●16歳で単身フィンランドの高校へ留学した高橋絵里香さんに直撃!yes/noクエスチョン●
- ホームシックはあった?「なかったです!家族には会いたかったですが」
- 差別的なことや嫌なことを言われたり、されたことは?「これもないですね!」
- ロヴァニエミには“なまり”がある?「これは・・・あります!ロヴァニエミなまりのフィンランド語を話します(笑)」
- 著書「青い光が見えたから―16歳のフィンランド留学記(講談社)」ですでに綴られていますが、16歳でフィンランドのロヴァニエミの高校へ留学。はじめてフィンランドに降り立ったときの気持ちなどを今一度教えていただいてもいいですか?
高橋絵里香さん(以下、絵里香さん):今でも驚くほど腹が据わっていたと思います(笑)当時は北欧関連、フィンランドに関する書籍が少なく、情報集めに苦労しましたね。とにかくムーミンやフィンランド関連の書籍をたくさん読んで、イメージを近づけていきました。高校を見学するために初めて家族とフィンランドを訪れたのですが、そのときの印象がものすごく良かったんです。留学しようとしていた高校に、日本に留学していたという女の子がいたんです。これには驚きました!まさかロヴァニエミに日本に馴染みのある人がいるとは!その出会いがとても大きく、フィンランドをグンと身近に感じるようになりましたね。そのあと一人でフィンランドに来たときは、心のどこかで「なんとかなるだろう」と、フィンランドに対する安心感、根拠のない確信みたいなものがありました(笑)
- ロヴァニエミの高校生からオウルの大学生に進学されました。この14年間、絵里香さんが出会ったフィンランド人の友人や仲間たち、フィンランドでの日常の暮らしから、特に強く感じたフィンランドの特徴や印象を教えていただけますか?
絵里香さん:まずは教育ですね。クラスメートや友人を見ていて、フィンランドの教育、この国の根っこの部分に興味を持つようになりました。人との付き合い方は、合わない人と無理して付き合うことはしないけれど、小学生の頃から、人と協力して力を合わせて、同じ目的のために共同作業ができる人間になれるように、という教育を受けているんだなと感じました。たとえば、一つひとつ異なる形のブロックを組み合わせるように、一人ひとりの得意・不得意を上手く合わせながら、大きな効果を生めるように、一人ひとりの「個」を伸ばしていく教育です。
コラムの仕事がきっかけで小学校4年生を1年間見る機会があったのですが、そこの校長先生の言葉がとても印象的で心打たれました。「1年間、みなさんはたくさん遊び、学び、努力をし、そして成長しました。みなさんには、この夏休みを楽しむ権利があります」という、夏休みに入る前に子供たちへ伝える校長先生の言葉です。どうして夏休みはあるのか、どうしてこれが必要なのか、子供だからわからないだろうではなく、一つひとつ、物事をていねいに説明するんですよね。幼児の頃からそういう傾向がうかがえます。
- とてもシンプルで響く言葉ですね。フィンランドをはじめ、北欧の人は、子供だから、ではなく、きちんと一人の人間として向き合って話をしているのを感じます。他に「フィンランドならでは」といった気づきはありますか?
絵里香さん:国民性でしょうか。男女問わず、さりげなく気を使える人が多いかもしれません。たとえば、今私は大学でフットサルをしているんですが、もちろんフィンランド人もいれば、外国からの交換留学生もいて、その“お国柄”が出るんですよね(笑)自己主張が強くプレーを代わらない人もいて。そんなとき、フィンランドの人は男女問わず、みんなが平等にプレーできるよう配慮するんですよ。そういった姿に遭遇したとき、自分がまったくフィンランド語ができなかった頃のことを思い出します。自分の気持ちを理解し、汲み取ってくれた先生やクラスメートたちに、自分はどれだけ配慮してもらっていたんだろう・・・と。自己主張する必要がなかったほど、親切にしてもらいましたね。恵まれていたと思います。
- フットサルに見る、世界絵図。これは見てみたい!(笑)大学生活を満喫されている絵里香さんですが、今後どんな勉強をして、どんな職業に就きたいとお考えですか?
絵里香さん:フィンランドで中学・高校の先生を目指して勉強中です。専攻は生物学で、副専攻が地理学と教育学です。地理と生物はフィンランドでは一緒に習うんですよ!意外ですよね。社会科と理科の分野を一緒に。ときには、教科のボーダーラインを取っ払って授業をすることもあるんです。中学校の教育実習も経験しました。
- フィンランドで先生をやる、というのは、ご苦労もあると思いますが・・・?
絵里香さん:確かに遠い国から来て、フィンランドで地理・生物の先生をやること。それは日本人でなくてもいい教科かもしれません。でも、ある先生から、「エリカが教壇に立つこと自体に意味があるんですよ。そのことが子供たちの視野を広くし、いろんな国からやってきた移民の子供たちにとっても、大きな励みになると思いますよ」と言ってもらえたのが嬉しく、支えになりましたね。
- 人にはいろんなバックグラウンドがある。絵里香さんの授業の中に、きっと子供たちは「世界」を感じるでしょうね。絵里香先生の授業、私も参加してみたいです!
フィンランドで教師を目指すとのことですが、今年10月に講談社さんより発売になる「ムーミンキャラクター図鑑」の翻訳を担当されました。今後日本でのお仕事もされる予定ですか?
絵里香さん:フィンランドのことをまだまだもっと知りたいという冒険心と好奇心は今でも変わりませんが、最近、日本とのつながりも大切にしたいという気持ちが大きくなってきました。日本で最初に手がけた本「青い光が見えたから―16歳のフィンランド留学記」を出版したことが大きなきっかけになっています。今後も活動拠点はフィンランドになりますが、ぜひ日本で講演会などもやってみたいですね。
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7月、フィンランドから帰国されたばかりの絵里香さんにお話をうかがいました。
終始おだやかな空気をまとい、ふんわりと、言葉をひとつ一つ選びながら話す絵里香さん。
私もまるでフィンランドにいるかのような心地よさを感じました。
持ち前の鋭い感覚と感性で確実に一歩ずつ、一歩ずつ。
フィンランドでなりたい自分、将来の夢へ向かって歩んでいる高橋絵里香さんの今後の活躍も
楽しみですね。
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高橋絵里香さんからメッセージをいただきました! 「一歩外へ出て、感じてみてください」 目の前にある生活から、人と違う道を行くことが怖い、という気持ちもあると思います。でも、一歩外へ出て感じてみてほしいです。外へ出て初めて得ることができる“視点”を。何か困難なことにぶつかっても、違う角度から物事を見ることが出来るようになると思います。実際に目で見て心で感じたものは真実であり、本物です。見つけたものは一生もの。外に出ることで、知らなかった“自分”に出会えます。それは人生全体を通じて大きな宝物になると思います。 |
【高橋絵里香(たかはし・えりか) プロフィール】
1984年、北海道生まれ。幼い頃に読んだムーミンがきっかけで、2000 年に憧れのフィンランドへ単身で移り、現地の高校に入学。4年間の高校生活を著書「青い光が見えたから―16歳のフィンランド留学記(講談社)」に綴る。現在はオウル大学で生物学を専攻し、現地で教員を目指す。趣味は、写真撮影やサッカー、編み物など。フィンランドのオウル在住。
絵里香さんが手がけた初めての翻訳本! 『ムーミンキャラクター図鑑』(講談社) シルケ・ハッポネン著 高橋絵里香・訳 本文:240ページ(カラー多数) サイズ:20㎝× 21㎝ 予価:2900円(税別) ※2014年10月24日発売予定 |
【参考記事】
フィンランドは「本来の自分を取り戻せた場所」― 高橋絵里香さん
【ムーミンキャラクター図鑑】あの主役級から、チョイ役キャラまで楽しく解説!(10/24発売)