストシネマ有楽町、UPLINK吉祥寺、シネ・リーブル梅田、伏見ミリオン座 他全国ロードショー
＜劇場トークイベント決定＞
■10月13日(金)
登壇予定者：林アンニ氏（アルテック）
劇場：ヒューマントラストシネマ有楽町
■10月21日(土)
登壇予定者：岡部三知代氏（公益財団法人ギャラリーエークワッド 館長）
劇場：アップリンク吉祥寺
■10月28日(土)
登壇予定者：ラウラ・コピロウ氏（フィンランド大使館商務部）
劇場：東京都写真美術館ホール
